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記録65 補選の立候補者について


 そんなのそっちで勝手にやっておいてくれよ……と思うのだが、参事会補選の立候補の受付と最終承認は自由都市執政の職務とされているので、それにまつわるいくつかの仕事をやらされるはめになった。名目上、自由都市執政は参事会のどの派閥からも独立しているし、わたしもどこかの派閥に与してやるつもりはないので、実際のところ平等といえよう。

(そもそも、このわたしがこの自由都市執政に選出された理由の一つに、弱小の商会の所属であり、いずれの豪商の派閥にも属していないという点がある。自由都市執政をそのようにしておくことで、自由カオラクサ市政における各豪商の派閥の均衡が維持されるというわけだ。──無論、わたしが優れた能力を持つ男である、というのも大きな理由の一つではある)

 さて。

 そんなわけで、補選の立候補者たちが代わる代わるこの政庁を訪れたのだが……わたしは、すっかり疲れてしまった。つまり、彼らは成り上がりの新興商人たちであり、そのわざとらしい抑揚の声色とか、演技かかった身振り手振りとか、彼らの全身から発せられる強烈な自己顕示欲と上昇志向は、わたしをげんなりさせた。(もう少し慎ましく生きても罰は当たらないんだよ、と誰か彼らに教えてあげてほしいものである)

 どうもわたしは、彼らのような人間に好意を抱くことができない。嫌悪感を抱き、軽蔑を感じてしまう。……仮にこれが、食うにも困った貧民が生きる糧を得ようとしているとか、老いた病身の父母を養うためだとかなら、軽蔑を感じることはないだろうに。わたしが浅ましさを感じ取ってしまうのは、現時点でも生きるのに困っていない連中が、それ以上の貰いを求めているというその強欲についてである。まあ、その厚かましい彼らにも、彼らなりの苦悩というものもあるのだろうが……それだって、どうせ厚かましい苦悩だろう。

 とりあえず、立候補者の受付の期日までにはまだ数日ある。正直、あの手の連中と顔を合わせるのはもう勘弁してほしいところである。もっとも、意気揚々とした連中は、大体はこの初日に受付を終えているだろうが。 


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