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HRはマンツーマン


 取りあえず聞き流してみた感じで話をまとめてみると、中々楽しいことになった。


 出てきた単語は召喚、迷宮、レベル、魔法、エルフ、スキル、戦闘ナドナド……


 ぶっちゃけファンタジーなRPG臭のプンプンする話だった。


 聞き流していたから明確に何をどうしろってのは聞き逃したが、どうやら戦闘に実践投入したいから訓練しろってことらしい。


 まだ要領を得ないため、アルシリアさんには悪いけど、もう一度同じことを説明してもらった。


 この時に彼女ほぼ無表情ではあったが、イラッとしたのが見て取れた。普通はほんの少し間が開いた程度に感じる位だろうが、僕の周りには表情と感情がかみ合わない人が多いので、そう言う意味で目の肥えた僕には一目瞭然だった。


 少し罪悪感が湧いたが、取りあえず面白そうな夢なので、設定くらいはしっかりと聞いても罰は当たらないだろうし……と開き直ってみる。


 


 取りあえず聞いたことをまとめてみたら大体こんな感じだった。




 ここは多元世界を統治する神々の世界の一つ、戦制界ヴァルハラである。


 それぞれの役割を持った神々の世界の内、この世界は数多の世界で起きた戦闘関連のトラブルなどを専門に対応する。


 僕たちは、何たらかんたら(矢鱈と長かったので省略)とか言う条約に基づいて、ガイアと言う世界から召喚(徴兵?)された。


 今回は1140人の召集が有った。


 これから僕たちは、訓練兵として専用の施設で修行するらしく、それが迷宮と呼ばれている。


 この世界には魔法がある。


 この世界には特殊な成長法があり、それをレベルや数値で表す事が出来る。


 特殊技能をスキルとして魂に刻み込む事が出来る。


 


 とまあ、今大事な事はこの位か、アルシリアさんも今度はさっきよりも専門用語っぽいのを噛み砕いて説明してくれた。嬉しいが、次は無いと言う雰囲気がにじみ出ており、結構怖かった。


 「えと、取りあえず理解したかな? 幾つか質問して良い?」


 「はい、私にお答え出来る事なら何なりと」


 では遠慮なく。


 「なんで僕? 戦闘経験なんて全然ないよ?」


 「それはあなた方の世界の有り方に問題があったからです」


 予想していましたと言わんばかりに即答してくるアルシリアさん。


 「あなた方の世界では、魔法と言う技術が異常な程に衰退しております。殆どの世界において非常に重要な技術である魔法は、生活を支えると同時に、戦で使われることも多々あります」


 僕の理解を持ってくれているのだろう、彼女は長めの話では度々間をとってくれる。


 「そういった時、殆どの場合は、魔法は魔法でしか防げません。そのため、魔法での戦いを経験したことのない兵士は召喚してもあまり役に立たないことが多いのです」


 あーなんとなく理解できた。

 

 「つまり、経験のない大人よりは経験のない子供の方が育成しやすい?」


 アルシリアさんは小さく頷く。

 

 「はい、あなた方も、魔法が伝わらなかっただけで、きちんと訓練をすれば魔法は使えますし、魔力も増えるのですから。しかし、魔力の増幅は成長期に伸びやすいので、と言う理由もありますが」


 なるほど、確かに今の地球で成長期の若者が戦場に出るなんて殆どないしね、と言う事はほとんど無差別拉致だなこれは。


 「じゃあ次の質問いい?」


 「はい」


 「なんで召喚した数が半端なの?」


 別に知らなくてもいいことだろうが、なんでか気になった。


 「それは、召喚する際に固まっていたからです」


 「はい?」


 ちょっと想像とは違う答えが来た、てっきり欠員分を適当にさらって来たのかとばかり思ってたんだが……


 「条約では、一度の召集での呼び出しは千人程度となっております。時によって増減することもありますが、大体は千人程度です。ですので、こちらの条件に該当する規模の集団を無造作に選択して、一斉に召喚します」


 どうやら思った以上の適当さだったみたいだ。どんぶり勘定にも程があるだろうに。


 「へー、でも僕みたいな歳の人が千人単位で集まるなんてこと有ったっけ?」


 「はい、なかったそうです。ですので、全部で三か所の場所から召喚したと聞いております。各団体が全員同じ服装でしたので、おそらく学園などからの召喚だったのかと思います」


 なるほど、そう言えば明日は学校の入学式だったな、おそらくそのことを言っているのだろう。


 「うん、わかった。ここの神様が随分といい加減な事は十分に分かった。じゃあ、取りあえず次で最後でいいや」


 もっと聞いてもきっと楽しい答えが期待できそうだが、さっきも出た通り、明日は入学式なのだ。普通の入学式なら別にそんなに意気込む必要はないが、残念なことに明日の新入生には妹分の幼馴染が居て、しかも代表として挨拶までするのである。


 はっきり言ってまかり間違っても寝坊なんて出来ない。


 最後と言ったからか、アルシリアさんの雰囲気も心なしか引き締まった気がする。


 「あのさ」


 もしだ、もし本当にこの世界で生きて行かなければならないのだとしたら、人が何人だとかなんで呼んだんだとかなんかより、よっぽど大切な事は……


 「とりあえず当面、僕たちはなにをしたらいいの?」


 「取りあえずは地上に戻っていただきます」


 「……はい?」


 あれ、ちょっと溜めてみたのに即答されちゃったよ? と言うか地上?


 「説明していませんでしたが、ここはヴァルハラ地下十一階の通称入界者の間です。このヴァルハラに戦士として入界する為には、単独で全十層からなるこの小迷宮・入界門を制覇しなければなりません」


 あー、なるほど。ゲームで言う所のチュートリアルってやつか、これはいよいよもってRPGだな、と。


 「ふーん、大変そうだね、頑張んないと」


 そう言ってから椅子から立ち上がり、ベットに向かう。


 「……御主人様? 意気込みは御立派でございますが、行動との関係性が理解できません」


 まあ、頑張るとか言っていきなりベットに向かったら、それはそれは怪しいよね。


 「いや、明日って言うか多分今日に学校の入学式があるんだ。知り合いとかが係わってなかったらもう少し付き合っても良かったんだけど、生憎と今日は親友の妹が入学して来るんだよね。だから、そろそろ目を覚まさないと」


 アルシリアさんは少なくない時間固まっていたが、僕がベットに戻る頃には何か納得した顔をしていた。


 「わかりました、それでは御主人様、良き目覚めがあるように祈っております」


 一応ボロッボロになっている毛布モドキを被った僕に、アルシリアさんは恭しく頭を下げる。


 「お休みなさいませ、マイ・マスター」


 「うん、お休みなさい、アルシリアさん」


 何だかんだで眠かったのか、睡魔は直に僕の意識を奪い去っていった。













 最後に見た彼女の瞳には、ほんの少しだけ憐みの色が浮かんでいた気がした。



 短いですか?まあ、チマチマとやっていきますんでよろしくお願いします。

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