1話 異世界帰りの勇者が見た売国日本
「暑っ………」
目を開けた瞬間、全てが変わっていた。
じめっとしたぬるい空気。直射日光に焼かれたアスファルトの匂い。熱に溶けて靴にべたべたと貼りつくコンクリートの感触。
耳に飛び込んできたのは、三つ先の信号から既に聞こえてくる、街宣車のスピーカーから流れるリズミカルな広告音声と、エンジンを過剰に吹かすバイクのマフラー音、人々の喧騒──
しかしどこか殺風景で、生気のない街の音。
異世界であらかじめ仕立てた、日本ではありふれたデザインに寄せたビジネススーツ風の魔力衣に身を包んだ如月蓮は、自分が“帰ってきた”ことを知った。
異世界・エルディアに召喚され、五年の時を要して魔王を倒し、ようやく戻って来れた日本。
いつの日も片時も忘れることがなかった日本への慕情。帰還への覚悟が叶った瞬間。
「……日本……か。でも……」
目の前に広がる景色は、かつて知っていた日本とはまるで違っていた。
ビルの壁面に設置された巨大なオーロラビジョンには、どこか焦燥を帯びたニュースキャスターの顔が映し出されていた。
『——本日も都内で、外国人による暴行事件が発生しました。これで今月だけで三十二件目となりますが、政府は依然として……』
『——国会では本日も、移民受け入れ推進法案が強行採決され……』
『先日、埼玉県で発生した連続婦女暴行事件で逮捕されていたパキスタン国籍のジャマン・ホック・ムハンマド容疑者について、検察は同容疑者を不起訴処分としました。検察は不起訴の理由は明らかにしていません――』
蓮は黙って、その映像を見つめていた。
左頬から左目までを覆う大きな刺青。更に両手指に全てドクロを模したタトゥーの入った外国人犯罪者――日本で好き勝手暴れているのに警察は真面に機能しておらず、法の穴を搔い潜ってのうのうと生きていることがニュースで流れている。
それを目撃した彼の彼の心に、喜びはなかった。
異世界での壮絶な戦いを終えたと言うのに、今蓮の心にあるのは、冷たい怒りと深い虚無だけだった。
「…なんだ…これは……」
広告塔の壁面の時計には二〇二五年七月十三日、十一時四十三分と表示されていて、気温計は三十度を示している。
魔王を討ち、勇者と讃えられ、人々のために戦い続けた五年もの日々。だが、地球では十五年もの歳月が流れていた。そしてその十五年で、祖国は変わり果てていた。
右を見ても左を見ても、飛び交う言葉は聞き慣れない外国語ばかりだった。中国語、アラビア語、ヒンディー、スペイン語。
日本語を押しのけてでかでかと標識に表示される繫体字、ハングル、アラビア文字……
異世界よりも“異質”な言語の洪水が、かつての祖国を飲み込んでいた。
足元には大量のゴミ。ここだけじゃない。通り中にずっとゴミが散乱している。
清掃が日々行き届き、美しかった記憶の中の日本の現在が、蓮の目の前に残酷に広がる。
蓮は無意識に足を止めた。
ここは――、三鷹?
