49話 伝書鳩
銀の仮面公式サイト内・プレゼント受付ページに、一本の動画が投稿された。
夜の闇に浮かぶ三日月の旗。その前に立つ銀の仮面は、まるで静寂そのもののように佇んでいた。仮面の奥から響く声は低く落ち着いており、淡々とした語り口ながらも、言葉の端々に確かな熱と誠意が宿っていた。
『――日本国民の皆様。今宵も御機嫌よう、銀の仮面だ。先日開始したプレゼントの受付について。この数日で数千件もの素敵な贈り物をいただけたこと、心からお礼を申し上げたい。本当にありがとう』
その言葉に続けて、銀の仮面はゆっくりと一礼した。動きは滑らかで、まるで儀式のような厳かさを感じさせる。
『実は先日、私に向けて贈られた手紙や似顔絵などから生命力を得られることを発見した。想いや労力が大きい程得られる生命力は大きくなる傾向があり、特にこの贈り物には感謝を伝えたいと思っている』
そう語る銀の仮面の手には、左に光る泥団子、右に磨かれたアルミ玉。
どちらも一心不乱、一生懸命に作ったような、素朴で温かみのある贈り物だった。
そして銀の仮面の背後の三日月の旗がはらりと落ちると、これまでに贈られた手紙・似顔絵・彫像・額縁入りの毛筆書などがずらりと積み上がり、銀の仮面の背を完全に追い越した。
『たくさんのお手紙や似顔絵などもありがたくいただいた。そこに込められた願いや祈りは、本当の意味で私の力となっている。私は一人で戦っている訳ではない。私を応援してくれている皆のお陰で戦えている』
言葉の重みが、画面越しにもじんわりと伝わってくる。
『ただし、私が正しく皆の応援や感謝のメッセージを受け取るためには、問い合わせフォームの通信ではなく、鳩ポストを通じて直接手元に物が届く必要があることが分かった。もちろん問い合わせフォームも目を通しているが、あなた方の想いを無駄にはしたくない。これからも日本を良い国にするためには皆の力が必要だ。日本の夜明けの刻まで、私と共に歩んでほしい』
二分ほどの短い動画だったが、銀の仮面の静かな誠実さと、言葉に込められた真摯な思いに、多くの視聴者が息を呑んだ。
【スレタイ】
【三日月党】銀の仮面支援スレ★11【ハロウィンオフ会計画中】
【902:無名の日本人】
動画きたぞ!公式更新確認!
【904:無名の日本人】
「御機嫌よう、銀の仮面だ」
この導入好きなんだけど、電波ジャックしなくなってから聞けなくなってたんだよね
また聞けて嬉しいぜ
【907:無名の日本人】
おいおい、うちの子の泥団子がマジで届いたよ
息子ガン泣きだよどうしてくれんだよ。°(´ฅωฅ`)°。
【908:無名の日本人】
マジで声に嘘がないんだよなあれ
説教でも演技でもない、素で言ってる
【910:無名の日本人】
こっちがありがとうだよ銀の仮面……
【912:無名の日本人】
俺たちの応援が力になるとか、完全にヒーロー宣言じゃんw
【913:無名の日本人】
なんだよ……子どもの全力遊びがヒーローの力になるって……尊すぎるだろ……
【914:無名の日本人】
これで確信した。もう日本は銀の仮面が最後の希望
【916:無名の日本人】
積み上がったプレゼントの山エグかったな。背丈越えてるのリアルに感動した
【917:無名の日本人】
あれ全部鳩ポスト経由ってこと?数日であれは凄まじいな
【919:無名の日本人】
想いや労力が大きいほど力になるってマジでRPGじゃんwww
【921:無名の日本人】
うちの小学生の娘、銀の仮面描いた絵入れたいって泣いてるんだが
ポスト遠すぎて詰んだ
【923:無名の日本人】
地方にも鳩ポストくださいお願いします(土下座)
【924:無名の日本人】
>>923
ほんとそれ。富士山とか新宿とか熱海とか無理ゲー。北海道にも頼む
【926:無名の日本人】
九州にも!!!せめて博多に作ってくれ頼む!!
