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記録78 空騎士という存在について


 軽装ながらに洗練されたその装備と、大鳥に騎乗しての高速飛行。空を飛ぶということは、地面を歩くしかない人間に対して圧倒的な優位性を持っているということだ。古き教えが説く天使のように、空騎士たちは上空からやってくる。太陽を背にして急降下する彼らに狙われたら、いかなる悪人もなすすべはない──

 このオルゴニア帝国に住む馬鹿な男児であれば、空騎士という存在にあこがれを持つものだ。つまりはこの国のほぼすべての男は幼いころに空騎士へのあこがれを持ったことがあるということだが……しかし、子供というのは成長し、少しずつだが自分が住む国のこと、つまりは自分が存在する世界のことを理解していくものだ。

 空騎士というのは、単にかっこいいだけの存在ではない。彼らは上空から都市の治安を守護する精鋭であると同時に、王侯貴族へ逆らう者を攻撃する弾圧者という側面もあるのだ。事実、かつての帝都において空騎士に捕らえられた反専制主義者──つまり共和主義者は少なくはない。此度の革命においても、空騎士たちの多くは最後まで皇帝の側で戦ったと言われている。

 そして、革命後に帝都の実権を握った共和主義者たちは、その過去を忘れてはいなかった。共和主義者たちは帝国政府をほぼそのまま接収し、乗っ取ることで共和政府を成立させたが、そこにおいては、空騎士たちは厳しい立場へと追いやられることになった。

 空騎士たちのうち、表立って革命に逆らっていた者たちは、反革命罪で投獄された。場合によっては処刑された者もいるし、帝都を追放された者もいる。それ以外の空騎士たちについても、その立場は厳しいものとなった。空騎士たちはもはや権力に近しい精鋭集団ではなく、単に空を飛ぶ邏卒として扱われ、共和政府からは蔑まれていた。

 さて。

 そのような空騎士たちを、この自由カオラクサに派遣するということは、共和政府にとってどのような意味を持つのだろうか? ……意味というものはないのかもしれない。共和政府にとっては、空騎士というのはもはや無意味な存在であり、一時だけ人びとの歓心を買うだけの、旅芸人の一座と同じであるということなのかもしれない。

 

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