記録50 法的な所有権の争議について
面倒な問題が発生した。
今日、ハータ・フォーゲルザウゲ伯爵令嬢からの書状が届いたのだ。それは、自由カオラクサ城壁外で発掘されたあの黒い石碑、すなわち魔術装置の所有権はフォーゲルザウゲ伯爵家に帰属する──と、主張するものだった。
遥か昔の解放戦争の時代、反乱軍に参加した士族たちは、その褒賞として、各地の封土と、魔術師王からの分捕り品を与えられたのだ。言わずもがな、フォーゲルザウゲ伯爵家の祖先もその反乱士族の一つである。
そしてこの、『封土』と『分捕り品』の2つが問題の要点だった。
時代が下り、この自由カオラクサが自由都市としてフォーゲルザウゲ伯爵家の領邦からの独立を果たすことになった。しかしそれはあくまで領地としての独立であり、魔術師王からの分捕り品であるはずの魔術装置はフォーゲルザウゲ伯爵家の所有物のままである……というのが、その書状の要旨である。
そんなわけあるか! とわたしはこの主張の妥当性を調査させたが、実際、判例的にはほとんど認められないであろうことがわかった。これを言い出したハータ嬢自身だって、そんなことは分かっているはずなのだ。
つまりこれは言いがかりであるが、戦略的な言いがかりでもあるのだろう。この訴え自体による法律上の効果によって黒い石碑を窃取されることはないだろうが、これを大義名分として、なにか他の手段で奪い取ろうとしている可能性がある。あるいは、この訴えという形式を利用して、何か他の目的を達成しようとしているのかもしれない。
これは、面倒くさいことになってきた。ほとんど負ける可能性がない話とはいえ、法的な所有権の争議という形式をとられてしまえば、こちらも相応の対応が必要になってくる。
ああ、面倒くさい。諸々の手続きが七面倒だ。こちらを煩わせるせることが目的だとしたら、ハータ嬢は天才的な戦略家である……




