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記録52 ハータ嬢の自由カオラクサ来訪について


 最近この自由都市執政が、こんなにも種々の問題の対応に迫られているのは、貴族派勢力による妨害工作の飽和攻撃が原因に違いないのだ。(この日記では普段から皮肉やら反語やらを書き殴っているので、上記の文章も、客観的にみたらわたしの真意がわかりづらいかもしれないが、これについては皮肉でも反語でもない。上がってくる情報から分析するに、実際に貴族派の密偵の活動が活発化しているのである。武力侵攻の前触れでなければいいのだが……)

 あっちこっちで起きている問題への対処でてんてこ舞いだというのに、それにくわえて、よりによって、ハータ・フォーゲルザウゲ伯爵令嬢が近日中に自由カオラクサに来訪するというのだから、もう勘弁してくれよとしか言いようがない。例の黒い石碑の争議に関しての来訪だというが、その本当の目的がどこにあるかは不明である。

 共和派と貴族派の戦端がいつ開かれるかもわからない状況だというのに、自由カオラクサにのこのことやってくるというのは、ハータ・フォーゲルザウゲという人間は甚だ剛毅で恐れ知らずだというほかがない。あるいは、あえてその敵方の本拠地に乗り込むという危険を冒すことこそが、むしろ本当の目的なのだろうか?

 多忙のせいで変な方向に頭が冴えているのか、どうも不安な類推ばかりが次々と思い浮かんでしまう……。例えば、ハータ嬢の自由カオラクサ来訪により、貴族派勢力はなにか決定的な開戦の大義名分を手に入れようとしているのではなかろうか。もしも自由カオラクサに滞在中のハータ嬢が、自作自演で何らかの被害にあったかのように装えば、貴族派勢力は自由カオラクサを攻撃するためのまたとない大義名分を手に入れることになるのではなかろうか……

 いや、どうもわたしは疲れていて、それで余計に、負の方向へと思考が偏ってしまっているようだ。その思考の偏りが存在するということは認知できるが、それがどの程度かということは客観的には図りえない。冷静にならなくては。とりあえず今日はさっさと寝てしまおう。

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