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0089・神聖国系の裏組織壊滅 (二回目)




 どうやら飲み物を取りに行っていた奴が戻ってきたようだ。ソイツは右の部屋の扉を開けて乱入していったので、ミクは三つの扉の前に陣取り、触手で麻痺毒を三部屋に散布していく。効果は覿面てきめんで中の者は全員痺れて動かなくなった。


 ミクは左の部屋から中に入り、一人ずつ脳を操って喋らせていく。情報収集が終われば脳を食い荒らして転送し、次の奴へ。そうやって三部屋全ての者から情報を収集した。どうやら商国でも買収されている連中が居るらしい。


 大きな商会のトップや貴族の名前が複数出てきたので、処理する事を決めたミクは一階に戻っていく。屋敷の中の全員に<幸福薬>が使われていたので、全て食い荒らして転送した。薬物中毒者は救えないので、喰ってやった方がマシであろう。


 神聖国系統の裏組織はここだけだったようで、だからこそ<清浄なる祈り>の連中が余計な事をした所為で困っていたらしい。どのみち喰えればいいミクは奴等の事情になど興味が無いのだが、喋らせた情報の半分が愚痴だったのが何とも言えないのだろう。


 その夜、神聖国は商国への足掛かりを完全に失った。20年ほどに渡って表の商会を前面に出してやってきた事が、一夜にして壊滅したのだ。当事者達が知れば怒り狂うだろう。もちろん今回も知られていないが、いずれ知られる時が来る。


 その時に起こるのはミクと神聖国の全面戦争か、それとも商国と神聖国の全面戦争か。それは誰にも分からない。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 裏組織を壊滅させた翌日、酒場で朝食を食べているとフェルーシャがやってきた。格好はシンプルで、ワンピースとロングのスカートに革のサンダル。非常に地味だが、容姿が地味ではないので隠せていない。


 本人は気にせずミクと相席になると話し掛けてきた。何やら聞きたい事があるらしい。



 「私の知り合いから聞いたんだけど、森にとてつもない強さのフォレストベアが出るそうよ。つがいらしいんだけど、知ってる?」


 「あー……聞いたような、聞かなかったような。で、それがどうかしたの?」


 「何でも野放しは危険だって事で、今日から森狩りが行われるんですって。多くの冒険者が参加するらしいけど、今まで噂も聞かなかったのに急にでしょ? 何処かから流れてきたんじゃないかって言われてるわ」


 「ふーん。でも私は興味無いしなぁ、参加はしないと思う。ダンジョンに行った方が実入りも良いだろうし、聞いた事もないのを探すのもね……いちいち面倒臭い」



 そんな話をしながら朝食を終え、二人は別れた。先ほどの会話でくだんのフォレストベアがミクとヴァルだと分かったフェルーシャは、森の主の情報を警戒から外す。というより、警戒しても意味が無い。


 こちらに無意味に手は出して来ないし、殺すなら有無を言わせずに殺される。そんな相手を警戒するだけ無駄だ。それに<人形>が無意味に踊らされるだろうが、滑稽な”人形”になればいい。フェルーシャはその程度にしか思っていない。


 フェルーシャは<人形>の事を、独り言が多いアレな奴としか思っておらず、彼が無意味に踊ろうが興味も無いのだ。何故なら奴は死体愛好家であり、生身の女性には欲情しない。そんな奴をサキュバスが助けるなど、あり得ない事である。


 神聖国系の裏組織も、買収されていた連中もいなくなってスッキリした王都を、ヴァルと一緒にブラブラしているミク。すると気になった建物があったので入ってみる。


 何故か朝早いにも関わらず人が多いその建物は、どうやら賭博場だったらしく色々な賭け事をしているらしい。そんな中をウロウロしていると、ミクは声を掛けられる。どうやらカードゲームのディーラーらしく、勝負を持ちかけられた。


 1から9までの数字が書いてあるカードがあり、合計した数字が大きい方が勝ちらしい。しかし最高は17だ。それ以上の強さのカードがあり、それがゾロ目なんだそうだ。つまり9を二枚持つのが一番強い手となる。


 このゲーム自体は何処の国でも行われているシンプルなカードゲームで、ミクはその男の前に座りゲームを開始した。ちなみにゲーム代は一回銀貨1枚だ。ミクは一枚出して始める。


