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記録56 貴族派の軍事行動について


 ハータ嬢の滞在中、聖堂での会談は繰り返し行われた。名目上は、黒い石碑の所有権の争議に関する会談であったが、実体としては秘密裏の情報共有が行われたわけだ。

 果たして、ハータ嬢は本当に、貴族派と共和派の大いなる対立の中で、わたしと秘密同盟を結ぼうとしているのだろうか? ……その可能性もあるし、あるいはこの提案自体も何らかの欺瞞である可能性もある。結局のところ、彼女の本心は計り知れない。とはいえ、そんなハータ・フォーゲルザウゲ伯爵令嬢が持ってきた情報には、いくつか興味深い点があった。

 ひとつは、やはり貴族派の軍事行動に関してであろう。最近になって自由カオラクサが受けている数々の妨害は、むしろ陽動であり、本命の軍事作戦を隠蔽するために行われていたのだという。それではその本命の軍事行動はどこで行われるのかと聞いてみたが、それはハータ嬢にも知らされてはいないとのことだ。ただ、貴族派諸侯たちは協同して、共和派の支配地に対する切り崩しを進めようとしているのは確からしい──と、ハータ嬢は言っていた。(確からしい、と言った彼女の言葉が確かなものであるかどうかは、今の時点ではわからないわけだが)

 そしてもう一つ、重要な情報があった。

 ハータ嬢は、ふと聖堂を見上げながらこんなことを言った。

「この自由カオラクサ修道院の、修道院長ですが──彼女は密かに貴族派への接触を図っているようです。わたしも、彼女に何度か密談を持ち掛けられました」

 やはりそうか、とわたしは内心、納得した。それはあまりにもひどい話だが、つじつまの合う情報でもあった。つまり、以前の騒動の中、修道院長はこの自由カオラクサを貴族派に売り渡そうとしていたわけだ。……まったく、とんでもない女だ!

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