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記録80 競鳥について


 無論、自由カオラクサというのは、豊かな商業都市である。市民たちは単に食つなぐだけの生活を送っているわけではない。彼らは人生の無聊を慰めるための何かを求めるだけの豊かさを持っており、その需要に応じて、自由カオラクサの城壁の内部には様々な娯楽があふれている。たまには旅芸人の一団がやってきて公演を行うこともある。

 しかし、人間というのは、何事にも飽きることができる生き物である。定常的なもの、あるいは周期的なものに対しては、感動が減衰していく……

 そこにきて、此度の競鳥である。はるばる帝都からやってきた空騎士の一団は、自由カオラクサ市民たちを熱狂させた。

 広場には、収まり切れないほどの市民たちが押し寄せた。──しかし、最終的にそれは問題とならなかった。空騎士は、上空を飛ぶ。どの建物であろうと、屋根の上に登れば、空騎士が大鳥を駆るその姿を見ることができたのだ。

 午前中は、余興としての曲芸飛行が行われた。大鳥が編隊を組んで飛来する。細やかな機動を行い宙返りをして見せた。ときおり、空騎士たちはわざと地上すれすれまで近づき、観客に手が届きそうな距離を高速で通りすぎてみせた。飛行の最中にある大鳥と大鳥の間を空騎士が繰り返し飛び移ってみせたとき、地上の観客の間には悲鳴と歓声が渦巻いた──どうして、そんなことができるのだろう? 空騎士には恐怖心というものがないのだろうか? 次から次へと繰り出されるその軽業に、自由カオラクサ市民たちはすっかりと心を奪われた。(首が痛くなった私は、ふと視線を下ろし、広場にいる市民たちの方を見た。あれだけの大人数が皆一様に、目を丸くしながら上空を見上げている光景というのは、一種滑稽でもあった。上空から地上を見下ろす空騎士たちも、そのように思っていたのかもしれない──それに、もしかしたら大鳥も)

 そして、午後になってからは本番の、競鳥である。この自由カオラクサの上空を使った競争。言うまでもなく、帝都で行われる競鳥と同じようにこの競争の順位が賭博の対象となるのである。午前中の曲芸飛行を間近で見て、興奮を煽られた自由カオラクサ市民たちは、小さくはない金額を、どんどん賭けていく──そして競争の結果に、一喜一憂するわけだ。金をかけているとなると、なおのこと熱中するのが人情という者だ。人々は投票券を握りしめ、声を荒げて歓声を上げながら、熱狂的に競争を観戦していた。


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