【928:無名の日本人】
何か現金入れてる奴いるけどさ
神社のお賽銭文化が令和で復活ってコト?
【930:無名の日本人】
>>928
このままだとお伊勢参りならぬお江戸参りも復活しちゃわね?
【931:無名の日本人】
俺も泥団子作って入れてこようかな……
【932:無名の日本人】
この映像で鳩ポストの前にもっと行列できそう。
お手紙入れるのに30分待ちとか…
【935:無名の日本人】
「日本の夜明けの刻まで、私と共に歩んでほしい」←エモすぎて死んだ
【937:無名の日本人】
あの一言で一週間は飯食えるわ
【938:無名の日本人】
この人、絶対人心掌握の天才だろ。無意識にやってるのがまたやばい
【940:無名の日本人】
感謝を力に変えるとか、まんまヒーローじゃん!!って叫んだわwww
【943:無名の日本人】
正直、今まで「天誅見る専門」だったけど、やっと俺らも参加できる気がして胸熱だわ
【945:無名の日本人】
鳩ポスト巡礼ツアーとか絶対流行るだろwww
【946:無名の日本人】
ご当地ポストはよ増やして!!地方民は本当に切実!!
【948:無名の日本人】
むしろ政治家より信頼できる
【950:無名の日本人】
>>948
雨宮「まず、子どもが笑顔でいられる世の中とは、何か(ネットリ」
【952:無名の日本人】
>>950
おい
【954:無名の日本人】
>>950
黙れ
【955:無名の日本人】
>>950
雨宮「まず、天誅とは、何か(バッサリ」
【957:無名の日本人】
>>950
雨宮「地域住民の後押しとは、何か(トットリ」
【960:無名の日本人】
ほんっと、あいつが首相になったせいで日本滅びかけたわ
鳥取県民のせいでよ
【962:無名の日本人】
ギリギリ。本当にギリギリ首の皮一枚耐えたって感じ
鳥取県民のせいでよ
【965:無名の日本人】
日本が何とかなりそうなのも、銀の仮面のお陰だなあ
【968:無名の日本人】
警察が感謝状出さないんだから、俺たちがお手紙書くしかねえよなァ!
【971:無名の日本人】
指名手配犯捕まえて親切に新宿署の前までしょっ引いたのにねえ
【975:無名の日本人】
首都圏民良いなぁ、俺青森なんだよ
新宿まで夜行バスで十一時間もかかる…
【979:無名の日本人】
銀の仮面の住所まで直接郵送出来ないもんかね
【981:無名の日本人】
出来たら最高だけど一番最初に来るのは郵便局じゃなくて政府と警察だと思われ
【984:無名の日本人】
鳩ポストの近くに住んでる人が「投函代行」を公式サイトの販売ページで出品したらどうよ
【986:無名の日本人】
>>984
ええやん
【989:無名の日本人】
>>984
それめちゃくちゃ良い
誰かやってくれたらマジで助かる
【991:無名の日本人】
それって転売とかなんかにならない?大丈夫?
【993:無名の日本人】
なんかグレーな気がする
【994:無名の日本人】
ちょっと待て
「想いや労力が大きい程得られる生命力は大きくなる傾向がある」って事はよ?
【996:無名の日本人】
来るのに時間と労力がかかるって事は…
【997:無名の日本人】
遠路はるばる来たら手紙一通でも相当の生命力が銀の仮面に届くって事じゃ…?
【998:無名の日本人】
鳩ポスト巡礼ツアー決定wwwwwwwwwwwww
【1000:無名の日本人】
よーしおまえら!!
日本の夜明けの刻まで共に歩むぞ!!!!!!!!
