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記録133 推理の見事さについて


 自分で考えた予想がぴたりと当たるのは、なんとも気持ちがいいものだ。わたしはいままさに、その気持ち良さを味わっている。気分が高まり、自分で自分をほめてやりたいような心地である。全能感のような喜びで、思わず笑いがこぼれてしまう。

 わたしが当てたのは、件の捕虜たちの出どころである。以前もらった密書には伯爵家の分家筋とあったが、実際には本家の次男坊であり、しかもそこいらの木っ端の伯爵ではなく、貴族派諸侯の中でも有数の大貴族、ヘルコプフ伯爵家だというのだ!

 わたしの推理の見事さについては、他ならぬわたしが一番知っているため、その論理的な筋道をあえてここに記載することはやめておこう。どのみち、書ききれるかも分からない。(わたしは得意になって、アデーラに朗々と言って聞かせようとしたが、彼女は心底興味なさそうにこちらの話を遮ったため、この推理の中身を知っているのは私だけということになる)

 ……まあ、もしかしたら、ついこの間まで一緒にいた女候殿の力を借りれば、帝国貴族に詳しい彼女のことだからすぐにそれを突き止めていたかもしれないが、しかし、彼女の力を借りなくても済んだということには、価値があるだろう。彼女には、できれば借りを作りたくない。

 さて。

 そういうわけで、わたしがヘルコプフ伯爵家領邦に遣っていた密偵は、ヘルコプフ伯爵家との連絡をつけたようだ。実際の交渉はこれから始まるわけだ。とりあえず、この件については、圧倒的にこちらに優位がある。相手方のお坊ちゃんの身柄を抑えているという点についてもそうだし、こちらは戦争の侵攻を受けた側であり、道義的にもこちらに分があるわけだ。

 先の自由カオラクサ戦役について、貴族派諸侯は、あくまでもバルバナーシュ・フォーゲルザウゲという個人が起こした戦闘であり、貴族派は直接関与したわけでない、という立場をとっている。しかし、陣借りとしてやってきたあの義勇兵たちについては、言い逃れはできないだろう。

 わたしは、これからヘルコプフ伯爵家に対して強請りたかりをしかける。しかしこれは、あくまで正義を回復するための強請りたかりなのだ。


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