二十一時限目 全員居るな?以上出席終了
ぷにぷに
「ふにゅう」
ぷにぷに
「うにゃぁーあ」
ぷに
「はぐ、むグむグ」
何この可愛い生き物?
頬を突いていた僕の指が煩わしかったのか噛み付いて来たが、いかせん夢心地での甘噛みが痛いはずもなく、母の乳房にしゃぶり付く子犬のような印象を与えている女の子。
そう、女の子なのだ。幼女と言っても良い。
年のころは十か十一か……少し前のヒヨコ位の年に見える。髪の色はアルと同じ銀色で、瞳の色はまだ見えない。
抱え込んだ体は(勿論ポーチに入れてあった毛布で梱包済み)ヒヨコよりさらに頭一つ分ほど低く、恐らく百三十あるかと言った所か。柔らかくも細い体は、幼児から徐々に大人の体に変りつつある初期の、まだまだ子供よりの段階であることを物語っていた。
しかし……
【無事に産まれたようだな】
後ろからの声に振り返ると、そこには満足げな笑みを浮かべた風神サマが立っていた。雷神サマは何やら後ろの方で作業をしている。いいのか? 兄貴に働かせて自分だけ立ち話してて?
「放電するとか爆風起こすとか聞いてないですよ、言ってくれれば良かったのに……」
【すまんすまん、計算では上手く収束するはずだったのだが、思ったより貴殿からの余剰魔力の提供が多かったのでな。しかも殆どが我らが分体の物であった事で儀式の許容を大きくはみ出してしまったようなのだ。その分、凡その予想から大分外れた形で産まれたようだが、な】
風神サマは僕越しに女の子を観察しているようで、その目は満足げに微笑んでいるように見える。
「……これは成功した、と言っても良いんですか?」
【ん? 無論だ。と言うより、これ以上の者を望むのなら、それこそ主神クラスが集まった上で長大な儀式を行わなければ叶わんだろう】
【……そもそも、本当にこれほどの娘が今の儀式で生まれ出れたと言う方が疑わしいほどだがな】
後ろで作業していた雷神サマもこっちに来て、少女の方を見て固まっていた。なんなんだ?
幼体 C 1
Lv 0
HP 18
MP 290
身体 27(9)
気力 2(1)
生命 0(1)
精神 17(9)
魔力 32(23)
拒絶 9(9)
運 19(8)
称号 なし
クラス 名もなき幼生
加護 雷神の加護 風神の加護
スキル ・物理― 体術(1) 足技(1)
・魔法― 雷(1) 風(1) 水(1) 嵐(1)
・特殊― 幸運(仮) 嵐の王権(1)
………
……
…
理不尽だ、主にMP面で。
「つまり、やっぱりHPとMPはステータスに左右されないんだ?」
【いや、大方はステータスに左右される形で増減するのだが、本人の素養や相性の違いで大きく違ってくると言う話だ。大量に消費した後に少量増えると言う話も良く聞くが、本当かどうかはわからんな】
【役に立てなくてすまん】と律儀に謝る風神サマ。
今は、さっきの部屋でたき火を焚いてキャンプを張って話している所だった。何でも、産まれたてのヴァルキュリーは環境の変化に弱いので、最低一日は動かさない方が良いと言う事らしいので、肌寒い迷宮内で体を壊さないようにこうしてたき火に当てながら抱えてると言う話だ。
「いえ、おかげで希望が持てました。しかしすみませんね、お話に付き合ってもらっちゃって」
【良いのだ、どうせ我らが居なくとも部下たちで回せる仕事しか残していなかったしな。それに、こんなに面白そうな戦士が召喚されたのだ、一日くらいは話し込んでいても良いだろう】
此方は雷神サマ。彼は手の中で何かをこねくり回して加工している様だった、先ほどから地面に書いてあった魔法陣が少しずつ消えて行っているので、きっとそれだろう。と言うか良いのか、そんなに適当で? 何だかこの人たちの部下の人たちは苦労しそうだと思う。
胡坐をかいた足の上に乗せた女の子の髪を弄りながら一人ごちる。
【そう言えば、もう決めたのか?】
「……なにがですか?」
言葉に主語を付けてください。
【その娘の名前の事だろう。いつまでもその子やこの娘と呼んでいる訳にはいくまい? ヴァルキュリーは物の数日で物の分別から基本知識から全てを覚えるため自分で自分の名前を付ける者も居るが……基本的には生み出した者が付けるのが慣わしだ】
そうやって聞き慣れない掟とか慣わしは行動の前に説明してほしいんですが……
抱えている少女を見下ろして頭を撫でる。反応はするが、いやでは無いようで、むしろもっと撫でてとでも言うように頭を押し付けてくる。その動作がしばらく会っていない妹に被って愛おしくてたまらなくなってくる。
でも、ねえ?
