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鈴木な太郎君は薔薇の都で戦乙女と輪舞曲を踊れるか?  作者: へたれのゆめ
月曜日 目覚ましの音は閻魔の高笑い
20/38

十七時限目 では反省文二十枚と言う事で……



 「あ゛あ゛?」


 目覚めはいつでも最悪だ。この瞬間の度に目なんて覚めなければ良いと思う。


 目を開ければ、ドーム状になった高い天井が目に入り、キツすぎる悪臭が鼻を突いた。


 顔を顰めながら体を起こすと、そこはだだっ広い部屋の中腹で、どうやら数多くの支柱で支えられている空中舞台の様な場所の様だった。


 詰まる所、……僕が意識を失った場所である。


 フラ付く体を引きずって舞台の端に近づき、下を覗き込む。すると、矢鱈と目を刺激する生暖かい空気が目を突き、更に顔を顰める事になった。


 「何だ? ……酸の沼?」


 下の大きな空間は一面黄色っぽい液体で満たされており、左目に装備した怪盗の神眼には罠として認識されていた。


 ならばと解体を念じてみると、徐々に液体が引いて行き、最終的には空気まで正常な物に戻っていた。


 さて、空気も美味……くはなっていないが、正常と言って良い程度には綺麗になったので状況をまとめてみる。


 とは言え、特に記憶に欠損している部分は見られない。正面に見えている橋が壁の近くで崩れている所を見るに、あの巨大女王アリを粉々に砕いた事も記憶違いでは無いようだ。試しにステータス表を開いてみても、先ほど見た物との違いは無かった。


 レベル24……成果としては十分だったが、準備に対して戦闘があまりにも簡単に進んでしまい、ハッキリ言って拍子抜けだ。


 だからかもしれない。止せばいいのに僕はこの下の、上には続かない通路の先に何が有るのか気になって仕方が無かった。何と言うか、欲求不満……断じて違う。そう、消化不良と言えばいいだろうか? ただ単に興味が有っただけとも言えるが、とにかく行ってみたくなったのだ。


 取りあえず体の不調が無いのかを再び確認し、僕は下に続く入り口に入り、壁の内側を螺旋状に回るようにして出来た階段を下りて行く。


 この後死ぬほど後悔する事になるのだが……いかせん、好奇心に突き動かされるような人間は、その後の事なんて気にしないやつが大半であり、僕もその例に漏れることは無かった。






 おかしい。


 上に在る入り口は全部で三十。下に在る入り口は、おそらくアリの巣になっていた入り口も合わせて三十一……上の階段では無い入り口の数は、この部屋に入って来た所とここから上がり階段の間につながる通路の入り口の二つ。下も、アルの言っていた二つの部屋の入り口がそれぞれで二つ……事前の調べ道理なら、この下の層の入り口が一つ多い。


 すでに下の層の入り口はすべて見て回ったが、上りの階段は全部で二十八個在り、このことから、ここ下の層には、三つの入り口が在った事になる。


 これがアルのお父さんの間違いならそれに越したことは無いが……何だかやな予感がビンビンとする。


 迷った末、一応竜骨触槍で武装した後に、アリの巣では無い通路に入ってみる事にした。




 少し長めの通路を進むと、百メートル四方ほどの部屋にたどり着いた。あまり物は多くないが、壁際には犬の像らしき物が等間隔で並べられていて、壁にはびっしりと壁画が掘り込まれていた。見るに、どうやら風をモチーフにした柄らしく、見ていると、本当に風が吹き巻いているように見える物だった。


 入り口から入って正面には、大きな台座が在り、何かしらの神像でもあればどこぞの神殿のようにも見えなくは無いが、残念ながらそこには何も置いてはいなかった。


 「何かあるとも思ったけど……あの像も特にはこれと言った感じは無いし、ただの行き止まりな? しかし、ここまで何かありますヨ~って感じの空間用意しといて何もないとかは無いとも思うし……まあ、ゲーム感覚で言えばだけど」


