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鈴木な太郎君は薔薇の都で戦乙女と輪舞曲を踊れるか?  作者: へたれのゆめ
月曜日 目覚ましの音は閻魔の高笑い
22/38

十九時限目 よろしい。では頑張りなさい



 声を頼りに思いっきり投擲魔槍(粘土)を放ると、巨大な瓦礫に埋もれる様にして腕だけ出していた緑巨人は爆散した。


 ほぼ同時に、先ほどの比では無いほどのキモチワルサが体を蝕む。まるで何かに自分の体が乗っ取られるような感覚だった。吐き気がする。


 しかし、俺はそれに蹲ってはいられなかった。

 

 このキモチワルサは強大だ、ハッキリ言って俺でも(・・・)正気で居られるのが不思議なくらいに。こんなのが二回も来たらきっと耐えられないだろう。


 二回も、来たら。


 「お、オオオオぉォオオォおおオぉ!!」


 体の命令系にまで干渉してきた吐き気と悪寒と異物感を張っ倒して体を傾ける。すると、背中を削るようにしてナニカ(・・・)が通り過ぎ、俺の足をぶっ潰して鷲掴みにする。


 「ヅウズッッ!?! 」


 神経をミキサーに入れたらこんな感じな痛みになるんだろうか? 骨をメチャクソに砕かれた後に肉をミンチにされてるんだから変わらない痛みが感じられる。


 ……おおー、すげー。何だか痛みがどうでもよくなってきた。


 何だか急に楽になったので、足を掴んでるどこぞの馬鹿を見る。


 ……なんだよ、テメーも腕と腹の半分ネーじゃねぇか。



 雷神 


 lv150


 HP 1722


 MP 0




 ついでに反射的な鑑定をしちまったが、どうもこいつら、あの弾幕無双でMPを使い果たしたみたいだ。なるほど、だから通路侵入の時、雷も風も飛んで来なかったのか。納得だ。


 しかもこいつもここまで這って来るのに力を使ったらしく、もう足が死んだように変色してる。見れば、少しずづHPも削れている様で、あと十分持たないだろう。


 こいつは、それでも俺を狙うのか? 立てない足、引き戻せない腕、もうまともに光を写していない濁った眼……


 「良いだろう」


 ポーチからモナフェスを取り出す。


 「冥途の土産だ。メイドさんじゃねえからそこんとこ間違うなよ?」


 なにか最後の力でも溜めているかのような雰囲気だが、付き合う気は毛頭ない。が、手向け位はくれてやる。


  グ、オオオオオオオオォォ!!


 意を決したかのように腕を振り上げるのと槍が閃くのはほぼ同時。いや、俺の方が少し早かったようだ。


 だってそうだろう?


 俺は腕以外ビタイチ動いて無いのに、テメェの腕は虚しく人足のミンチモドキを高く掲げてんだから。


 俺様の足だ。高くつくぜ?


 奴の下の床がぽっかりと消失し、奴がユックリと消えて行く。


 俺は勲章をマキシマムからミニマムに変更し、今ある魔力の二十倍の量を、すでに魔力を満杯にしてある投擲魔槍(粘土)へと注入する。


 許容魔力を遥かに超えた魔力を注入され、ドンドンひび割れて行く魔槍。俺はそいつを目の前の穴にポイと捨てるように入れた。


 「ほんとにまあ、高くついたねぇ」


 口に本日二つ目のアラメヤの秘薬(百万ヤルク)を放り込み、意識を手放す。


 先ほどとは比べ物にならないほど小さいが、それでも魔力約二万分の半分くらいの威力は出ていたようだ。やや強めに頭が浮いて落ちたが、それもまた夢渡りのスパイスと言った所だろうか? 



 取りあえず、あのキモチワルサは味わなくていいと言う事は確かで、今はそれが一番うれしかった。








 【……き…し……おき…だ…ねん】


 「びゅりゅ?」


 【目を覚ませ、起きるのだ少年】


 「あ゛…あ? ぼ、僕の事(・・・)?」


 【そうだ、強き戦士よ】


 目を開けると、自分を見下ろす人影二つと目が合った。


 双子だろうか? 良く似た容姿の男たちで、かなり整った顔立ちをしている。


 髪の色はどちらも緑色で、どちらもそれを短めに切り込んでいる。スポーツ刈りとか言ったか? 深高野球部が皆スポーツ刈りだから暑苦しい印象だったが、イケメンがするとここまでかと言うほど爽やかな印象に見える。うん、バクハツシロ。


