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記録31 本当の目的について


 そういうわけで、わたしは信心深い人びとからの弾劾の請求を心待ちにしながら過ごしている。頻繁に礼拝に通い、これ見よがしに布施を行い、あえて顰蹙を買いに行くなどの努力も欠かしていない。

 無論この作戦の本当の目的は、誰にも悟られてはいけないものである。あくまで、市民たちからの要求によってやむを得ず辞任を申し出て、参事会も仕方なしにそれを承認する──という体をとりたいのだ。やむを得ず、という点が重要であり、これが意図的なものだと参事会に悟られてしまっては、それこそ紛れもない背任罪になってしまう……


 そんなある日、執務室にて。

「礼拝に行くのは控えてはどうですか、執政殿」とアデーラはいつもの無表情のままでいった。

 突然のことにわたしは内心動揺したが、なんとかそれを押し殺し、平静を装って返事をした。

「なぜ?」

「市民たちの反発への対策だったはずですが、むしろ逆効果のように見えます」

「かといって何もしないわけにはいかないだろう。こっちは参事会から、なんとかしろと命令されているんだ。続けていれば、いずれ効果は出るさ」

「そうですね。差し出がましいことを申しました」

「……」

 わたしは手元の書類仕事に目を戻すふりをして、密かにアデーラの様子を盗み見た。──しかし、彼女はいつもの通りの冷徹な無表情を貫いており、その本心を伺うことはできない。

 果たして今、アデーラはあの鉄面皮の内側で何を考えているだろうか? こちらのことを他人からの軽蔑に気をはらわないほど高慢な男だと蔑んでいるだろうか、あるいは、こちらの真の企みに気づきかけているのだろうか──

 高慢な男と思ってくれ、アデーラ! お前が仕えていて、同時に監視しているこの自由都市執政は、これまでの黒い石碑に関する成果ですっかり思いあがっているのだと、参事会の老人たちに密告してくれ!

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