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記録70 荷下ろしと荷運びについて


 今日、自由カオラクサに本山歌劇団が到着した。聖女さまのごとく、見た目麗しい修道女たち。大陸中から集められた選良の歌姫たち。

 彼女らは、自由カオラクサ市民たちの熱烈な歓迎を受けたが……しかし、そこで少々の問題が発生したらしい。聞くところによると、本山歌劇団が持ってきた小道具やら、美術装置やらの荷物の荷下ろしと荷運びに混乱と停滞が生じたとのことだ。

 本山歌劇団を招いた主催者の男は、本山歌劇団の公演が妨害を受けるのではないかという被害妄想を抱いていたのだ(参事会補選の対立候補である、あの組合(ギルド)の男の件である)。通例ならば組合(ギルド)に所属している荷運び人がやるはずの仕事を、その代わりに自分の手下たちにやらせようとしたが、それがうまくなかったのだ。単に荷運びといっても、結局それには鍛えられた腕力が必要だったし、それにどんな仕事にも要領や勘所というものはあるもので、その辺をうまくさばけないその手下たちは、右往左往した上に、危うく積み荷を落として美術道具を破損させるところだったとのことだ。妨害を警戒するあまり、自分で失敗を引き起こそうというのだから、まったく世話がない話である。

 結局、組合(ギルド)に所属している本業の荷運び人たちが、そのさまを見かねて、仕事の請負を申し出たらしい。主催者の男は忌避感を露わにしたが、しかしそれ以上の醜態をさらすわけにもいかず、しぶしぶそれを承諾したという。

 無論、餅は餅屋である。荷運び人たちがひとたび仕事を始めると、彼らはそれらの荷物を颯爽と、本山歌劇団の逗留先である自由カオラクサ修道院へと運び入れたという。


 そして、この余計な時間の浪費があったせいで、この日の予定はずれてしまった。本来ならば今日のうちに、わたしも自由都市執政として、本山歌劇団の代表者との挨拶があるはずだったのが、それは明日に延期されることとなった。


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