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海風が吹き抜ける熱海駅。
商店街から少し離れた位置にある転移陣の傍に、新しく設置された鳩ポストはあった。
胸ほどの高さに、横四十センチ、高さ三十センチ、奥行き三十センチの金属製の黒い郵便受け。その天辺には、翼を閉じた一羽の鳩の丸みを帯びた彫像。くぐもった光沢を放つその姿は、駅を行き交う人々の視線を自然と惹きつけた。
最初に投函したのは、小学生らしい二人組だった。
折り鶴と手紙を入れたのか、小さな手が迷うように差し出され、やがてポストの口に吸い込まれていく。
「ちゃんと届くかな」
「読んでくれるといいな」
そんな囁きが残り、二人は駆け足で去っていった。
その後も、仕事帰りのサラリーマンが封筒を入れる。
買い物袋を提げた主婦が、小さな包みをそっと差し込む。
若者グループがスマホで記念写真を撮り、「俺らもなんか入れとく?」と笑いながら小銭を落とす。
誰もが立ち止まり、何かを残していく。まるで、この場に来れば日常の澱を少し浄化できるかのように。
やがて、目立つ出来事が起きた。
駅前のベンチに屯していた外国人が、空き缶を掴んでポストへと投げ入れた。
次の瞬間、彫像の鳩が羽ばたいたかのように動き、彼の頭上を鋭く突いた。
「Oh shit!」と叫んでよろめく男。両手で振り払おうとするも巧みに躱して、二度三度と正確に頭頂を突かれ、周囲の人々がどよめいた。
「ゴミはダメだよ!」
「何してんの!」
子どもや通行人の声に、外国人は罵声を残して退散した。
鳩は再び無表情な石像に戻り、ねじ込まれた空き缶はペッと吐き出されて地面に転がり、何事もなかったかのように静かに立っている。
観光客らしき老夫婦が現れた。
手提げ袋から木彫りの小像を取り出し、慎重に差し入れる。
それは小さな銀の仮面を模した木像だった。素朴な造りながら、投函の瞬間に周囲の空気が少し澄んだように感じられ、居合わせた人々は思わず姿勢を正した。
日が傾き始める頃には、投函の内容はさらに多彩になっていった。
色紙に描かれた似顔絵。子どもが丁寧に作った工作。自力で野花を摘んで集めて作ったリース。
それらは一見すればただの遊び道具にすぎない。だが、作った者の想いと努力と時間を吸い込んだそれらは、箱の中に沈むたび、淡い温もりを残した。
「うわあ、思ったよりも小さいな」
鳩ポストのサイズよりも、やや大きい贈り物を持ってきてしまった男性が嘆息を漏らす。
キャンバスに描いた銀の仮面の油絵はなかなかの力作であり、夜の静謐さと銀の仮面の光沢、揺れるマントと拳の躍動感。それらが織りなす傑作と言える絵を持ち込んだが、ポストの前でぴたりと足を止めた。
せっかく熱海まで名古屋から来たのに、このまま帰るのは惜しい。
投函口の横幅には入るが、奥行きが足りない。入れても、どうしてもはみ出るのが目に見えている。
全部が入りきらないと分かりつつも、男性は投函口に絵をあてがってみた。
すると、キャンバスの先端が奥の壁に当たる感覚がいつまでたっても伝わることなく、大きな絵は全てポストの中に納まりきった。
「えっ?」
そこそこの大きさと重みのキャンバスがポストの中に落ちる音は一切上がらない。
小さなポストは男性の大振りな絵を全て受け入れた。
「……」
その光景を見ていた周囲の人々によって、「ある程度大きい物でも、ポストに入れれば入る」と掲示板やSNSで広がり、何度かの実験を重ねながら多くの力作がポストに届けられた。
中には、熱海の砂浜に銀の仮面のサンドアートを作ったと言う人がポストの前で呼び掛けた例があった。
ポストに入れられないけどコレどうしたもんか、と半ば笑い話のように呟くと、ポストの天辺の鳩がばさりと羽を広げて飛び立ち、そのサンドアート上空を一周した。
