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記録1 日記について

 自由カオラクサの参事会は、某商会の番頭を自由都市執政に選出した。彼は謙遜し、辞退を申し出たが、参事会はその申し出を却下した。

 日記をつけるのはわたしの習性である。丁稚のころに読み書きを教わって以来、毎日ではないにせよ、思ったことや考えたことを書き留め続けているわけだ。今となっては膨大な量が積み重なり、今なお増え続けているそれは、わたしの半生の断面標本であると言えよう。

 自由都市執政への選出という災難があろうと、この生活習慣を止めてやる義理はない。もっとも、わたしのことを単なる駒だとしか思っていない参事会の老人たちは、わたしが自由意志を持つということを嫌がるに違いないが。

 そして、今日のこの記録こそが、将来的にはわたしを救ってくれることになるのかもしれない。一つの可能性として、この自由カオラクサが貴族派諸侯の包囲に屈して敗北することになるのなら、わたしは生け贄としてその身柄を貴族派に捧げられるだろう。その裁判においては──裁判という形式があるのならば──この日記こそが、何よりも重要な証拠品となるに違いないのだから。

 改めて、ここに残しておこう。わたしは自由都市執政になることなんて望んでいなかった。得るものがあまりにも少なく、失うものがあまりにも多いからだ。その上、時局も悪いときた。辞退の申し出は、謙虚さの儀礼的誇示なんかではなく、本心からの行動だった。

 自由都市執政を選出する仕組みを、ぜひとも調べていただきたい。いかにこの自由カオラクサというものが参事会の老人たちによって支配されているかが分かるはずである。自由都市執政というのは、その名目上の首長という役割とは裏腹に、本当の権力者たちにいいようにこき使われる立場なのである。ああ、わたしがなまじ仕事ができる男であるばかりに、こんなことに……

 もしも貴族派の皆さんが裁判の証拠としてこれをご覧になっているのなら、ぜひとも、この哀れで自由のない自由都市執政にご慈悲をおかけください!

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