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記録121 フォーゲルザウゲ伯爵家領邦の領都について


 フォーゲルザウゲ伯爵家領邦の領都へと着いた。

 一時的にせよ自由カオラクサを離れることについて、出立するまでに予期していたような感慨は、意外と湧いてこなかった。実際に移動してみれば、それは単なる移動でしかなく、淡々としたものである。(移動中の、女候殿の止まることのないおしゃべりには辟易させられて、余計に疲れたような気もするが、そのくらいである)

 さて。

 フォーゲルザウゲ伯爵家領邦の領都は、当然であるが古都である。反乱軍が魔術師王朝を打ち破った後、この地に封じられた伯爵家の祖が定めた居城に来歴を持つ都市であり、その都市建築からしても積み重なった歴史が見て取れた。都市の中心にあるフォーゲルザウゲ伯爵家の居城は荘厳で見事な建築様式であり、見物である。

 フォーゲルザウゲ伯爵家領邦における政治の中心でもあり、また、自由カオラクサが隆盛するまでは経済の中心地でもあったわけだ──

 この領都についたとき、わたしは驚かされたことがある。それは、領民たちから熱烈な歓迎を受けたことである。

 初めは、それがこの自由カオラクサ執政に向けられているものだとは思っていなかった。なにせ、歴史的経緯から、自由カオラクサというのは領都からは何かと疎まれていたからだ。(わたしが自由都市執政となる前に、所用で何度かこの領都を訪れたことがあるが、当時は自由カオラクサの人間だと知られると、嫌そうな顔を向けられたものだ)

 しかしいま、どうやら事情は変わったらしい。領民たちから支持を集めていたハータ・フォーゲルザウゲ嬢が領都を追われたとき、自由カオラクサ執政が危険を冒してまで彼女を匿っていたということで、評判がすっかり様変わりしているようだ。

 わたしも人間であるので、この歓待ぶりに、正直悪い気はしていないし、何ならこの領都のことが好きになってきたかもしれない──以前は、時代に取り残された哀れな地方都市、としか思っていなかったが、なかなかどうして、いいところじゃないか。建造物は美しいし、人びとは素直だ。


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