 ゆったりとした白いローブらしき物を着ていて、どうにかその柄だけでどちらがどちらか判断できるかも……と言うほど似ていた。


 【兄者、目が覚めたぞ】


 【うむ、あれだけの事をして尚消滅しないとは……これは本当に期待の出来る卵かも知れぬな】


 【卵か……アレを打倒するが卵とは思いたくないな。彼はもう立派な戦士だろう。】


 【たしかにな。少年よ、すまぬ、前言を撤回しよう】


 「は、はあ?」


 何がどうだか……誰か説明して




 さて、取りあえずチグハグながら説明を受ける事が出来た。話してみるとこの二人、中々フレンドリーだ。


 まとめると、


 僕はまたしても何らかのクエストらしき物をクリアしたらしい。


 こっちははっきり言ってクリヤした奴はかなり久々で、約七千年ぶりとか。ピンと来ないよ。


 かなり死に体だったが、それでも自力で治療を施して生きていた。


 彼らの名前は風神と雷神と言った。


 アレは彼らの分身の様な物らしく、想定する限りではここを抜ける前には倒す事は出来ないが、極稀に僕みたいなイレギュラーが居るらしい。


 ダメでは無い。むしろカモン的なノリだった。




 とまあ、こんな感じまでは何とか聞き出せたが、今は別の話でかなり煮詰まっている。


 詰まる所、彼らは僕に何らかの報酬を与えたいが、彼らが提示した物に僕が反応を示さなかったのだ。


 彼らは、


 風神と雷神の加護


 風神と雷神の勲章


 雷と風の魔法スキル


 を与えたかったらしいが、僕は二つ目の勲章以外は要らないと言って二人を困らせている。


 理由は、これ以上目立つような事は御免なのと、僕に魔法の才能がない事だった。


 最初のは言わずもかな、三人分の神様の加護なんて貰ったら何処から刺されるのか分かったもんじゃないって事。次のはまあ、僕のステータスの魔力を見てもらえば解るだろう。



 

 鈴木 太郎



 Lv32(Max)


 HP 19776


 MP 1229



 身体 4403(181)


 気力 2825(99)

 

 生命 3983(162)


 精神 2645(99)


 魔力 1198(50)


 拒絶 7230(270)


 運  4491(190)



 称号 未来への重荷 ミニマム・セロ


 クラス 悪徳の肯定者


 加護 狡智神の加護


 スキル ・物理― 投擲(212) 足技(138) 棒術(82) 槍術(21) 投槍(67)


     ・強化― 幸運(143) 血の滲む努力(槍) 戦士の勘(161) 下克上(221) 歩む者      (35) 虐殺者(101)


     ・特殊― 覚醒(187) 鑑定(311) 努力(76) 罠士(151) 盗賊(149) 隠密      (151) 鷹の目(101)




 ああ、解るだろうけど魔力だけ桁が違う、ハッキリ言ってMPもかなり少ない(HP比)方だろう。だから魔法で貴重なMPを消費するより、投擲魔槍何かで消費したりスキル技で消費したい、と言う事だった。


 ……て言うか、今回の上がり方が極端過ぎないか? ステータスはまあいいとして(良くは無いけど何とか飲み込んで)スキルの一部が劇上がりしている。今までも良くあったが、覚醒なんて酷いもんだ。前回(つまりさっき女王アリを倒した後のステータス)から1,5倍って……なにかしたっけ?


 【むー、どうした物か……ん? 如何したのだ少年】


 「ん? ああ、実は……」


 カクカクシカジカ


 【なるほど……ソレは確かに奇妙な話だな。スキルの熟練度は確かに生死を賭けた戦いで劇的に上がる事もあるが、使った覚えもない物がそこまで上がるとは……少年】


 雷神サマが真剣な目でこちらを見てきて、鋭い目線に少したじろぐ。立ってみると三メートル近くもある巨体だ、自然見下ろされる形になる。コワイ。


 【気負付けた方が良い。覚醒は謎多きスキルだ、使いすぎると本性が隠せなくなるぞ?】


 「本性?」


 何だそれは、理性が付いて行かないとか?


 【覚えていないのか? ……まあいい。とにかく気を付けよ】


 「えと、了解です?」


 何に、とは言われなかったが、とにかく使いすぎないようにしろって事だろうか?


