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記録115 厚かましい味方について


 特務魔術師エウラーリエが持ってきた話によると、フォーゲルザウゲ伯爵家の襲爵式に向けて、共和政府の使節団が帝都を発ったとのことだ。この共和政府の使節団は街道を進み、自由カオラクサでわたしと合流し、その後、フォーゲルザウゲ伯爵家領邦の領都へと向かうことになるという。

 ……個人的な感覚で言えば、この合流というのは好ましいものではない。つまり、この自由カオラクサの執政が共和政府の使節団に合流し、その状態でフォーゲルザウゲ伯爵家領邦の領都に入るというのは、あたかも共和政府が主でそれに引き連れられる自由カオラクサが従であるかのような印象を、見るものに与えるのではないかという懸念であった。

 もっとも、このような懸念を持っているのはわたしだけのようだ。共和政府の使節団と合流すれば単に必要な護衛の数も節約できるし、迎え入れるハータ嬢側の手間も少なかろうと、参事会の老人たちはごく自然に考えているようだ。

 客観的に言えば、わたしは考えすぎということになるのだろうが……いや、しかし、どうにも気になる。


 かつて、自由カオラクサはオルゴニア帝国皇帝と君臣の関係であった。フォーゲルザウゲ伯爵家領邦から独立するに際して、そのような形式をとったのだ。皇帝の直接の臣下となることで、フォーゲルザウゲ伯爵家と対等の立場に上昇する、という建付けである。

 皇帝を頂点とした角錐構造こそが、オルゴニア帝国の秩序だったのである。

 しかし今、オルゴニア帝国に皇帝はいない。構造は分解され、自由カオラクサの頭を押さえつけていたものは何もなくなった──理論上は。現実的には、同盟者である共和政府が、空位となった角錐構造の頂点に上り詰めようとしている問題がある。

 無論、自由カオラクサにとって、共和政府は敵ではない。先の戦争においては、なんだかんだいって共和政府の支援がなければ自由カオラクサは戦い抜くことは難しかっただろう。共和政府は敵ではなく、味方である。それは確かなように見える。

 ただ、共和政府は味方であると同時に、厚かましい支配者という側面も間違いなく持っている。自由カオラクサの自由と独立を保つためには、この厚かましい味方に対しても十分に注意を払わなければならないだろう。



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