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記録75 空騎士について


 此度の補選は、本山歌劇団の招聘によって名を売ったあの立候補者が当選することになるだろう……と、わたしは推測していたし、自由カオラクサ市民の多くもそう思っていたに違いなかった。公演を上回る催しを今から用意することなど、そう簡単なことではないからだ。


 しかし、そんな中で、あの組合(ギルド)の男が市庁舎にやってきて、ある催し物の認可を求めてきた。

 それは、大鳥とその騎手たちによる見世物──つまりは競鳥競技についてである。

 その申請を受けた時、わたしはすぐには信じられなかった。人の身丈を優に超える猛禽である大鳥を養育するには、単に莫大な費用が掛かるだけではなく、それに特化した職能集団による知見の蓄積が不可欠である。その上、大鳥の背に乗って大空を駆ける騎手である空騎士というのは、特殊かつ希少な技能職である。つまり、この大鳥と空騎士を運用できるのは、強固な支配基盤を持つ一部の王侯貴族に限られていたからだ。

 この自由カオラクサでも、かつてはこの競鳥競技が行われたという記録はあるが、それは自由都市連盟とオルゴニア皇帝が密接な関係を築いていた時期に、帝都の空騎士部隊を借り受けての開催だったと言われている……

 そこで、わたしはぴんときた。

「もしかして、この競鳥競技に出場するのは、帝都の空騎士ですかな?」と、わたしは組合(ギルド)の男に聞いた。

「ええ、その通りです執政殿」と、組合(ギルド)の男はつまらなそうに答えた。

 いまや、帝都に皇帝はおらず、そこを支配しているのは共和政府である。空騎士たちも同様に共和政府の支配下にあるはずだった。

 ──つまり、この組合(ギルド)の男は、帝都の共和政府とのつながりを隠そうともしていないのだ。

 さて。

 この競鳥競技の開催の発表は、自由カオラクサ市民たちに多くの反応を引き起こした。大半の市民たちは、単にその降って湧いた娯楽を歓迎した。一方で、補選における他の立候補者たちは大いに反発し、ここまであからさまに帝都とのつながりを見せつけるのは、この自由カオラクサへの主権侵害であり許されるものではないと、対決の姿勢を見せたのだ。

 

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