0095・<堕落の園>と演技指導されたミク
次の日からミクとヴァルは少し戻って、村からも情報収集をしていく。盗賊の噂は無いか、怪しい者を見なかったかなど。冒険者の登録証とランク10である事を前面に出し、色々な人物から情報を聞いていく。
ヴァルは子供達の遊びに付き合ったりしながら過ごし、情報を集めを行う。詳細に集めていくも、ヒュルブ町から西にレオレ村、ヒイユ村と続きテオッソの町まで来てしまった。ここがワインの一大生産地だ。
この町まで特に盗賊の話は無し。盗賊兵士だけなのに、わざわざ闇の神が潰せと言うだろうか? その事に疑問を抱きながらも、ミクはテオッソ町でも情報収集をしていく。すると、後ろから尾行する者が現れた。
そいつには気付いているが無視して町の人から話を聞くと、奇妙な事を話す人が何人か居た。それは盗賊ではなく、薬物を売る密売人の話だった。そういえば王都でもスラムには蔓延していた。あの薬を売る奴等がここにも居るようだ。
つまり後ろから尾行してくる奴は関係者かと当たりをつけつつ、更に町の人から情報を聞き出していく。結局は不確かな情報しかなかったが、密売人が居る事と、近くに薬物の原料を育てている場所があるんじゃないかという話だ。
この二点が重要な話だと思い、ミクは気配を調べる。明らかに数が増えており、一人だったのが六人まで増えていた。そんな中で堂々と宿に入って一部屋をとる。すると尾行者と宿の店員がアイコンタクトをとっていた。
グルだと分かったミクは、都合が良い展開だと一人ほくそ笑む。宿を出たら食堂に行き、夕食を食べたら早々に宿の部屋に戻った。間違いなく襲ってくれるだろうから、ここは相手の手に乗った方がいい。
ヴァルも賛成したので、ミクはベッドで寝たフリをしつつ侵入者を待つ。
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夜も深くなった頃、やっと侵入してきた間抜け達。既にミクは御立腹である。どれだけ待たせれば気が済むんだとミクは激怒していたが、侵入者がきた事でようやく平静を取り戻した。宿の従業員とグルの癖にやたら慎重な連中である。
ミクの部屋に侵入し鼻と口を湿った布で塞いだが、ミクはそれを睡眠薬だと分析。少し抵抗してから力が抜けていくフリをする。演技指導を受けているからか、こういう演技も上手くなっているようだ。
ミクを眠らせたと思い込んだ連中は、ミクを担ぐと何処かへと連れて行く。どうやらヴァルも眠らされたらしい。もちろんフリだが……狐の魔物に人間種の睡眠薬が効くのだろうか?。
まあ、こいつらが信じてくれるならいいか。そう思うミクとヴァルであった。
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ここはスラムのとある廃屋。ミクは周りの連中の言葉を聞いていたので、ここがスラムだという事は確定だろう。更に奴等は危険なドラッグを無理矢理ミクに使用している。
どうも粘膜から吸収される薬らしく、鼻に突っ込まれていた。当然ながらミクには欠片も効かないのだが、面倒なので出し入れをスムーズにするべく粘液を滲み出してやる。
何か勘違いしているのか、ミクを犯している男は喜んで腰を振っているようだ。周りの連中も今か今かと待っているらしい。心の中で嘆息しつつ、ミクはタイミングを待つのだった。
体が汚液塗れになり、そろそろ良いかと思っていると、誰かが廃屋へと入ってきたようだ。ミクは睡眠薬が効いているフリを続行しているので、目を開ける事無く聞いていく。
「ほう、この女がな。随分とお前達がヤったようだが、器量は抜群か。で、コイツの持ち物は?」
「リュックを持ってましたぜ。中には貨幣と登録証が入ってやした。驚いた事にランク10でしたよ、この女。あとは短剣とナイフ程度しか持ってませんでしたぜ」
