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記録77 補償金について

 本山歌劇団の公演を招聘した男か、それとも帝都の空騎士を呼び寄せる組合(ギルド)の男か。参事会の補選に勝利するのはおそらくこのどちらかだろう──と、自由カオラクサの有権者たちは考えていた。実際のところ、どちらが当選しようとも、自由カオラクサ市政に即座に影響があるわけではなく、であれば有権者である自由カオラクサ市民をより楽しませた方がより多くの投票を集めることとなるだろうと思われていた。

 しかし、そこで一つの問題が起こった。花街と呪い師の休業補償の問題である。

 通常、自由都市が本山からの公的な来訪者を招き入れる場合、都市全体の斎戒として、花街と呪い師に対して休業が要請されるものである。しかし、たとえそれらが賤業とみなされているとはいえ彼らもその仕事で飯を食っている以上、その休業に対していくばくかの補償金が支払われるのが慣例である。

 この間の本山歌劇団の公演の際にもこの休業要請が発せられたわけであるが……しかし、この補償金の支払いについて、支払う側と受け取る側が諍いを起こしたのだ。

 支払う側は、本山歌劇団を招聘した男である。彼は憤然として、慣例と事前の協議に基づいた補償金を支払ったと主張している。

 受け取る側は、娼妓と呪い師の連合である。彼らは補償金の契約には詐術があったと主張し、訴えに出たのだ。

 詳細は書きようもないが、この争いは法的な争いとなるに違いなかった。しかし、法律がどのような審判を下すとしても、名声という点では、支払う側の男に大きな損失が発生したに違いなかった。

 一部では、この争議は組合(ギルド)の男による陰謀であるともささやかれていた。組合(ギルド)の男が階級的に近しい立場である娼妓たちや呪い師を扇動することで、対立候補に汚名を着せようとしているのだとか、なんとか。

 この陰謀論の真偽のほどはわからない。しかし、補選における潮目が変わってきたのは確かなようだ。



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