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記録124 晩餐会について


 晩餐会があった。食事は文句なしにうまかったが、貴族派の諸侯と面と向かって会食するということが、わたしの気を滅入らせた。

 貴族派の連中が、わたしに向かい、何を言ったか? ──予想だにしていなかったが、なんと彼らは、自由カオラクサの奮戦を褒めたたえたのだ。

 はじめ、わたしは困惑した。遠回しの皮肉なのかと訝しみもした。しかし、すぐにこう思った。貴族派の連中にとって、戦争というのは一種の盤上遊戯のようなものなのだ。あくまでも彼ら貴族は指し手の立場であり、駒ではない。そしてこの自由都市執政のことも、対局相手として認めたということなのだろう。直接殺し合いをする駒と駒ではないのだから、指し手と指し手の間には遺恨がないと、彼らはそう考えているのだ。

 これは一種の、高貴さからくる寛容なのだろうか? ……そうかもしれないが、わたしにはそれが不愉快だった。兵士は駒ではなく、人である。戦争を行うということは、人と人を殺し合わせることに他ならないというのに……

 女候殿も、貴族派の伯爵たちと、こともなげに歓談をしていた。今の立場で言えば、女候殿は帝国貴族の裏切り者でしかないだろうに、少なくともうわべには遺恨がないように見える。──もしかしたら、内心においてもそうなのではなかろうか。

 ここは自由カオラクサではない、という考えが、突如として湧き上がってきた。こんなこと、改めて考えるまでもない当然の事実であるが、この時になってそれを強く思った。この世界においては、王侯貴族が平民の上に立っている。平民というのは家畜も同然であり、その中で限られた数人のみが、高貴な寛容さによって認められ、貴族と同席することを許される……

 わたしは急に、気味が悪くなってきた。華やかで、きらびやかな晩餐会の席であるが、自分が孤立しているように思えてならなかった。果たして、話が通じる人間がどれだけいるというのだろうか?

 わたしは思わず、ハータ女伯の方を見た。しかし、席次の関係で、直接言葉を交わすことはできそうにもなかった──

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