記憶とだいぶ違う所があるが、ここは三鷹駅の駅前だ。
ここをまっすぐ進めば駅名標が……
「………新東京中央駅?」
三鷹駅は新東京中央駅と名称を変え、駅舎も記憶にあった物とは全く違う駅舎へと様変わりしていた。
新東京中央駅前の広場に立ち尽くしながら、衝撃の光景に言葉を失う。
——この街は、本当に日本なのか。
繁華街の目抜き通りには、かつてあった和菓子店や古書店、銭湯や蕎麦屋が跡形もなく消えていた。代わりに並ぶのは、雑多な看板が乱立する多国籍料理屋や外国人向けの送金所、違法スマホの修理屋、そしてどことなく胡散臭い美容クリニック。
しかも、そのいずれもが妙にくすんでおり、落書きやゴミがそこかしこに貼り付き、通りには強烈な香辛料と腐敗臭が混ざったような異臭が漂っていた。
振り返ると新東京中央駅の駅舎が聳え立つが、未来的と言えば聞こえはいいだろうが、どうにもその建物の外観が日本的でないように感じる。
東京駅丸の内口のようなレトロさとも、渋谷駅ヒカリエ口のような未来感とも違う。
日本であって日本でない、それが日本にあることに違和感を覚える。
そんな、形だけ大きく立派で、ちぐはぐな印象を受ける新東京中央駅。
仰々しいその駅名には、空っぽの何かを覆い隠そうとするかのような虚しさが滲んでいた。
ふと十五メートルほど先からこちらに向かってくる黒人系の男。
サングラスとタンクトップと短パンとサンダルに、シルバーアクセサリーを両手と首にジャラジャラと付けたピアス男。
蓮の前にいた通行中の中年の日本人男性に肩を思いきりぶつけてきた。
「Hey ジャップ!どけよ。チンタラ歩くナ、クソが」
突き飛ばされて尻餅をついた男性にそう言って唾を吐き捨てると、男は顔を一瞥すらせずに仲間と笑いながら立ち去った。
だが、中年の日本人男性は、すぐさま土下座になって深く頭を下げ、額をゴミだらけの汚い地面につけて平謝りしていた。
「す、すみません……私が邪魔でした……すみません……」
その姿は、まるで敗戦直後の奴隷だった。
通りの片隅では、外国人の若者数人が公園のベンチを占拠し、酒を飲みながら大声で音楽を流していた。その足元には、酔って潰れた若い女性らしき姿。しかも、明らかに日本人。スカートはめくれ上がり、下着が完全に丸見えになっていた。
それを通りすがりの若者たちはスマホで撮影し、笑いながら動画配信アプリに投稿している。
「うわ、エロくね?」
「ヤベェ、これバズるだろ」
片や、歩道上をキックボードやスケートボードで人々の間を縫って物凄い速さで走り去る若者が複数名。
母親に連れられて歩いていた子供にぶつかりそうになり慌ててコースを変えるが、むしろ若者たちは
「邪魔!シネ!」
「子供!ゆっくり遅い!ジャマ!」
片言の日本語で子供とその母親に唾を飛ばして罵倒しながら滑走していく。
店先の日陰に座り込み、地面につまみを広げて飲酒する黒人。
道行く女性の道を阻んでしつこくナンパする白人。
通りの真ん中を横に広がって歩き、我が物顔で肩を揺らして歩く大陸人。
注意する者はいない。警察の姿も見えない。いや──
ふと、道路の端に警官らしき制服姿を見つけたが、彼はさも周辺を警戒しているような目線を配るのを装いながら遠巻きにあちこちで起こるトラブルをそのまま眺めるように見ているだけだった。
「……地獄、か」
蓮の喉から漏れたその言葉は、皮肉でも比喩でもなかった。
異世界で五年を過ごす前。日本時間では十五年前。
自分が最後に見た二〇一〇年の日本は、少なくとも“法と秩序”の国だった。善良に生きれば報われる国だった。人を助ける者が称えられ、卑怯者は恥じらい、悪党は裁かれていた。
だが、今のこの街には、正義の片鱗すらない。
橋の下の川べりでは、不法に設置されたテント村があり、民族衣装を着た男たちが炊き出しを行いながら、大量の煙を無作法にまき散らしているのも厭わず大声で母国語を話していた。その対岸で、日本人のホームレスらしき老人が、空き缶を拾いながら蹲っている。