 流石に何でもかんでもゲームの様には行かないだろうし、もし行ってもただ来ただけでイベントが起こると言う訳でも無い。つまりは今は何も起こらないんだろう。


 そう見切りをつけて、僕は部屋を後にした。


 ……少しずつ増している風の気配に気づかぬまま。




 部屋を抜けて、もう片方の入り口に入ってみようとしたところで、ちょっとした違和感に気が付いた。


 ……わずかに風が出て来たのだ。


 吹いてくる方向は今出て来た部屋からなのだが、先ほどまであの部屋は空気が少し淀むくらいは空気の流れが無かった。つまり、風が吹くはずは無いと思うのだが……


  ゾゾ


 「……」


 風の正体を考えていると、何だか背筋が少しずつ冷たくなってきた。まるでそれ以上考える前にさっさとこの階層から出てしまえと言うように湧き上がるソレは、自分の意思とは関係なく俺の足を動かし、上の層へと続く階段へと向かわせる。


 それでも尚湧き上がる寒気に耐えきれず、僕は歩きから小走りへと進み方を変え、そこからドンドンと勝手に足の回転は上がって行き、上がりきる頃にはすでに全力疾走になっていた。


 「ハア、ハア、ハア……何なんだ?」


 訳の解らない寒気に踊らされることを不満に思い、つい、つい橋の端から下を覗いてしまった。



 そこには、人影が二つあった。


 「……人? いや、それにしてはサイズが…」


 目測でだが、あの人影は三メートルほどあるように見える、そこそこ距離があるため断言はできないが、硫酸のせいでボロボロになった壁や床の傷から推測するに、それだけあるように見えたのだ。


 薄暗くてよく見えないが、二つの影は何かを探すようにうろつき回り……


 ……こちらと、目が合った。


  ズゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ


 「ッ!? !!」


 ……アレハカカワッテハイケナイモノダ


 脳が警鐘と言う警鐘を打ち鳴らし、全身からは大量の冷や汗が滲みだして来る。足は震え、歯はかみ合ってない。情けないとも思ったが、アレからはそんな気持ちすら奪い取る威圧感があった。


 僕が動けたのは奇跡に近い。こちらを向いた人影が、何か構えの様な物を取ったと思った次の瞬間、轟音と共に隣の端が砕け落ちた。


 そちらを見る暇も気力も無かったが、とんできた破片と音で、相手がこちらに向かって攻撃してきた事、それを外した事、逃げなければ殺されると言う事が瞬時に理解でき、また、音と大き目の破片が頭に襲いかかってきた事で硬直が解け、何とか第二撃を躱す事が出来たのだ。


 それからは、下から襲ってくる攻撃が無差別に上層の床を襲い、破壊し、僕を襲ってきた。僕は、自動的に発動した戦士の勘をもって動き回り、稀に当たりそうになりながら逃げ回った。


 それはもう見事なくらいに無様な逃げっぷりだったと思うが、先ほどの女王アリのレーザーの比では無い脅威を感じたがのだ。それは無様にもなるだろう。


 解った事は三つ。攻撃は青白い光と透明な衝撃波の様な物がある事、どうやらもう一体の方も攻撃をわえている事、僕にはどうしたって勝ち目なんて無さそうだと言う事だけだった。


 相手は僕の事を弄んでいるのか、どうも僕が逃げ込もうとしている通路を優先的に破壊しているようで、入る直前に橋が落とされると言う事が何度かあった。


  ビキ! ガクン!!


 「ッ!?」


 何度もそういった攻撃が加えられているためなのだろう。ついに橋だけでは真ん中の舞台を支えられなくなったのか、ヒビが入ったような音が鳴った後、急に僕の足の裏から地面が消えた。


 ……ああ、僕死んだかも


 僅かな落下感を感じて思う。何故こんな事になったのか? ボスに挑戦したのが悪かったのか? その後に欲を出したのが悪かったのか?


 ……なんだっけ、何かこんな感じの名言が在った気がする。


 すでに地面に着いた瓦礫があるのか、喧しい音が下から鳴り響く。もうすぐ僕もああやって破砕音を撒き散らかして潰れるのだろう。ガシャンでは無くブシャとだろうが。


 ……ああ、そうだった。


 「好奇心は猫を殺すってやつだ」












痛いのは嫌いだなぁ















イヤイヤ、俺はあきらめの速いお前がキライだよ


 少し短めなのは切の良い所で切ったということで。


 

 特別編入りましたー。


 さあ、太郎君はチートへの登竜門たる死線を越えられるのか?


 次回! 俺のOOOがOOを貫く!!


 ……テンションがおかしいことは認めよう。

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