「僕はネーミングセンスなんて殆ど持ってませんよ? それに生み出した者が付けるって言うなら、貴方達の方が合ってるんじゃないですか?」
何しろ僕からの遺伝なんて足技と幸運のスキルだけだ。中心になっているスキルを与えたこの二人の方が色濃く遺伝子を引かせている。遺伝子と言って良いかは知らないが。
【そんなことは無い、我らは加護と祝福を与えただけだ。生まれの時に神が係わると、強すぎる力に引きずられる事が多いが、それも成長に伴って元の部分が現れて来る物だ。それにどれだけ変な名前と言っても、自らの仕える主人に初めて貰う物が自らの存在を表する名であると言うのは、中々誇りになるとも聞くぞ?】
……何だか丸め込もうとしているのが目に見えて解る説明だが、余り拒否し続けるのもこの子に失礼だろう。
しかし……どうしたものか? 本当にネーミングセンスなんて皆無なんだが……仕方ない、ここは余り凝らずにシンプルに行こう。産まれてくる時に嵐みたいなの起こしてたし、スキルに嵐って付くものが二つもあったから……でも女の子に嵐はダメだろう、見た目からしても最低横文字の名前だよな。ストーム……ダメだ、何処の映画だよ。……仕方ない。
何やらこちらを観察してニヤニヤしている神サマ×2は放置して、僕は少女に語りかける。何だかロキと似た匂いがする、神様ってみんなこうなのか?
「おーい、寝てても良いから、これはと思う所で反応してくれ。行くぞー? ストーム・タンペット・テンポラーレ・シュトゥルム・トルメンタ・フェオンバオ・ブーリャ・スィエラ・テンペす……」
「うあ?」
あ、反応した。
「テンペスト?」
「……」
「……スィエラ」
「えぅ」
スィエラ、ね。
一応色んな言語で覚えてる限り嵐の単語を並べて行ったんだが……スィエラは確かギリシア語だったはずだ。北欧神話っぽい世界で使って大丈夫かな? まあ、風神に雷神なんて丸っきりアジアンな神様も居るから良いのか。その内将軍とかでアテナとか出てきたりして。
考えると当たってしまいそうなので思考を却下し、少女に向きなおる。スィエラだと少し言いにくいから……
「シエラ、でどうだろう? 君の名前だ」
「う?」
そう問いかけると、少女の目が少しだけ開き、満足気に微笑んだ……気がした。
【では、我々はここで失礼しよう。中々楽しかったぞ?】
【何かあったら頼ると良い、貴殿なら多少の無茶も聞こう】
そう言って風神サマと雷神サマは消えて行った。前から思ってたんだけど、神様の移動方法って何なんだろうか? 転移魔法陣のとは少し違う気がする。まあ、別に分かった所でどうと言う訳でも無いけど。
「僕たちも帰ろうか? 君にしたら初めての場所だろうけど」
未だに寝ている少女……シエラに語りかける。結局一日待っても目を覚ますことは無かった。寝る子は育つと言うが、帰りは大変そうだ。
そう考えなら僕は、ポーチから一つの水晶片を取り出す。ビー玉を半分くらいに切ったようなソレを足元に投げつけると、落下地点を中心に二メートル程の魔法陣が展開された。
当然、足元に投げたソレの範囲に僕も居たわけで、僕の視界は最近慣れ始めた白一色に塗り潰された。
「うわー、酷いねコレは」
僕は眼下に広がる惨劇を見て固まる。そこは、昨日僕がアリの虐殺を行った場所であり、さっきまで居た雷神の間から通路を挟んだ先にある大広間だった。
正確には崩落した通路の先にあった元大広間であるが……
広間の高い壁には半分以上に風穴が空き、床にはこの広い空間の中に吊り下げられていた橋と空中舞台だった物が無残に積み上げられていた。しかし一番酷いのは、ここから正面に来るように在る下層の通路の一つの周りだった。そこはまるで壁の中から強大な力で吹き飛ばされたかのように捲り上がり、そこにダルマ落としの様に上の壁が落ちていて、その分のしわ寄せを食ったらしい上の亀裂は、かなりの深さに渡って裂けている様に見える。