彼の前を、ベビーカーを押した東南アジア系の女性が無造作に通り過ぎ、彼の足元の段ボールを踏みつけていった。老人が何か言おうとした瞬間、女の連れの男が怒鳴る。
「何見てんだジジイ!コロすぞ!」
老人はすぐに口をつぐみ、頭を下げた。蓮が見ていた限り、彼には何の非もなかった。ただ、そこに“いた”だけだ。
誰も助けを呼ぼうとしない。
通行人も、被害者本人も。
助けを求めても助けてくれないからだろうか。
警察を呼ぼうにも、見て見ぬふりをされるからだろうか。
あるいは、その両方……
かつて当たり前にあったはずの正義と秩序はもうこの街には残っていないのか。
「だから、皆……?」
目に入る日本人が全て道の端に追いやられ、自信なさそうに目線を伏せて、誰とも目が合わないように、トラブルに巻き込まれないように日陰を歩いている。
喉元からこみ上げるのは、怒りか、それとも吐き気か。
異世界では、戦争があった。魔族もいた。
だが、そこには信じるに値する正義があった。命を懸ける意味があった。
だがこの国には──、一縷の望みに命をかける価値も気概も、消えていた。
そう、――今のこの日本には、“魂”がない――。
沈みゆく船。その船底を食い破るネズミたち。船長は売国を商売とし、船員たちは責任を見て見ぬふり。乗客たちは、すでに沈むことを諦めていた。
蓮の拳が震えた。
「……ふざけるな」
異世界を救った時ですら、こんな怒りは湧かなかった。
だが、今は違う。
これは、我が祖国だ。
ここは、如月蓮という男が“生きる意味”を与えられた場所だった。
たとえ児童養護施設育ちで身寄りもなく、高卒で入れたのが六十社落ちの末の零細企業の営業職でこき使われる底辺の人生だったとしても、それでも彼はこの国で生き、この国を信じていた。
その日本が、今は──汚されている。
「許せない……誰が日本をこんな国にした…!」
蓮は静かに歩き出した。
アイテムボックスの中にある〈銀の仮面〉が、微かに震えていた。
雑踏の中を歩きながら、蓮は無言で歩き続ける。
言いたいことは山ほどあった。通りすがりの人に何故こんなことになっているんだと問い質したくなるが、口に出した瞬間に何かが壊れてしまいそうで、彼はその感情を押し殺していた。
どこかで子どもが泣いていた。日本語ではない。恐らくアラビア語か、南アジア系の言語だ。
小さな手を引いた母親らしき女性が、道端に座る日本人の老婆を邪魔そうに睨みつけ、無言のまま立ち去っていく。
老婆は何も言わなかった。ただ、虚ろな目で地面を見つめていた。
──昔、ああいうおばあさんに飴玉をもらったことがあったな。
ふと脳裏をよぎった記憶に、蓮は小さく息を吐いた。
児童養護施設で育った彼にとって、こうした通りの風景は、どこか懐かしいはずだった。かつて住んでいた施設――「若葉愛育園」は、ここからそう遠くない場所にあったはずだ。
……確認するべきだ。
あそこは、孤独だった自分にとって唯一の居場所だった。
ゴミまみれになったアパートの中、血の繋がった親というだけで理不尽な暴力やネグレクトにさらされつつも、その庇護を受けるために泣きながら笑顔を見せるよう努めていた。
親の帰りを待ちながら三日間、幼稚園にも行けず、公園の水道や花の蜜で渇きを潤し、近所のスーパーの試食や通りすがりの人に着いて行って何かを恵んでもらい空腹を紛らわせる日々にいたあの頃の自分。
そこから救い出された後、他人の顔色を伺いながら生きることをもうしなくていいと学んだのも、毎日の水や飯に悩まずに済んだのも、無償の愛や、優しさを知ったのも、同年代の誰かと本気でぶつかり合ったのも、喧嘩してもいつかは許し合って共に笑ったのも――全部、あの木造の屋根の下だった。
施設で出された安っぽいカレーの味、共用のテレビで観たヒーロー番組、駆け回った園庭と木陰、夜中に泣いていた年下の子の背中を擦った記憶……どれも、胸が詰まるほど鮮やかに思い出せる。
