表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/139

記録134 ミハル・ヘルコプフについて


 ミハル・ヘルコプフ──すなわち、ヘルコプフ伯爵家の次男坊は、捕虜たちを詰め込んでいたそれまでの雑居房から、特製の独房へと移監されることとなった。独房とはいっても、大貴族のお坊ちゃんのための個室という方が実態に近いかもしれない。捕虜たちに課せられていた労役も、免除されることになる。

 その突然の待遇の変化に、ミハル自身もさすがに何か事態が変化したことを理解したらしい。そしてその待遇の変化は、むしろ自分に対する侮辱と虐待であると抗議した。他の仲間たちと同様の元の扱いに戻せと、彼は要求してきたのだ。

 当然、この願いを聞き入れることはできない。なにせ、ミハルの待遇を改善することこそが、ヘルコプフ伯爵家からの最初の要求だったからだ。もちろん、それにかかる費用は伯爵家が惜しみなく出すことになっている。

 正直なところをいえば、この状況に嗜虐心が満たされていくのを感じないではない。恵まれた境遇を嫌う相手に、問答無用で恵まれた境遇を押し付けるというのは、愉快さがある。──だって、むかつくじゃないか。大貴族の次男坊という立場に生まれながら、それだけじゃ飽き足らず、名声をも欲して喜び勇んで戦争に参加する、その強欲さに。それでいながら、自分自身は無欲で純粋な存在だと思っていやがるんだ!

 わたしが推察するに、ヘルコプフ伯爵と次男坊ミハルの間には、わだかまりがあるようだ。そのわだかまりはある種ありきたりで、くだらないものである。ミハルが自由カオラクサ戦役に参戦した要因の一つに、親への反発という理由があったに違いない。そして、その幼稚さが巡り巡って、ミハルを捕虜という立場に追い込み、その上、疎んでいたはずの伯爵家の力によって救助されつつあるのだ。ミハル自信は屈辱を感じているに違いないし……以下は勝手な想像だが、もしかしたら、ヘルコプフ伯爵は分かっていてあえてその屈辱を次男坊に与えているのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