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記録58 皇領ルガンエについて


 皇領ルガンエが、共和政府に対して反旗を翻した。この知らせは、帝都からの遠隔通信によってもたらされた。

 なるほどハータ嬢が言っていたのはこのことだったのか……とわたしはまず思った。

 皇領ルガンエは、元はオルゴニア皇帝の直轄地であった。直轄地として定められるだけあって、かつては重要な鉱物資源の産出地であったとされているが、数世紀も前にそれは掘りつくされ、いまではすっかり寂れた鉱山の街である。

 革命後、ルガンエの地を治めていた世襲代官家は廃され、共和政府の支配を受けていたはずだが……。それが今になって、ルガンエの人びとは蜂起をしたのだ。

 その蜂起が、貴族派諸侯によって誘導されたものであることは間違いがない。いくら辺鄙な田舎町の人びととはいえ、なんの後ろ盾もなくそのようなことをするほど愚かではなかろう。ルガンエの人びとは、共和政府から遣わされていた役人をふんじばって、油断し切っていた共和政府の軍人を街から追っ払ったのだという。いくらその地に駐屯していた共和政府軍が少数だったとは言え、見事な手際の良さである。

 この蜂起に、帝都の共和政府は大いに動揺した。彼らは身も世もなく、遠征隊を組織して彼の地に送り込んだ。……しかし、山岳地帯にある皇領ルガンエは天然の要塞であり、その侵略を易々と跳ねのけているのだという。

 共和政府軍は皇領ルガンエを包囲するのが精いっぱいであるようだが、それは皇領ルガンエが外部から隔絶されたということを意味していなかった。皇領ルガンエの鉱山には地下坑道が張り巡らされており、それを熟知している領民たちは、物資や情報を、包囲の外から易々と運び入れているのだという。

 貴族派は、表向きはその蜂起とは無関係を装った。そして中立的な立場と嘯いて、厚かましくも皇領ルガンエと共和政府との仲裁を申し出てきているらしい。結局は皇領ルガンエを我が物にしようとしているそのは腹積もりは明白であるが……

 さて。

 帝都の共和政府はこの事件に、大いに動揺しているようであるが、一方で自由カオラクサから見れば、あまり重要な出来後とは思えなかった。そもそも、皇領ルガンエというのは戦略的に重要な地点ではないのだ。

 まあ、強いて言うならば、ひとつだけ気になる点はある。ごく一部の人間のみが密かに把握している黒い石碑の埋蔵地点のひとつが、実は皇領ルガンエにもあるということだ。とはいえ、これまでの歴史上で埋もれたままになっていたそれが、たまたま掘り起こされるということはないだろうから、そこまで心配することではないのかもしれないが……


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