記録61 魔術的災害について
情報が錯綜している。いったい、なにが真実でなにが虚偽なのか?
まず、確からしいことから、書き記そう。
共和政府軍が皇領ルガンエを再占領したという。これは確かなようだ。──しかし、どうやって?
今日帝都の共和政府は、貴族派勢力圏も含めたオルゴニア帝国全土に声明を出した。要約すれば、以下のとおりである。
①皇領ルガンエでは、貴族派諸侯の要請により、魔術装置の発掘が行われていた。
②発掘作業における不用意な接触により、地中に埋まっていた魔術装置は誤作動を起こした。
③誤作動によって引き起こされた魔術的災害は、発掘現場を中心として、皇領ルガンエの街全体に影響を及ぼした。人々は意識を失った。
④皇領ルガンエの周囲を包囲していた共和政府軍は、異変を察知し、魔術的災害によって倒れた人びとを救護するため、勇敢にも突入し、結果的にその地を再び手中に収めた。
⑤現在、共和政府軍は魔術的災害による被害を調査中である。
⑥もしも今後、新たな魔術装置を発見した場合は、魔術的災害を引き起こさないために、決してそれに近寄らず、速やかに帝都の共和政府に通報するべきであろう。
……なんとも、共和政府にとって都合がいい話じゃないか。
実際のところ、共和政府の話は辻褄があっているように見える。魔術的災害というのは、おそらくは先日、自由カオラクサでも観測された通信異常にも関連しているのであろう。日時がぴったり符合している。
しかし、辻褄があっているとはいえ、疑念が残る。つまり、共和政府は自分たちにとって都合のいいことばかりを言い立てて、反対に、なにか都合が悪いことは黙しているのではなかろうか。
わたしが気になっているのは、魔術装置が魔術的災害を引き起こした、という部分である。これまでに、特務魔術師殿エウラーリエから魔術装置の概要について教えられてきたはずだが、わたしのその知識と、今回の事象とは、なにか齟齬があるように思えてならないのだ。




