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記録34 砦の修道会の本山について


 修道女を中心とした市民たちの反発は続いている。つまり、いつも通りの日常が続いている、ともいえる。

 面会に来た修道院長の遠回しな、しかし一方ではあからさまな要求を断ってから、数日が過ぎている。しかし、今のところは、それ以前と特段の変化は発生していないようにも思えた。

 修道院長はいま、自由都市執政殿を失脚させるための策略を練っているのだろうか。あるいは、こちらが内心では弾劾されたがっていることを察知して様子を見ているのだろうか……


 いつもの執務室。

「なあアデーラ。修道院長がなにかを企んでいるとか、そういう報告はないか」

「いいえ。特にありません、執政殿」

「そうか。──あの面会では、驚かされたもんだけどな。あんないかにも立派そうな修道女さまが、まさかゆすりたかりをしかけてくるなんて」

「……砦の修道会の本山には、ああいう手合いはたくさんいますよ」

「ふうん」

 アデーラは相変わらずすました顔をしているが、そこにはやや倦んだ気分が仄めかされているような気がした。──長らく一緒に仕事をしているうちに、彼女の無表情から漏れる内心を、なんとなく感じ取ることができるようになってきた気がする。

 ちょうどいい機会なので、わたしはきいてみた。

「アデーラ。どうしてきみは、砦の修道騎士団を辞めたんだ?」

「よくあるつまらない話です。本山での醜い争いに巻き込まれて、嫌気がさして、それで出奔した──というだけのことです」

「この前いっていた、ややこしい話っていうのはその争いのことかい」

「そんなところです」

「本山っていうのは大変なところなんだな」

「立派な人もたくさんいたんですけどね。でも結局、のし上がっていくのは、強欲で浅ましい人なんです。……俗世と同じですね」

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