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記録59 責任というものについて


 皇領ルガンエで黒い石碑の発掘が始まったという!

 いったいどういうことなんだ? 黒い石碑の埋蔵地点は、その情報が存在しているということ自体も秘せられている、第一級の機密だというのに……。

 皇領ルガンエは、鉱夫たちの街である。地面を掘り起こす道具には困らないだろうし、人びとは何かを掘り起こすことについては経験十分で、勘所を備えているに違いなかった。彼らが、いったいどれだけ細かい情報を掴んでいるかは分からないが、このままでは、黒い石碑を掘り当てられるのは時間の問題であろう。

 いったい、どこからその情報が漏れたというのだろう? その機密を知る者は、この自由カオラクサと、帝都にしか存在しないはずだが。

 もしも、その情報漏洩がこの自由カオラクサからだとしたら──。そのことを考えると、わたしは震えあがる。胃のあたりが苦しくなり、その場にうずくまってしまいたくなる。

 わたしは、責任というものが何よりも嫌いだ。これは責任感があるということを意味している。何か大きな損失について、自分事として認識してしまい、その損失の大きさだけ苦しくなり、惨めな気持ちになってしまう。(わたしが思うに、責任を負うことが好きな人間というのは、むしろ責任感がない人間に違いないのだ。問題が発生しようとどうでもいいと思っているから、責任を背負うことに何ら負担を感じず、その一方で利益ばかりを貪ろうとする!)

 この自由カオラクサの防諜体制を急いで再確認したが、とりあえず、見た感じでは問題はなさそうだった。──とはいえ、これはそもそもの問題を認識できていないという事態である可能性もあり、何らかの安心を担保できているわけでもないのだが。

 そしてなお恐ろしいのは、帝都の共和政府の沈黙である。皇領ルガンエの件について、わたしは自分に落ち度があったのかもしれないとうろたえて、共和政府に情報共有を求めた。しかし、向こうからは『現在、事実関係を調査中である』との簡素な返答だけがくるばかりで、何の進展もなかった。

 共和政府が何も言ってこないことから、わたしの不安はかえって増幅されていった。もしや、わたしも気づいていない自由カオラクサの防諜上の瑕疵が潜在しており、皇領ルガンエの件もそこから情報漏洩していて、それに気づいた共和政府が憤然と無言のうちにこちらを批難しているのではないかと、そのような恐ろしい妄想が、頭の中に膨らんでいった──

 

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