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記録35 遠大な構想について


 魔術装置である黒い石碑を利用した帝都との遠隔通信について、反対派の市民たちはわたしを声高に批判している。

 一方で、この遠隔通信に賛成の市民たちも多く存在している。この賛成派たちは、あえてその立場を主張しようとはせず、ただ黙々と、粛々と、遠隔通信を利用した帝都との商いを行っているわけだ。この手の人間にとっては、魔術だろうがなんだろうが商売に利用できるものはなんでも利用するということこそが信念なのであろう。

 オルゴニア帝国の中央に位置し陸路の結節点である自由カオラクサと、最大の人口集積地にして港湾都市でもある帝都。この二つの都市の経済は、急速に結合しつつある。いつ内戦が始まるかもわからない政治的危機と軍事的脅威とは裏腹に、景況だけはやたらと良かった。

 こうなってくると、次の課題が出てくることになる。すなわち、自由カオラクサと帝都に続く、第三の黒い石碑の発掘である。魔術装置利用賛成派の人びとの中には、黒い石碑を掘り当ててやろうとしてやたらめったらに地面を掘り返そうとしている者もいるという。

 実際のところ、黒い石碑には、他の石碑の所在地も刻まれてはいるが、諸々の理由により、これは機密として扱われている。──どこに黒い石碑が埋まっているかということが機密であるし、その情報をわれわれが把握しているという情報自体も秘匿されているのだ。

 当面は、自由カオラクサと帝都の二都市でのみ、黒い石碑による遠隔通信が運用される見込みである。共和派の勢力圏内に位置する他の黒い石碑について、いずれは段階的に発掘し、通信網を構築するという遠大な構想もあるらしいが、具体的な計画はまだ始まっていない。



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