「若葉愛育園」は、蓮の原点だった。
異世界に召喚される寸前に住んでた、千葉県浦安の単身用アパートにはもう戻れないだろう。
あの時から地球上で十五年も時が経っていたら、もう持ち物はすべて処分されてるに違いない。
だからこそ――
もし、あの場所が今も変わらずにそこにあってくれたなら、蓮はきっと、少しは救われる気がしていた。
蓮は新東京中央駅を離れ、かつて自分が暮らしていた下町方面へ向かう。
あの建物はまだ残っているのか。自分の居場所だった、温もりを感じられたあの小さな世界は。
異世界に召喚され、あそこに帰るために五年もの間、毎日剣を振るい、毎晩魔法を撃っていたと言っても過言ではない。
彼はかつての施設があった場所へと歩を進めた。三鷹駅――現・新東京中央駅からは徒歩で行くことが出来るその道すがら、彼の視線は決して誰かを睨むでもなく、威圧するでもない。ただ、静かに、確かめるように街の全てを観察していた。
そして。
蓮がたどり着いたその場所には──かつての施設の姿は、影も形もなかった。
そこにあったのは、塗りたての外壁が妙に目障りで、異様にカラフルでけばけばしいビルだった。
看板の文字は韓国語、中国語、アラビア語、ヒンディー語。一階は両替所と中古スマホ店、二階には「国際ネットカジノ・ラウンジ」と書かれた怪しげな店。三階以上はすべて月極のシェアハウスとなっていて、道路上までにせり出した物干し竿に洗濯物がたなびいている。
「ここだ……“若葉”は……」
敷地を取り囲んでいた道路の形はあの頃の名残をわずかに残しているが、ぐるりと回ってもあの頃の痕跡はない。
園庭も、あの大きな木も、あの頃の面影は何一つ伺えなかった。
若葉は、丸ごと消え去ってしまっていた。
跡地の向かいのビルの入口脇に設置された古びた案内板に、小さく貼られた地元の再開発案内があった。薄れかけた印刷の中に、“老朽化した施設の取り壊し”という文言が読み取れる。
代わりに住み始めたのは、近年日本に移住してきたどこの馬の骨とも知れない、郷土愛も地元愛もない不法移民たちだったと、蓮は直感で察した。
そこにあったはずの「家」も、「居場所」も、すでにこの世界にはなかった。
喉の奥が熱くなった。
だが蓮は、涙を流さなかった。
十八歳で卒園して大学には行かず二〇〇五年に就職、召喚されるまで五年。
異世界で過ごして戻ってくるまで、日本では十五年。
合わせて二十年も経っていた。
二十年も経ってしまっていては、街並みは相当に変わる。
記憶の中の街は当然そのままではいられない事は頭では分かっているが。
──泣く資格など、自分にはない。
守れなかったものが、あまりにも多すぎるからだ。
異世界で英雄を気取り、気持ちよくなっている間に日本は壊されていた。
せめてそこにいられたなら何かできたかもしれないし、何も出来なくても気持ちの整理はついただろう。
それが、自分がいない間に何もかもが変わって、壊されて。
せめて、若葉が誰かの力で壊されたんじゃなく、円満によそへ移転したとか、経営を終了したと思いたい。
そうなら、自分で自分を納得させられるはずだ。
でも、気持ちの整理は一日二日で出来ることじゃない。
だって、もう二度と実家には帰れないことが確定したようなものだから。
蓮は見るだけで目障りなカラフルなそのビルに背を向け、ゆっくりと歩き出した。
そこに、スマホ片手に近づいてきた若い男がいた。服装は奇抜で、胸元には「NO BORDER JAPAN」とプリントされた派手なジャケットを着ている。
「おい、兄ちゃん。もしかしてそこ、撮影してた?あそこマジで神案件なんだよ、動画撮ったりしてねえよな?」
男はそう言いながら、蓮の腕を軽く引こうとした。蓮は一歩だけ身を引き、静かに視線を返す。
「……触るな」
その一言だけで、男はなぜか凍りついたように言葉を止めた。