 

 【む? 少年、それは?】


 遠巻きに見ていた風神サマが話しかけてくる、声だけ聞いてると同一人物だ。姿見ても違い解らんけど。


 「それ? コレ?」


 風神サマが指さす方に目をやると、ズタズタになった僕の首元に行き着いた。そこに在るのは、出発前にアリアハムから渡されたお守り? だけだ。






 ~出発少し前~



 「あああ、ソウソウ。スズキーに渡すモンがあったんだっタ」


 準備をすべて終え、アルに無理はしないようにと再三に渡った注意を受けている時、急にアリアハムが奇声を上げて懐(頭を覆う布の中)を探り始めた。


 「なに? 薬なら破産寸前まで持ったけど……と言うかもう何かを買うお金ないよ?」


 そう言った途端、探り当てて取り出す寸前だったアリアハムが盛大に顔を顰めてこちらを睨んできた。


 「……スズキー? 言葉は選ぼうネ? その言い草じゃあ、まるでアタシが金貰わないと何もヤラナイように聞こえるんだけド?」


 「実際そうでしょう? 貴女も商族の性質に漏れずお金には貪欲ですから」


 「あ、アルまで!? 酷い!! このヒトデナシ共が! キサマら石の大量入荷の件を忘れたか! アレはドワーフの若造誑かす所から始めたから苦労したんだヨ? それをタダでくれてやったのニ!!」


 アリアハムが心外だと喚き散らし、アルが冷静に突込みを入れる攻防は今までにも何度か目にしたが、僕はまだアリアハムに軍配が上がった所をあまり見た事が無い。と言うか誑かしたとか公言されても……


 「アレはきちんと利益徴収済みでは無いですか。ガンドルト鋼の塊は幾らで売れましたか? いくら準備に手間が掛かったとは言え、月平均三千万に届く副収入がある商人なんて、商制界の片隅に商会でも設けられそうなものですが?」


 「え? あ、あう? あうあう、えーと、その~」


 マリアハムの目が激しく泳ぐ。こう言うのを目が白黒するって言うんな、解りやすい例だ。


 「あ、ああ、あ、あ、あ、アルのバカチ~ン」


 あ、逃げた。


 部屋の片隅で膝を抱えてのの字を書き始めたアリアハム。こっちにもそう言う風習あるんだな、意外な共通点発見だ。


 「フーンだ、良いんだヨー。どうせアタシは商族の端くれダモーン。お金大好きダモーン。キラキラの何が悪いってんだヨー……」


 ボソボソっと何かを呟き出したアリアハムを放置して、アルは再び僕に注意を開始した。




 アリアハムの呟きが昔のアルは可愛かったと言う話に変わり始めた辺りでアルがフォローを入れるまで約十分。これも見慣れた光景になりつつある。


 「フン! 商族だってね、大切な人には贈り物の一つや二つはするんだヨ? それをヤレ金汚いやら金の亡者やら……本当だけど酷いよネ!!」


 本当なのは肯定するんですね。


 「アリア、これ以上はマスターの士気に係わります。要件は迅速に」


 「チぇ、アルのばか。……んと、ハイこれ」


 やや不機嫌気味に渡されたのは、少しばかり大き目な銀細工の付いた首飾りだった。やや太めのチェーンにつながれたそれは薄く丸い。凝った彫刻とズッシリとした重みは、これがかなり高価な物だと言う事を物語っていた。


 「……これは?」


 「アリア、これは…」


 「お守りだヨ♪」


 今、アルが何か知ってる風にアリアハムに問いかけたんだけど?


 「アリア?」


 「いいジャン。ここを出たら皆ニ配られるんダシ、()?」


 「しかし……」


 アルが何かを後ろめたがる風に俯くが、アリアハムはどこ吹く風と効能を並べ始める。今思えば、効能に安産が入っていた辺りでおかしいと思った方が良かったんだろうな……






 お守り発言の後、両神サマから変な物を見る目で見られたので、手に入れた経緯を話すと、今度は呆れたような目で見られた。











 アリアハムサン……何持たせたんデスカ?



 戦闘がカンケツだと? そんなことはわかっとるわい!!


 ……ハイ、苦手なんです、戦闘シーン(泣)


 これにて《彼自身》の魔改造はひとまず終了です。


 次回、はじめてのげぼく(多少脚色? あり)


 お楽しみに~

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