 最初は1と4で負け。次は2と8で負け。その次は2のゾロ目で勝ち。そうやってゲームを楽しんでいると、段々とプレイヤーが増えてきた。最初はミクとディーラーだけだったが、今やミク以外に8人も居る。


 そしてこのゲーム、客側が14以下かディーラーが勝つと賭け金が積み上がっていくシステムだ。店側が賭け金を手に入れられるのはゾロ目が出た場合のみ。そして大分積み上がってしまった十二回戦。ディーラーがイカサマをする。


 持っているカード束の下二枚を自分の手札にしたのだ。そしてミクの右側に居る者達にカードを配る瞬間、ミクは視認出来ない程の速さで自分のカードとディーラーのカードを交換した。カード自体は前回のゲームの勝者から配られる。つまり今回はディーラーからである。


 実はチョコチョコとディーラーがイカサマをしているのは知っていたのだが、ミクはそれまで指摘する事も何もしなかった。最後で逆転してやればいいとしか思っていなかったからだ。そして今、イカサマをすり替えて逆転し賭け金を総取りした。


 出たカードは9のゾロ目。どう考えても最高の手であるが、イカサマとしてはちょっとやり過ぎな気もする。ディーラーは唖然としているが、周りはお祭り騒ぎだ。そんな中、全ての賭け金をアイテムバッグに入れて立ち去るミク。ボロ勝ちであった。


 そろそろ昼になるような時間。屋台が出ている区画があったので、そこで立ち食いをしていくミク。賭場で勝ったお金で買い、狐姿のヴァルにも食べさせていく。そんな周りから怪しまれない行動をしていると、後ろから尾けてくる者を感知した。


 人が多くて分かり難かったが、明らかにミクをターゲットにしている。



 『おそらく先ほどの賭場に関わりのある連中だろう。ディーラーのイカサマを逆に利用したからな、連中としたら舐められたとでも思ったんじゃないか?』


 『馬鹿だねぇ……。まあ、いいか。適当に薄暗い路地に入ってやろう。それがお望みのようだしね』



 そう【念話】をしつつ、薄暗い路地へと入っていく二人。慌てて追いかけてくる後ろの六人。その連中は都合が良いとでも思ったのか、後ろから走るようにして襲ってきた。当然ミクは振り返りつつ前蹴りで蹴り飛ばす。どちらかと言うとケンカキックだろうか?。



 「随分と頭の悪い連中だね。わざわざこんな所に入る馬鹿はいないよ。誘われた事も分からないのか、それとも六人居るから勝てるとでも思ったのか……」


 「ははははは……バカが! ここはウチのシマの一つなんだよ! お前等出てこい、この女はウチの賭場でイカサマをしやがった。ボコったら潰れるまでマワすぞ!」


 「「「「「「「「「「げへへへ……」」」」」」」」」」



 周りからジャンキーのような連中が大量に現れる。どうやら男が言った事は間違いなく事実のようだ。とはいえ、ザコが幾らいようが肉塊アンノウンには勝てないのだが……。


 尾行していた奴等がナイフ片手に襲ってくるが、それを避けつつ殴り蹴っていく。その一撃で骨を砕かれ絶叫するバカども。あまりにも弱過ぎて、かなり手加減をしなければいけない程だった。



 「クソ! このアマぁ、フザけやがって!! おい、テメェら!! 用心棒の旦那を呼んでこい!」


 「分かりやした!!」



 どうやら誰か来るらしい。適当に殴りながら待っていると、ガントレットとグリーブしか着けていない男が現れた。後は麻の服と麻のズボンに革のブーツ、それとアイテムバッグだけだ。ミクの服装と然程変わらない。



 「何だ、女か。詰まらん。オレは強い奴と戦いたいと言った筈だ、キサマらはオレを舐めてるのか?」


 「ち、違いますって<闘鬼>の旦那。あの女は怖ろしく強いんですよ! 旦那じゃねえと勝てねえぐらいなんで!!」


 「へえ、<闘鬼>って貴方の事かー。カレンから聞いたよ、ガントレットとグリーブだけで戦う頭のおかしいのが居るって」


 「……ほう。気が変わった。この女はオレが相手をしよう。あの吸血鬼の知り合いならば少しは楽しめそうだ」



 どうやら<闘鬼>と呼ばれる人物は商国に居たらしい。果たして彼はミクの相手が出来る人物なのだろうか?。


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