その目は──ほんのコンマ数秒だけ、両眼が赤く染まり、静寂を裂くような妖しい光を放った。
「な、なんだよ……」と口ごもりながら、男は蓮から距離を取り、吐き捨てるように「クソ……ネトウヨかよ」と呟いてその場を去っていった。
蓮は動じなかった。
ただ、静かに、誰にも聞こえぬほどの声で呟いた。
「あんな思いをしてまで倒したって言うのに…」
エルディアで演じた魔王との死闘。
勇者パーティの一員として、四人の仲間と共に魔王軍五万を相手取って一週間の殺し合いに身を投じた。
仲間の四人のうち二人を失い、残りの二人は現役の冒険者を続行できない程の重傷を負った。
魔力切れを起こしても回復魔法を行使し続けたエルフの回復術師は魂の七割を失ったし、魔王の玉座の間に蓮を送り出すために門前で仁王立ちした鬼人族の大盾使いは右目と左腕と勇士の証であるツノを失った。
魔王を倒すためには仕方ない事だ、尊い犠牲だったと自分を何度も言い聞かせながら、大事の前に小事を切り捨てる判断をしては夜になれば魘されて飛び起きたり、平和を取り戻したエルディアでの爵位叙爵打診と美姫たちからの求婚の全てを振り払って潔くお役御免を受け入れた蓮は、ただひたすらに、エルディアに定住することなく日本に帰ることだけを希っていた。
栄達も称賛もある程度だけ受け入れ、残りは現地の人で分け合ってもらい、あとは日本に帰る姿勢を崩さなかったのは、エルディアが蓮の認識の中ではあくまでも"外国"だったから。
どうしても慣れ親しんだ日本・東京に帰って、聞き慣れた日本語と、美しい風土と四季を感じながら年を取っていきたいと、そう思っていた。
異世界で過ごした五年。
ホームシックを感じるのには充分過ぎるほど長い年月を経て、ようやく帰って来られたと思えば、十五年が経過してしまった二〇二五年の日本はもう美しい日本ではなかった。
蓮が帰りたかったあの場所は、あの日本は、もうなくなっていたのだった。
西の空が赤く染まり始めていた。
道の端にはうずくまる浮浪者の姿。
落日。沈む陽。沈みゆく国。
今日、陽が沈むとしても、本来はまた昇るはずだった。
いつかまた日が昇ると信じて、信じて、信じ続けているのに、まだ闇に閉ざされている。それが今の日本なんだろう。
闇の中で動き出した"悪"共が、善良な民を食い物にし、足蹴にし、奪った場所に築いたビルでネオンを瞬かせ、重低音を響かせるビートに酔いしれている。
失われた希望を取り戻すためには──誰かが、動かねばならない。
蓮のアイテムボックスの中で、〈銀の仮面〉が震え、かすかに熱を帯びた。
その仮面は、異世界の終焉を生き延びた証。
異世界・エルディアの行く末と、自分を含めた数百万の人々の命と、いつか地球に帰ると頑なに固辞する自分を信じて着いて来てくれた戦友の想い、仲間に託された志、無念、全てを賭けて戦い、数多の死と、希望を背負って戦い抜いた傷が色濃く残る、信念の象徴。
蓮は、もうこの仮面を着けることはないと思っていた。
平和な日本に戻ってきたら、また平穏な日常に溶け込めると信じていた。
しかし、この日本は蓮が夢見ていた日本とは全くかけ離れた、ボロボロの国になっている。
アイテムボックスの中で、銀の仮面が淡く光るのを感じる。
ここにも助けを求める民がいるのだと叫んでいるかのように感じる。
これから始まる戦いが、正当なものではなく私怨・私刑であることも分かっている。
誰にも知られず。誰にも褒められず。
ただ、身勝手な感情のやり場を求めるように。
この国を、再び蓮が愛した“日本”にするために──
異世界から帰還した勇者は、暮れなずむ夕日に向かって静かに歩き出した。
次話は今日20時投稿予定です。
この話が面白いと思った方は★★★★★を押していただけると幸いです。
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