記録81 当選について
大方の予想通り、組合の男が補選において当選した。彼が主催した競鳥が、勝負の決め手となったのだ。──もっとも、これは何も、本山歌劇団の公演がそれよりも劣っていたということを意味しているわけではないだろう。空騎士たちによる競鳥も、本山歌劇団の歌劇も、どちらも比べようがないくらい素晴らしいものだった。
落選者たちは口々に、此度の補選には不正があったと主張したが、しかし、結果が覆ることはなかった。
さて。
当選後、組合の男は手続きのために政庁にやってきた。何であれ勝負に勝ったのだから、少しくらいは嬉しそうにすればいいものを、しかし彼は、不服を抱えているようないつもの表情を少しも緩めてはいなかった。
「当選おめでとうございます」と、わたしはいった。
「ありがとうございます、執政殿」と、組合の男はいかにもつまらなそうに返した。
「商家の者ではなく、組合の者が自由カオラクサ参事会に加わるのは、歴史上であなたが初めてです。わたしはこの自由カオラクサの執政として、あなたのこれからの活躍を期待していますよ」
「……」つまらない社交辞令はよせ、と言いたげに、組合の男はこちらを半ば睨みつけるようにした。




