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記録13 家族について


 自由都市執政という立場ゆえに、わたしはちょっとした変装をする必要があった。しかし、旦那さまと奥さまにとっては、変装なんてものは意味をなさないらしかった──

 今日わたしは、長年奉公していた商会に人目を忍んで訪れた。先日のお嬢様との約束を律儀に守ったわけだ。

 旦那さまと奥さまは、わたしの姿を見るや否や、駆け寄ってきた。そして、怪我はなかったかと心配そうに聞いてきた。

 この二人はなんの話をしているんだと、わたしは一瞬だけ面食らった。しかしすぐに思いだした。そういえば最近、わたしは暗殺者に殺されかけていたのだ。──自由都市執政としての目まぐるしい日常のせいで、重大な事件であってもすぐに意識の端へと押しやられてしまう。

 旦那さまも、奥さまも、涙ながらにわたしの無事を喜んでくれた。そして同時に、わたしの身を案じてくれた。

「もしも、お前になにかあったら、参事会には文句を入れてやらなきゃならん」と旦那さまは言ってくれた。……そんな権力も伝手もないというのに! けれど、その明らかに過分な言葉に込められた親心にも似た感情は──あるいは、親心そのものは──わたしの胸を締め付けた。

 旦那さまも、奥さまも、それほど長い期間あっていなかったわけでもないはずなのに、記憶していたよりも、なんだか随分と年を取ったかのように見えた。

 この善良な人たちを悲しませるようなことはしたくないと、わたしは心の底から思った。

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