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記録44 最終通告について


 わたしはなんだか気分が高ぶっていた。決して、しっちゃかめっちゃかなこの状況を楽しんでいるわけではないが、一種の身体の反応として、戦いの前の戦士のように眼が冴えてきて、浮足立っていたのだ。そして、それなのに何もできることもなく、もどかしさを感じながらただ執務室にいることしかできなかった。

 衛兵による修道院の包囲は続いている。事態は好転の兆しを見せないまま、時間ばかりが過ぎていく。


「いったい、どうなるんですか?」と、定時報告にきたエウラーリエはいった。「帝都の共和政府も、自由カオラクサのこの状況について、いたく心配していますよ。この騒ぎがなにかより大きな騒動を引き起こすことになるのではないかという懸念があるわけです」

「そうはいいましてもね、特務魔術師殿。事態は、わたしの手に負えるものではなくなっています。参事会と修道院長の争いです。わたしにできることといえば、小競り合いが市民たちに被害を与えないように気を配ることと、共和政府に向かって報告を上げることしかありません」

 特務魔術師エウラーリエは、顔を近づけてきて、小声でささやいた。

「……共和政府は、問題解決のためになにか策を用意しているようです」

「なにかとは?」

「さあ、詳しくは知らされていませんが。一応、自由都市執政殿には伝えておこうと思いまして」

「……」それじゃあ何にもわかんないよ、と思ったが、口には出さなかった。「わかりました。良いようにやってください、と共和政府にお伝えください」


 包囲から丸一日たった頃。

 黙殺を貫く修道院側に対してしびれを切らしたのか、ついに参事会は最終通告を出した。

 明日の正午までに、修道院内に匿っている暗殺者をこちらに引き渡さない場合、衛兵による修道院への立ち入りを行う、と。


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