サンドアートから概念や想いだけを抽出するかのように鳩はほんの少し青白く光り、やがてポストに舞い戻ってくるとその光は二本足からポストにじわりと吸い込まれた。
――ポストに入らなくても届く。
その事実は都市伝説のように広がった。
鳩ポストは、奇妙な祭壇のようでもあった。
誰に強制されるでもなく、ただ人々が自発的に集い、思いを託していく。
食べ物をポストではなく鳩に供えようとすると、ほんの少しだけ鳩が青白く光ることも分かった。
鳩がゴミを入れていく者に対して、容赦なく突きまわすのは既に周知の事実となっていたことから、周辺でゴミをポイ捨てする人も激減。枯葉や小さなゴミなどを拾って人々は転移陣に乗って去っていく。
その静かな光景は、通りを行き交う人々の足を次々と止め、日常の流れを変えていった。
深夜の新宿中央公園。
秋の夜気は冷え込みを帯び、芝生の上を渡る風がカサカサと落ち葉を鳴らしていた。都心のど真ん中でありながら、昼の喧騒は嘘のように消え、照明灯が投げかける白い光だけがぽつりぽつりと広場を照らす。
その片隅、転移陣の横に設置された鳩ポストは、夜でもひっそりと人々を迎え入れていた。仕事帰りのホストの青年が手紙を差し入れ、夜行バスを待つ学生が折り鶴を投げ入れる。日中ほどではないが、時折人影が現れては何かを投函し、静かに立ち去っていった。
しかし、その静穏は唐突に破られた。
《行け、今なら人目は少ない!》
低く鋭い外国語の怒声。街灯の光が届かぬ木陰から、複数の屈強な男たちが現れる。濃い色のフードを被り、腕にはびっしりと刺青を走らせた彼らは、手にハンマーやツルハシを握りしめていた。無言で顔を見合わせると、一斉にポストへと突進した。
ガンッ!ガンッ!
重い打撃音が夜気を震わせる。分厚い鉄を叩き割る勢いで振り下ろされる凶器。しかしポストは微動だにしない。表面に痕すら残らず、鳩の彫像は変わらず澄ました顔で彼らを見下ろしていた。
《馬鹿な……っ》
《もっと力を込めろ!叩き壊せ!》
怒号と共に再び繰り返される打撃。打ち付けるたびに火花が散り、ツルハシの柄が軋む。それでもポストは沈黙を守り続ける。まるで人知を超えた結界に護られているかのようだった。
苛立った男が唾を吐いたその時、異変が起きた。
彫像の鳩が羽ばたいたのだ。
本来なら動くはずのない石の彫像が宙を滑り、ハンマーを振り下ろす男の手首に鋭く突き立った。
《ギャアア!痛え!!》
男が咄嗟に腕を振り回すと鳩は霧のように姿を消し、次の瞬間にはまたポストの上に戻っている。
《チッ、ふざけやがって!》
怒りに任せてツルハシを振るうが、彫像は何事もなかったかのように元の位置に収まっている。鳩もまた数人がかりで襲い来る彼らを完全に排除できないらしく、ただ執拗に牽制を繰り返すのみ。男たちの攻撃も鳩の反撃も決定打を欠いたまま、奇妙な拮抗状態が続いた。
その膠着を破ったのは、予期せぬ来訪者だった。
ゲートがふわりと光を放ち、空気が揺らぐ。そこに姿を現したのは、大月駅から転移してきたばかりの中年男性だった。片手にビジネスバッグを下げ、やや疲れた表情を浮かべながら突然現れた。
「……あれ?」
転移陣に立ち止まった瞬間――
《どけぇッ!》
怒声と共にハンマーが振り下ろされた。本来の標的はポストだったが、偶然軌道に割り込んだ男性の左腕を直撃した。
ゴキッ、と嫌な音が夜に響く。
男性の身体は後方へ吹き飛び、芝生に転がった。鞄が派手に開き、中の書類が散らばる。
「ぐああああああっ!」
耳をつんざく絶叫。左腕は不自然に折れ曲がり、骨が皮膚を突き破りかけている。男性は必死に腕を抱え込み、地面を転げ回った。
「キャアーー!!人殺しー!誰か、誰か来てぇぇ!!」
偶然その場に居合わせた女性の悲鳴が夜空に響く。声は遠くまで届き、周囲に反射してこだました。
数十秒後、緊迫した警笛が鳴り響く。
「警察だ!武器を捨てろ!」