詰まる所、あの時の一撃の衝撃が、三百メートルの通路とその周囲の壁を巻き込んで放射状にでも広がったんだろう。専門家でもない僕の目から見ても、この惨劇は異常だ。
アリアハムは泥王を後三本確保していると言っていたが、余程でない限りはもう使わない方が良いだろう。ハッキリ言って今回は助かったが、下手したら生き埋めになっていても不思議では無い状況だったのだ(念の為にと仕掛けて置いたこの短距離転移魔法陣が無かったら、あの状況は生き埋めと言うのだが……まあ、それはそれとして)。今後はその辺も気を付けて行動しなければ……
「ん…うにゅ」
「……」
取りあえず拠点に戻ろう、反省も休憩もそれからだ。
シエラを片腕で抱えなおし、もう片方の手でモナフェスを構える。少し無理があるが、ホーンドック位ならこれで十分だろう。
慎重に進んだが、結局敵とは一度もエンカウントせずに上がり階段にたどり着くことができた。
「ただいまー」
居室に戻ってみると、気配で感じていたのかアルが何時もの姿勢で待っていて、僕が部屋に入ると共に恭しく頭を下げてくれた。
「お帰りなさいませ、マイマス、たー?」
「オーオー、遅かったじゃないノ? そんなに迷ったの……かい?」
我が物顔でチューチューとお茶を飲んでいたアリアハムも声をかけてくれたが、いかせん二人ともこちらを見て硬直している。まあ、ボス戦に出た奴が子供抱えて帰ってきたらそんな顔するわな。
二人が再起動するまでただ立っているのもアレだったので、シエラを自分のベットまで運んで横たえさせ、毛布を掛ける。
「むんん、ん? んん」
暫らく気持ちの良い姿勢を探っていたようだが、僕の枕を抱えよせて顔を埋めた辺りで満足したのか、再び聞き心地の良い寝息を立て始めた。
ようやく立ち直ったのか、此方に視線を向けているのが気配で解る。僕はもう一度毛布を掛けなおしてやり、頭を一つ撫でてから二人の元に向かった。
「断固説明ヲ求ム!! いつどこで作った隠し子ダァ!?」
「昨日ボス戦が終わった後に、ボス部屋で誕生の儀式を行った。ちなみに主催は神様が二名」
席に座った瞬間に噛み付いて来たアリアハムにそう言って返す。ついでに二人にそれぞれ勲章を一個ずつ渡してから、アルが淹れてくれたお茶を飲む。やっぱり美味しいな。
二人ともかなり驚いていたが、ロキの件もあってか殊更に騒ぎ立てることは無かった。
勲章を返してもらい、ここを出た後の事を順を追って説明していき、今現在のステータスも展開して見せた。
鈴木 太郎
Lv32(Max)
HP 19776
MP 1229
身体 4403(181)
気力 2825(99)
生命 3983(162)
精神 2645(99)
魔力 1198(50)
拒絶 7230(270)
運 4491(190)
称号 未来への重荷 ミニマム・セロ
クラス 悪徳の肯定者
加護 狡智神の加護
スキル ・物理― 投擲(212) 足技(138) 棒術(82) 槍術(21) 投槍(67)
・強化― 幸運(143) 血の滲む努力(槍) 戦士の勘(161) 下克上(221) 歩む者 (35) 虐殺者(101)
・特殊― 覚醒(187) 鑑定(311) 努力(76) 罠士(151) 盗賊(149) 隠密 (151) 鷹の目(101)
「てな感じでした。最終的にはと言う意味では万事上手く収まったけど、不満を言わせてもらえばせめて、せめてお守りの説明は正確にして欲しかったな。こっちにも心の準備ってものがあるし」
そう、その一点だけは納得いって無かった。確かに結果は良かったのだろう、神様が認める位だから、シエラはそれはもう強く育つに違いない。でも、何だか知らなかったのが自分だけと言う疎外感が少しだけ心に刺さった。思えばここまで仲良くなった人は家族を除いて初めてだったから、友人に仲間外れにされた、と言う感覚なのかもしれない。僕にとっては新体験だった。
