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自由都市執政なんてなるもんじゃない、と彼は日記に書いた  作者: プロ♡パラ
第7章 フォーゲルザウゲ伯爵家編
90/119

記録90 謎の女性の来訪について


 フォーゲルザウゲ伯爵家領邦における政変以来、自由カオラクサは警戒態勢をとっていた。自由カオラクサを取り巻く状況は不安定であり、これからなにが起こるか分かったものではなかった。今にでも戦端が開かれるかもしれないし、あるいはしばらく小康状態にあった暗殺作戦がまた施行される可能性だってあった。

 そんな中で、今日、自由カオラクサ政庁に一人の人間がやってきた。被り物付きの外套ですっかりその身を覆ったその人物は、自由都市執政への取次を求めてきたという。その人は女性のようではあったが、とはいえこのご時世において、突然現れた人間が執務室まで通されるわけもなかった。……しかしそこで、その女性は、自由都市執政との関係について意味深長なことを口にしたという。それを聞かされた衛兵は、逡巡したに違いない──もとより、女性関係についていろいろと言われている自由都市執政である。もしかしたら、ということを考えれば──と。そこでその衛兵は、一応、この謎の女性の来訪について、執務室まで報告にきたわけだ。

 さて、その報告を聞いたとき、わたしは例によってその場に居合わせているアデーラから冷たい視線を浴びせられることとなったが、しかし心当たりはなかった。

 その女はどんな女なのだと衛兵に聞いてみれば、上背のある美女だという答えが返ってきた。

「なにか思いだしましたか、執政殿」とアデーラは冷ややかに言った。

 それでも、わたしはやはり、その手の関係には心当たりがなかった。美人局かなんかだとしたら相手にするだけ時間の無駄だとも思ったが、しかし一方で、なにかひっかかりも覚えていた。

 背の高い美人。

 そんな人物と個人的な付き合いなんてないが──

 そこでわたしは、ある一つの可能性に思い至った。まさかとも思いながら、しかしなぜだか直観的に、それが真実にも思えた。

 わたしは、その女性を執務室まで連れてくるように指示を出した。

 現れた女性は、扉が閉まったのを確認すると、被り物をとり、その顔を露わにした──

 ハータ・フォーゲルザウゲ伯爵令嬢、彼女であった。

 

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