数人の制服警官が駆け込んでくる。手には懐中電灯と拳銃。鋭い光線が男たちを射抜いた。
《Fxxk…退くぞ!》
《チッ…イエローモンキーどもが!》
闇組織の男たちは舌打ちをし、散り散りに走り去っていった。街路樹の影に姿を溶かし、跡には呻き声を上げる負傷者と散乱した荷物だけが残された。
「救急車、救急車だ!」
「大丈夫ですか、しっかりしてください!」
「ぐああああ…!痛え…痛えよお……!」
警官たちが慌ただしく動く中、鳩ポストは無傷のまま佇んでいた。凶器の連打にもびくともしなかったその姿は、何事もなかったかのようにそこに居続ける。
皮肉にも、そのポストはこの夜、警察に守られた。
新宿警察署。
蛍光灯の光に照らされた会議室には、刑事たちが無言で座っていた。テーブルの上には前夜の現場写真が並び、モニターには二日前に出現した鳩ポストの映像が繰り返し映し出されている。
「……ポストは完全に無傷。あれだけの打撃を加えて、擦り傷ひとつありませんでした」
若い刑事が資料をめくりながら呟く。
「破壊は不可能、ということか」
課長格の男が短く答える。眼鏡の奥の目は疲れを隠せず、机上のコーヒーはすっかり冷めていた。
彼らは知っていた。前夜にポストを狙ったのが政府の息のかかった闇組織であることを。だが、それを口に出す者はいない。ただ「不明集団」と記録するしかない。
「現場に居合わせた市民が負傷した以上、我々はこれを事件として扱わざるを得ない」
「しかし、ポストそのものをどう記録する?“破壊不能”などと報告できるわけがない」
誰もが黙り込んだ。
窓の外では仕事を終えた人々が駅に向かって波となる。その一方、これから夜の街へ繰り出そうと駅から出てくる人が交差し、日常が動き出す中で、彼らは異常な存在を前に手を縛られていた。
ひとりの刑事がぽつりと漏らす。
「……市民はあのポストを支持している。感謝の品を投函し、守ろうとしている。強硬策を取れば、我々が敵になる」
「だが、銀の仮面を認めるわけにはいかん」
課長の声は低く、硬かった。
「私にも皆にも思う所はあるだろう。だが銀の仮面は日本国の刑法に抵触している。それを見逃すだけでなく容認してしまえば、それはすなわち警察組織の自殺行為だ。たとえ、銀の仮面によって日本の治安が取り戻されようとしていたとしても、それは看過できない」
「では、どうするのですか。破壊も撤去も不能、市民はあくまでもポストに物を入れるのみで法には触れておりません。どう取り締まるつもりですか課長」
短い沈黙のあと、課長は淡々と告げた。
「……監視だ。巡回の名目で常時張り付けろ。破壊は試みない。ただし治安悪化や騒乱があれば即座に介入する」
その言葉に異論は出なかった。
賛同でも反対でもない。現場を知る者たちにとって、それ以外の答えは存在しなかった。
壁時計の秒針が淡々と進む音が、会議室に響いた。
「転移陣もこれも、道路使用許可申請なんて来てないでしょう?」
「当たり前だろうが。来たとて、通すわけなかろう」
「ですよねえ。…はーあ、一向に手掛かりはなし。ですか」
「古賀の件と言い、ポストの件と言い。なんてことをしてくれるんだ、銀の仮面は」
こうして、鳩ポストは破壊も撤去もされることなく、警察の「監視下」に置かれることとなった。
銀の仮面本人が現れる事はないだろうが、それでも数少ない銀の仮面への接点。これを捨ておくと言う事は出来なかった。
決して容認ではなく、ただの現実的な選択に過ぎないものの、警察はポスト周辺に警備人員を配備することを各警察署の判断で進めていくこととなっていく。
毎週月曜・水曜・金曜20時投稿予定です(祝日は15時投稿予定)。
この話が面白いと思った方は★★★★★を押していただけると幸いです。
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