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0088・商国のダンジョン




 昼食を食べ終わったミクは、王都ヨースの近くにあるダンジョンに向かい中へと転移する。1層目は平原で、特に大した魔物もいない場所だった。地図に従いさっさと進み、5層のボスはメイスで頭をカチ割る。


 ゴブリンとハイゴブリンなど所詮はその程度だ。一応ハイゴブリンだけ回収し、6層からの草原地帯を進む。ここも出てくるのはゴブリンやコボルトに、ハードボーアやビッグディアーぐらいだ。


 だからなのか冒険者が多くいる。ここの鹿と猪は普通に食べられる肉だからだろう、狙っている者が多い。ここの冒険者が大量に狩っても値崩れは起こさないだろう。そこまで大量に居る訳でもない。


 ミクとヴァルはスルーして進み、10層のオーク十体へと挑む。結果としては、突っ込んで来るだけのオークの頭をカチ割って終了。11層へと進む。ここからは荒地になり、罠も増えてきた。


 踏むと大きな音が出る罠もあるらしく、それを踏んでしまった冒険者がダッシュブルに追い掛け回されている。流石に擦り付け行為は違法なので、人のいない方向に必死に逃げているが、どうやら脱出の魔法陣に向かっているようだ。


 そんな中を進んで行き、15層のボスへ。ハードスケイル五匹だが然して強くもなかった。コイツらの鱗は硬く切るのは難しいのだろうが、メイスで頭を潰せばあっさり終わる。拍子抜けしたうえ素材もいらないので捨てていく。


 16層からは石壁迷宮となっており、出てくるのはスケルトンやゾンビばかり。感知系のスキル五種を使っても他の冒険者は見当たらなかった。20層のワイバーンに到着するも、骨を発射して終了。デスホーネットの濃縮毒は本当に強い。


 21層は森だった。ここからは地図が無いので探りながら進む必要がある。とはいえバラバラの地点に飛ばされる為、今どこに居るのかすら分からずウロウロしていく。森の中を歩く事一時間ほど、魔物には会うが魔法陣が見つからない。


 木に登って周りを見渡してみたが、鬱蒼とした森が続いているだけだった。目印が無ければ魔法陣を探し出す事も出来ない。更には目印を置いてもダンジョンに異物として飲み込まれてしまうので、目印を作る事も難しい。


 木に傷を付けて目印にしてもいいのだが、それも修復されそうだし……。どうしたものかと考えていると、脱出の魔法陣を発見。近くの木に登って周りを確認すると、どうもこの層の端である事が分かった。


 おそらくは層の端に脱出の魔法陣、層の中央に転移の魔法陣があるのだろう。そう当たりをつけてミクは脱出する。午後からだったので、おそらく今は夕方だろうと思いながら。


 外に出ると既に夕暮れだったので慌てて王都へと戻り、急いで酒場へと行く。山髭族ドワーフの騒ぐ声が前から聞こえるも、無視して注文したら待つ。運ばれてきた夕食を食べ終わると、すぐに宿へと戻り部屋に入った。


 ギリギリで間に合ったが、また宿の外で寝る羽目になるところだったミク。ヴァルを女性形態にしベッドに寝かせると、ミクは神聖国関係の奴等を潰す為に出かける準備をする。


 着ている服をヴァルに渡し肉体を変化させる直前、部屋の扉をノックする音が聞こえた。仕方なく誰何すいかするとフェルーシャのようだ。部屋に入る許可を出すと、扉を開けて入ってきたフェルーシャは固まった。


 ミクが扉を閉めるように言うと再起動し、閉めてから話す。



 「扉を開けたらミクが二人居るんだから、ビックリするのは当たり前よ。とにかく昨夜はありがとう。御蔭で娼婦が殺されなかったし、犯人がクソどもだと分かった。今はクズどもの捜索と殲滅をやらせてるから、すぐに結果は出るでしょうね」


 「あー……そうだったんだ。これから神聖国系の組織のアジトに行って、片っ端から喰らっていこうと思ってたけど止めるかな。それでヴァルに留守番を頼んだんだよ」


 「成る程。それでミクが二人……というか女性の姿で居た訳ね。まあ、こっちも神命を受けているから、ああいうゴミどもは掃除しておかなきゃならないのよ。偶にはゆっくり寝たら?」


