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記録21 流言飛語について


 自由都市執政というのは、参事会の老人たちからは良いように使われる一方で、一般市民たちからは好き勝手いわれる立場なのである。まったくろくなものではない。

 特に最近、巷ではわたしに関する流言飛語が飛び交っているという。市民たちからの支持率なんていうのはどうでもいいものだが(あんたらがこっちを嫌っているのなら、こっちだってあんたらなんて嫌いだ!)、一般的には、どうやら、市民たちの声を聞くことは自由都市執政の務めの一つとされているらしい。

 さて。

 市民たちがいうには、いまの自由都市執政は帝都からやってきた魔術師女に惚れこんで色ボケしているとか、あの黒い石碑を利用して邪神を召喚する邪教的儀式を行おうとしているとか、実はフォーゲルザウゲ伯爵家と内通しているだとか、毎晩のように花街に通っているだとか、その花街通いのせいで病気持ちになったとか……


「もういい、やめてくれ」わたしは思わず、アデーラが淡々と読み上げる報告を遮った。

 アデーラは頁をめくる手をとめ、視線をこちらによこす。

「まだほんの一部ですが」

「どうせ益体もないことばかりだ」

 わたしは呆れて、首を振って見せた。

「……しかし、ちょっと前までは女秘書にたぶらかされたとかなんとか言っておきながら、こんどは特務魔術師殿とか!」

「おそらく、話の種としては、相手が若い女性ならなんでもいいのでしょう」

「黒い石碑については、たしかに機密として扱っていて、市民たちは何も知らないのだろうが、邪神なんていうのは飛躍しすぎだろう」

「まったくです」

「フォーゲルザウゲ伯爵家との内通なんて全く根拠もない」

「おっしゃる通り」

「花街に通ってる暇なんてあるか!」

「はい」

「病気は──いまは罹ってない!」

「……」

 アデーラの視線は冷たかった。


 まあ、細かいところは置いておくとして。

 気になるのは、黒い石碑に関する噂だ。その実態については機密に指定されているとはいえ、あの黒い石碑に力点が置かれているというのは、はた目から見ても分かることであろう。それに最近、帝都でも同様の発掘が行われたのだから、それを聞き及ぶ耳聡い者ならば、共和派内で黒い石碑に関する何らかの計画が推し進められているということは、容易に推測できるのかもしれない。

 市民に知られるだけならまだいいのだが、これが貴族派の連中にも漏れ聞こえているものだとすると……向こうの出方について、何をしてくるか分からないが、用心しなくてはいけないだろう。

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