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記録69 本山歌劇団の公演について


 今日はかつての奉公先に顔を見せる日だった。

 話題として出るのは、当然、本山歌劇団の公演のことだった。いま市井は、この話題で持ちきりである。奥さまとお嬢さまは、それを大いに楽しみにしているようで、なにやら浮かれているようでさえあった。演目はやはり『古き教えの聖域』や『戦勝の日』なのか、あるいは自由カオラクサの守護聖女にちなんで『聖女カーロッタの巡礼』なのか、等々……。正直、そこまで歌劇に詳しくないわたしは、全然話についていけなかったのだが、それでも、お嬢さまが上機嫌だったので、まあ良しとする。(そういえば、歌劇というものについてそもそもわたしが把握している知識は、お嬢さまが楽しそうに、一方的にまくしたててきた言葉によるものである。もしもお嬢さまがいなかったら、なおのことなにも知らなかったであろう)

「そういえば、アデーラさんは、以前は本山にいたんですよね?」と、お嬢さま。

「……ええ、まあ」とアデーラは、なにやら気まずそうな顔をした。普段の泰然とした様子とは打って変わり、どこか居心地悪そうにそわそわとしていた。

「本山歌劇団の方々も、当然本山にいたんですよね? いいなー。歌劇団の練習とか、そういうのって見たりはできたんですか?」

「いや、そんなことはありませんでしたよ。一口に本山と言っても広いですからね。部門が違えば、ほとんど接触もないのです。それに、本山歌劇団にとって歌劇が伝道活動の一種である以上、歌劇の練習というのも修行ということになりますからね。興味半分で覗いたりできるものじゃありませんでしたよ」

「なーんだ」

「まあ、当時は歌劇団にも知り合いくらいはいましたが」

「え、すごいすごい! なんて人です? 今回の公演に出たりするんですか?」

 アデーラは首を振って見せた。

「……口が滑りました。全部、昔の話ですよ」

 

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