「ヴー、悪かったヨー。チョットしたサプライズのつもりだったんだヨー。まさか昨日今日渡した涙が孵るなんて思いもしなかったんですヨー」
涙、と言うのは例の新しいヴァルキュリーの核の事だ。
見ればアルも少し冷ややかな目でアリアハムを見ている。何かを言うまでは行かないが、その目が「だから渡すのなら真実を言っておけば良かったのです」と語っている様に見える。アリアハムも気付いているようで、意識してそちらを見ないようにしていた。
……まあ、別に根に持つとかではないけどね。
「はあ、もういいよ。別に邪魔になった訳じゃないし、ハッキリ言って今回持って行かなかった場合のデメリットも見つからない。あんなに小さい子を戦力として見るのは気が引けるけど、一応神様からお墨付きを貰った位の才能は抱えてるらしいし。でも、今後は余り隠し事はして欲しくない……かな?」
うん、正直なところはこんな所かな?
アリアハムはばつの悪そうな顔をしてから「今後ハ気ヲ付ケマス」との言葉を放って項垂れた、どうもかなり応えたようだ。何に? とは思ったが、隣に居るアルの様子からして、これからお説教でもあるのだろう。怒ったキリコさん(サンタとヒヨコのお母さん)と冷や汗の止まらないサンタの図と重なる。まあ、キリコさんはアルみたいなしかめっ面では無く、ニッコリと微笑むんだが……
何だか雰囲気が悪い方に行きそうだったので、アルに程々にする様に言ってから別の話をする。聞きたいことは結構あったので、疲れが体を縛り上げるまでに消化しておきたかった。
まず、今回のシエラの元になったのはアルでは無かったらしい。コレは、特に隠すでもなく教えてくれた。
どうも、元になったのはアルの同期(ヴァルキュリーにも学校の様な物に通わなければいけない期間が有り、三か月ほどの短い期間でありながらそこで交友を持つ物も少なくない)であったらしく、それも友人と言っていい間柄らしい。
何でも、その人も今回の召喚された戦士の付人になったらしく、すでに上に抜けたらしい。そこで、その主が最近安定した生活が送れるようになってきたので、そろそろ自分の配下を育てても良いと思ったらしく、そのヴァルキュリーさんに涙を催促して作らせたらしい。
上手く出来たは良いが、どうもその主、どれだけの経験値を溜めれば良いのかよく知らないまま作らせたらしく、出来た涙を目の前にしてからその途方もない数値に唖然としてから一言、「いらない」と言い切ったらしい。
この辺りを聞いてる時のアルの気配が物凄く怖かった。顔は能面みたいに無表情なのに、その顔色からは怒りしか読み取れなかったのだ。
それもそのはず、涙を作り出すにはそれなりの代償が必要になるらしく、殆どはヴァルキュリーが感じる身体的・精神的な苦痛で、個人差によって差はあるが結構きついらしい。
……まあ、その辺はきっと女性のアノ日みたいなものなんだろう。月一で幼馴染の八つ当たりを受けている分、ほんの一部だけでも辛さは解らなくもない。普段はそんな事するようなやつでは……無いと思うし。
生み出した涙は、経験値を注ぎ続けなければ一週間ほどで霧散してしまい、入れた時から物の状態の変わらないアイテムボックスや亜空間倉庫に入れてあっても例外では無いらしい。
実は今回が初めての涙であったそのヴァルキュリーさんはかなり悲しんだが、主は断固としていらないと言い続けたらしい。どうも、シェルを装備していると、自分に入ってくる経験値が三割減になってしまうため、修業の遅れを出したくなかったようだ。
規定により主が同レベルになるまで戦闘に参加してはいけないと言う付人(今初めて聞いた。アルは何レベルかとも思ったが、アリアハムに鼻で笑われた……何故に?)の身であるため、自分で育てる事も出来ない……困り果てたそのヴァルキュリーさんは、とにかく産まれて欲しいと思い、友人に頼む事を選んだらしい。
