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0087・捕らえた者達への尋問




 倒れ伏している三人を縄で縛り、警備の者達が連れて行く。一人はアキレス腱をねじ切られているからか片足で無理矢理歩かされている。警備の者がミクの下に来て話し、ミクは再び玄関付近で怪しい者の見張りを行う。


 ミクが警備の者に言ったのは殺さないようにという事だけだ。死んでさえいなければ脳を操って喋らせる事が出来る。ミクにとってはどっちでもいいが、フェルーシャが困るだろうと思い言っておいた。


 そのまま深夜まで営業していたが怪しい奴等の襲撃は無し。ミクは牢に入れられている者達の所へと案内してもらう。男達はミクを見た途端に怒り狂うが、そんな事はミクにとってどうでもいい事だ。


 牢の鍵を渡してもらい、鍵を開けて中に入る。襲ってきた全裸の男を殴り飛ばして引きずり出し連れていく。牢の入り口近くにある机のある場所まで連れてくると、頭の上に手を置いて脳を操り強制的に喋らせ始めた。



 「お前は何処の誰だ。何故この娼館に侵入してきた? ここを<淫蕩の宴>の息が掛かった娼館だと知っての事か?」


 「当然知っている。我等は<清浄なる祈り>のメンバーだ。汚らしい娼婦や男娼どもなど、この世から消さねばならん。必ずや全て根絶やしにするのだ!」


 「………その物言い、お前は神聖国の者だな? あそこのクズは己が正しいと思い込むか薬で仕込まれる。だから言う事がよく似るのだ。お前も<幸福薬>で狂わされたのか?」


 「フンッ! 我等をあの様な紛い物と一緒にしてもらっては困る。我等こそ清浄なる世界を作り上げられる者なのだ! 選ばれし者と紛い物を一緒にするな!」


 「その選ばれし者とやらがやっている事は唯の殺人だがな。俺からすれば、<幸福薬>を使われて洗脳された奴の方がまともだ。薬すら使われんという事は、完全にトチ狂っているという事だからな」


 「キサマ! 必ずや我等の仲間がキサマを殺す! 覚えているがいい。キサマに安住の地などないぞ。キサマも清浄なる世界には不要なのだ!!」



 これ以上は何を聞いても意味などない。そう判断したミクは喚くバカを蹴り飛ばした後、引き摺って牢に戻す。他の連中からも話を聞くが、幾ら脳を操っても狂っているとどうにもならないようだ。


 それでも何処を狙うつもりだったかとか、何を目的にしていたかは知る事が出来る。その情報だけでも得られただけマシであろう。


 軽薄そうな男は狂ってなかったのか命乞いをしてきたので、脳を操り話をさせた。結果として分かったのは、<清浄なる祈り>という組織は単なる突撃部隊だったという事だ。


 頭のおかしい狂人か、薬で狂わされた奴を向かわせて殲滅。殺されたところで狂っている奴なので問題無し。神聖国では神の御許に行ったとか言われるらしい。ここまでの事をやっているから、神が鉄槌を下せと言ったんだろう。


 宗教や信仰を利用して好き勝手を行う。何処でも行われてしまう事ではあるのだが、本当に碌なものではない。それでも内情を暴いて情報を共有すれば、他の組織も優先して潰していくだろう。こいつらは狂っているので分かりやすいし。


 情報を紙に書いてまとめ終わったようなので、そろそろミクは宿に戻る事にした。店を出る際に挨拶して宿への道を歩いていると、後ろから複数人が尾けてくる。ゆっくりと歩きつつ、素早く路地に入り走った。


 後ろの者も慌てて走るが夜目が効かないのだろう、ミクの様には走れない。そのままスラムへと行き、途中で誰もいない廃屋に入り百足姿に変わる。外へ出ると、追いかけてきた奴は途中で止まっていた。