 「私そもそも眠る必要無いんだけど?」


 「ああ、そうだったわね。それじゃあ暇潰しでもしてたら? こっちもちゃんとやってますよ、という成果は神に見せておかないといけないしね。じゃあ、そういう事だから」



 言いたい事だけを言ってフェルーシャは部屋を出て行った。「どうするんだ?」という顔でヴァルが見てくるが、ミクは当然外へ出る。フェルーシャ達<淫蕩の宴>が動いているにしても、全てを潰せているとは思わない。


 ミクは森の中で神聖国の奴等から情報収集をしている。昨日の<清浄なる祈り>とは別の拠点も知っているのだ。そっちの奴等に逃げられては元も子もない。という事で百足姿になったミクは出発する。


 まずは昨日聞いたアジトへ行くのだが、そこでは既に争いが起こっているので撤退。あそこは<淫蕩の宴>に任せるとして、ミクは豪商など金持ちが暮らす区画へと行く。


 その区画にある中規模の屋敷の敷地へと入っていき、裏の勝手口へと進む。入る事の出来る隙間は無かったが、近くの窓から侵入出来そうだ。外から触手を使って窓を開け、中へと入って閉める。小さな百足の事など誰も気付かない。


 侵入した部屋はメイドの部屋らしく、三つベッドがあり一人が寝ている。後の二つのベッドは空で居ないようだ。ミクは気にせずドアへと行き、下の隙間から部屋の外へ。屋敷の中を感知系スキルで調べると、地下に固まった反応がある。


 そこへ行きたいのだが、何処から入るか分からない。ミクがウロウロしつつ困っていると、上へと上がってくる反応があった。それは二階へと上がり、そこから一階へと下りてくる。


 エントランスの左右に二階へ上がる階段が付いている。そういう洋風の屋敷を想像すると分かりやすいだろう。その左側の部屋から出てきた。それが分かったのでミクは移動し部屋へと入っていく。


 地下から上がってきた男は飲み物を取りに上がってきたらしく、距離が遠いとボヤいていた。ミクが入った部屋は壁がスライドして開いており、地下に向かっている階段が丸見えである。


 上がってきた男が面倒臭がったのであろうが、こういう些細な事からバレるという見本だろう。ミクはラッキーだと言わんばかりに地下に降りていく。もちろん気付かれないように天井を走りながらだ。


 地下に下りてきたミクは三つの部屋の前に居る。階段を下りた先の通路は一つで、突き当りの部屋と左右の部屋しか無かった。そして三つの部屋のドア全てに隙間がある。脛の高さの部分に格子があり、そこから中の声を窺う。


 左右の部屋では、おそらく一階のメイド部屋の二人だと思われる女達が、神を讃えながら犯され嬌声を上げていた。どうやら<幸福薬>を使われているらしい。黄色い薬を犯されながら飲み、そして陶酔していく二人の女。


 もう治療も無理なほど狂っていると思われる。もしかしたら<幸福薬>の用途は元々こうだったのかもしれない。そんな事を考えながら、ミクは突き当たりの部屋を窺う。そこでは話し合いが行われていた。



 「<幸福薬>を使っているバカどもはどうでもいいが、<清浄なる祈り>の所へ<淫蕩の宴>が攻め込んだぞ。まだこちらには勘付いていないが、知れば必ず攻めてくるだろう。どうする?」


 「どうするも何も、<幸福薬>を使ったバカどもを囮にして逃げる以外にあるか? 他にもっと良い方法があるならば教えて貰いたいところだな」


 「そのような言い方はよせ。本国のバカどもが何も考えずに連中を送り込んできたのが原因だ。我々の所為ではない。せっかく地下に潜って機会を窺ってきたというのに……」


 「ビルスにも逃げられたうえ、<淫蕩の宴>には我が国の者がやったとバレてしまった。王都を虱潰しらみつぶしにされると、我々には逃げ場が無い」



 どうやら<幸福薬>を使っていない連中にも、狂っている奴と、まともな奴がいるらしい。とはいえ、欲の限りを尽くすクズである事に変わりはないのだが……。


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