「ふむ、斥候タイプか? まあ、お前達が薬を盛った以上は壊れるだけだ。どこかの娼館に売れば高値で売れるだろう。だがこの器量、<淫蕩の宴>なら高く買う筈だ。これ以上薬を使うなよ」
「分かってますって。あそこの奴等はジャンキーを買いませんからね。後で薬を欲しがっても適当に言っておけば済みます。下っ端のバカに売らせて始末しておけば、奴等の手はこっちに届きませんや」
そろそろ良いかと思い、ミクは濃縮した麻痺毒を分体から散布する。無味無臭で無色の麻痺毒が放たれ、あっと言う間に廃屋の連中は動けなくなる。そんな中、麻痺して呼吸しか出来ない連中の前で、ミクはむくりと起き上がった。
「よくもまあ派手にヤるもんだね。ジャンキーどもの薬なんて私に使っても効かないのに、ご苦労なことだよ本当。最初からお前達を殺す為に敢えて罠に掛かってあげたんだけど……。ねぇ、今どんな気持ち?」
動けない盗賊どもの神経を逆撫でするような事を言いながら、ミクは己の体の汚れを【清潔】で落としていく。ついでに体の内側の汚液も股座から全て落とす。
体を綺麗にしたミクは、適当な男の頭に掌を置き脳を支配。強制的に喋らせていく。
「お前達は密売人のグループ? もしくは組織としてやっている? 後、何故私を襲った?」
「我々はテオッソ町を拠点にする<堕落の園>という裏組織だ。ジャンキーどもが買う薬を作ってもいる。お前を襲ったのは美味そうだったのと、高く売れそうだったからだ」
「へぇ、私って美味しそうに見えるんだ。だったらお前も美味しいどうか試してみよう」
そう言うとミクは胴体を開き、男を貪っていく。ボリゴリバリボリという音が聞こえた瞬間、ミクを襲った者達は何を襲ったのか大凡理解した。………そして自分達の末路も。
「ふう、人間種の肉は美味しいね。まだまだこんなにある。貴方達もこのカラダで良い思いをしたんだから、私も良い思いをさせてもらうよ?」
最近<美の女神>や<淫欲の女神>に<性愛の神>にも演技指導を受けているからか、この時のミクは裸だった事もあり、異様なほどに妖艶であった。麻痺していなければ、正気を失った男達に群がられていたのは確実な程である。
相変わらずだが、神々はミクをどうしたいのだろうか? そっと心の中で溜息を吐くヴァル。神々ですら遊んでいるのだから、終着点は誰にも分からない。
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色々な事を聞きながら喰らっていくと様々な事が分かった。驚いたのは<堕落のオーセス>だろうか。あの男は<淫蕩の宴>に潜り込んだスパイで、実際は<堕落の園>の幹部というかナンバー2だった。
既に殺して喰らっているので、<淫蕩の宴>に対する足掛かりは失っているのだが、内部で成り上がろうとして王国に行ったのだろうか? それとも行かないと怪しまれるからだろうか?。
本人がこの世にいないので分からないが、脳を操っても質問にしか答えないから厄介だ。ミクも口を割らせる事の優位性は知っているが、それでも後で分かる事が多く愚痴を溢してしまう。
それでも分かった事が幾つかある。まず、この町の北にある村。その周辺で薬物が大量に作られているらしい。そしてその村の住人は殆どジャンキーだそうだ。薬欲しさに作らされているというべきか。
それと、この町にある拠点の位置も喋らせた。今から行って殲滅するが、夜の内に村まで行きたいミクは急ぐ。まずは連れて来られたヴァルに合図を出して大元へ戻らせた。
次に廃屋の隅にミクの荷物を発見、肉に入れて回収する。その後、百足の姿になってスラムの拠点を強襲。中に居る連中を次々に喰らっていく。もはや問答無用であり、情報を聞きだす事すらしない。
次々に脳を喰らっては転送し、偉そうな奴からは情報を聞きだす。そうしてテオッソ町の裏組織を殲滅したら、ミクはヒッポグリフになって北へと飛んでいった。