 「おかしい。奴の気配がそこの廃屋で消えた。いったいどういう事だ? 気配を消す魔道具でも持っていたのかもしれん」


 「あの男の所為で我等の崇高な目的が邪魔されたのだぞ。探せ、まだ近くに居るかもしれん。探し出して殺すのだ。そうせねば、必ずや清浄なる世界の邪魔になる」



 どうやら<清浄なる祈り>の残党らしい。商国にいる奴等が組織の全てではないようだが、それでもここ王都の連中は始末しておくべきか。そう思ったミクは百足の姿のまま、連中に極細の骨を射出する。


 骨にはデスホーネットの濃縮毒が塗ってあり、刺さった連中は倒れた後ドス黒く変色して死んでいく。近くにスラムの住民がおり、コイツらを狙っていたのでミクは食べる事を諦めたのだ。流石に目撃者を出す訳にはいかない。


 少なくとも星に降り立ってすぐの時よりは、常識を学んでいるミクだった。


 宿の部屋に戻ったミクは女性の姿になり、ヴァルと交代してベッドに寝る。ヴァルが寝ている間は何も無かったらしく暇だったそうだ。とはいえ宿の部屋に誰も居ないのは不審なので、留守番をしてもらうしかない訳だが。


 ヴァルも分かっているが、少々愚痴っただけらしい。そんな話をした後に分体を停止したミクとヴァルは、最低限だけを残して本体へと戻った。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 次の日。朝起きて宿の玄関に行き、いつも通りに部屋を延長する。その後は正面の酒場へ。朝は山髭族ドワーフも居ないし食事のしやすい店である。朝食の注文をして待っていると、またもや恋人の二人がやってきた。


 今日は黒耳族ダークエルフの男性も元気そうだ。白耳族エルフの女性が若干不満気にしているところを見るに、女性側としては足りなかったのだろう。周囲もスルーしているので、ミクもスルーした。


 今日は怪しまれないように適当な狩りをする。ランクは10なので適当に暮らしていても、そこまで怪しまれないとは思う。思うものの、面倒な事はお断りなのと暇なのもあってミクは狩りに出るようだ。


 適当にウロウロしながらアースモールを狩っていく。コイツは割と何処の国にも居るらしく繁殖力が高い。それ故に何処の国でも駆逐できないらしい。だからこそ何処のギルドでも張り出してあるそうだ。


 そんな事を偶々出会った冒険者のパーティーが教えてくれた。そんな交流もしつつ適当にアースモールを狩っていると、近くで<人形>がウロウロしているのが見える。ミクは軽く会釈だけしてスルーしていく。


 向こうも声を掛けてこなかったので安堵したヴァル。ミクならばボロを出しかねないと思ったのだろう。可能性は高そうだ。


 そんな危険もありつつ昼前には戻り、アースモールは全て解体所に出していく。相変わらず儲けは少ないが、感謝されるので気分は悪くない。それを終わらせて受付で手続きを済ませたら、ギルドでダンジョンの地図を買う。


 その後は酒場へ行き昼食を注文したら、待っている間に地図を読み込むミク。どうやら商国のダンジョンは5層毎にボスが出るらしい。ボスの頻度が高く21層までしか攻略されていない。


 最初がゴブリンとハイゴブリンで、これは王国の最初と同じだ。次がオーク十体と書いてあるが、この時点で相当厳しい。一斉に向かってこられると、並の冒険者じゃ犯されるか殺されるしかない。


 その次がハードスケイル五匹だ。ハードスケイルとはかなり大きなトカゲなのだが、名前の通り鱗が硬い。そのうえ肉食で人間種も簡単に食べる。体高は1メートルちょっと、体の長さは3メートル程で尻尾が短い。


 既に普通の人間種じゃ難しいが、20層はワイバーン三頭だそうだ。<人形>や<怪力>なども協力して何とか突破したのが最後らしく、それ以降はダンジョンの記録は止まったままとなっている。


 その辺りの話は受付嬢から聞いたので、それを思い出しつつ昼食を食べ、午後からはダンジョンに行く事を決めたようだ。


 適当な魔物を持って帰ってきて売ればいいだろうと思っているようだが、自身が”ソロ”であるという事は忘れないでほしい。


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