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自由都市執政なんてなるもんじゃない、と彼は日記に書いた  作者: プロ♡パラ
第7章 フォーゲルザウゲ伯爵家編
86/118

記録86 世界と世界の戦争について


 貴族派による進攻の危機を密かに伝えられて以来、わたしはしばしば、この自由カオラクサの防衛というものについて考えていた。

 この自由カオラクサが持つ自由と独立という美徳は、なによりも尊いものである。何世紀も前、平民の誰もが王侯貴族に隷属することが当然視されていた世界において、当時の市民たちが崇高な使命にはたと気がつき、自由都市を成立させたのだ──(ということにしておく。少なくとも今日のこの日記においては、豪商による下層階級からの搾取や、皇帝権力への接近等は、一旦、扱わないでおく)

 いまになって、貴族派諸侯に再占領されるわけにはいかないのだ。それは自由カオラクサ領地、つまりこの城壁に囲まれた物理的空間の支配権の問題だけではないのだ。人間の精神の在り方の問題なのだ。貴種が平民を支配する世界と、貴種が平民を支配しない世界との対立であり、相克であり、衝突である。世界と世界の戦争である。この自由カオラクサが敗北することは、人類の歴史を数世紀分、巻き戻すことに他ならない──。

 しかし、相手は強大である。貴族派諸侯の連合軍。彼らは、意識的にか無意識的にか、支配についての思想を共有している。その意味では利己的であると同時に、結束の固い連合でもある。その点、この自由カオラクサは自由と独立という美徳を体現しているがゆえに、旧支配者たちに単身で立ち向かわなければならない……。

 悪の大軍を前に、正義はどのように立ち向かうのか?

 ……わたしにはひとつ、思い浮かべる考えがある。はじめは観念的であったが、最近になってそれは徐々に寄り固まり、形になりつつあった。

 小が大に勝つための力。それは数理を超越した力であるに違いないのだ。

 すなわち、魔術の力である。

 共和政府が魔術の軍事利用を進めているというのなら、この自由カオラクサがそれに手を出したとして、いったい何の問題があろうか?

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