そこで白羽の矢が立ったのがアルだったらしい。何故かは二人ともはぐらかしてしまって解らなかったが、とにかくいの一番に候補に上がったらしい。
しかし、アルもまた新しい戦士に使えている事を知って、心底落ち込んだようだったが、一応アリアハムにも相談した事で今回の案が浮かんだらしい。
相手も、アルの担当していてアリアハムが信用しているのならと涙を預けたらしい。
とまあ、これが今回のあらましであった。他にも色々と聞きたい事があったが、流石に疲れが出てきてしまい、今日はここまでと言う事にした。……本当に色々聞きたかったが仕方が無い。
「で? 何でアルまで僕のベットに入ってるの?」
休もうと思ってベットに向かおうと思ったが、問題が一つあった。ここにはベットが一つしかないのである。
つまり、シエラと僕のどちらかしかベットを使う事が出来ないのだ。
最初は、産まれたばかりのシエラを気遣って、僕は床で寝ようかとも思ったのだが、それはアルに丁重に却下された。
曰く、君主床で寝るなかれ。
つまり、僕の配下に当たるシエラをベットで寝かせて僕が床で寝るのはどうあってもいけないらしい。こればかりは譲れないと大分噛み付いて来た。
暫らく床ベット問答を繰り返していると、可笑しくてたまらないと言う感じなアリアハムの提案で、僕とシエラが添い寝をすると言う事でまとまったのだが……
「ダメなのカイ?」
「ダメではないけど理由が見つからない。アルが何時どうやって寝てるのかは常々不思議だったけど、少なくても隣で寝てた形跡は無かったと思うし」
と言うか寝て無いんじゃないの? とすら思っていた。
「マスター、私としても主と床を共にするのは非常に恐縮なのですが……今回はシエラの調律の任をこなす為に許可を頂けないでしょうか?」
「調律?」
また聞かない単語だ。
「はい、産まれたばかりのヴァルキュリーは環境の変化に弱いのはご存知の事と思います。そして、それは体がまとまりきって無い証拠でもあるのです。ですので、しばらくは既存のヴァルキュリーがこうして添い寝をしながら免疫力を分けて行くのが必要になって来ますので、シエラがここで休むのならば私も共に寝なくてはなりません」
「お許し頂けないでしょうか」とか下から目線で言われても……
「……そんなの聞いたら断れないよ。じゃあ、もっと端によるからアルはもっと内側に入りなさい。そんなに端じゃ朝には落ちちゃうよ?」
そう言って、僕は壁側による。配置で言えば、壁に面したベットで、壁から僕・シエラ・アルと言う順だったので、僕はシエラを抱える様に横向きになる。広めのベットだが、ダブルベットと言う訳では無いので、こうしないとアルが外側にはみ出しそうなのだ。
「ありがとうございます、マスター」
「うん、ファーぁ……じゃ、お休み、アル」
「はい、お休みなさい、マイマスター」
「お休み、シエラ。一杯良い夢見るんだよ?」
そう言って眠りに着くころ、窮屈なので枕の上に伸ばしていた僕の腕にすがりつく様に這い上がって来て頭を乗せたシエラは、本当に天使みたいに可愛かった。
ニヤつきながらカメラを構えていたアリアハムには、アルシリアすら気付いていなかった。
え? 魔改造いう割にはシエラのステータスが低い? 戯け、お子様の成長力を舐めるな!!
……実を言えば、シエラちゃんはプロットに存在しない子でした。それがなぜ割り込んできたかは作者にもサッパリ……徹夜のランナーズハイは恐ろしいとです。
さあ、もうそろそろ太郎君にはこの穴倉から出ていただく訳ですが……第二章に当たる火曜日篇が全くパソコン打ち出来ていません。
学校が始まればコソコソしなくても良いのですが、その分時間が……
と言うわけで、火曜日篇はしばらく遅れるかもしれません。いいですね、これぞ不定期更新の真骨頂です。
果たして完結は何年後になるのか!! と言う感じで(笑)
ゆっくりじっくりやっていくので、温かい目で見ていてくれたら……と思います。




