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0084・<人形>との出会いと森の出来事




 酒場に入り食事をしているミクの耳に色々聞こえてくる。もちろん周囲の人達の話な訳だが、その中で聞きたいものをピックアップしていくミク。いつもの事だが、怪物の素の能力が既に反則級である。


 一つ気になった話があったので、それを集中して聞く事にしたようだ。



 「冒険者の<怪力>が昨日の夜いきなり消えちまったんだと。ただ、一緒に居た筈の黒ずくめの護衛も消えちまってたらしい。もしかしたら、そいつが殺して逃亡したのかもって言われてるな」


 「俺が聞いた話だと、娼婦とヤってるのを邪魔したそいつを<怪力>が殺しちまって、慌てて逃げたって聞いたぜ? <怪力>の暗殺はそいつが防いでいたらしいしな。何しろ<怪力>って奴は相当のバカなんだそうだ」


 「よく聞くな、それ。でもオレは変な奴等を見たぜ? その黒ずくめの奴をやたらに探している奴等が居るんだよ。妙に聞き込みをしてやがってさ、そのうえ<怪力>の事は全く聞かねえんだ。怪しいだろ?」


 「そいつらが<怪力>を殺して、逃げた黒ずくめを追ってる! って感じか。有りっちゃあ、有りだと思うけど弱いな。もう少しこう、インパクトのある部分は無えのかよ」


 「創り話じゃねえっての!」


 「「「はははは……」」」



 『黒ずくめの奴を追ってる……ねえ。どう考えても神聖国の連中だと思うけど、あいつら商国にも拠点を持ってるのかな? 羽虫みたいに湧く鬱陶しい奴等だよ、まったく』


 『とはいえ面倒とも言っていられないんじゃないか? ある程度ここの神聖国の連中も叩いておかないと、妙な暗躍をされても困るしな。何と言っても奴等は<幸福薬>を使う』


 『それがねえ……面倒なんだよ。あの薬自体は私に全く効かないし無意味なんだけど、私以外に投与されて万能薬で治るか分からない。いや、暗示の事を考えたらどうにもならない』


 『本物の神を説いて逆に暗示を掛けるか? それとも脳をいじくって洗脳してしまうか? どのみち神聖国の連中だ、同情する意味も無い』


 『そんな無駄な事はしないけど、暗示や洗脳の中身をどうするか考えないといけないね。今日は適当に周辺で狩りでもしながら、暗示や洗脳の内容を考えようか』


 『狩りの片手間で考える事じゃないがな』



 そんな【念話】をしながらミクとヴァルは冒険者ギルドへと向かう。扉を開けて中に入ると一斉に見られるが二人は気にせず掲示板に行き、周辺に出てくる魔物のリストを確認する。


 王国とあまり変わらないものの、一部の森に花の魔物が出現するらしい。また、それに喰われる虫の魔物も。ロキド山で虫の魔物を多く喰らっているミクにとっては、そこまで興味の出る魔物ではなかった。


 適当な魔物を狩るかと思いギルドを出ようとすると、外から大柄なプレートアーマーを着た人物と、小さいローブを着た人物が入ってきた。


 物凄く凹凸なコンビだと思っていると、大柄な方からは微かに腐臭がした。ミクは一瞬反応するも、無視して出て行く。


 ヴァルも分かっていたが、明らかに死体の臭いであった。かなり綺麗にされていたので僅かではあったが、ミクとヴァルの鼻は誤魔化せない。冒険者ギルドの扉を閉める直前、<人形>という声が聞こえた二人。


 外へと歩きながら【念話】で先ほどの人物の事を話す。



 『口元を隠すように布を巻いていたから分からないけど、思っているより小柄な人物だった。それとも横の死体が大きかった所為で錯覚してる?』


 『多少あったとしても小さい事に変わりはないな。何がしかの理由があって小さいのか、それともそういう種族なのか。その辺りは何ともな。フードを被ってローブで隠してるんじゃ分からない』


 『性別はたぶん男だと思う。精の匂いがしたからね。とはいえ、それだけじゃ確定じゃないし難しいところ。あそこまで怪しい姿で周りが納得している事は不思議だけど……』


 『あの姿がずっと当たり前だったのなら、周りも気にしなくなるとは思うが……それだけ長くあんな姿をしていると、誰かに暴かれそうだけどな? その割にはフェルーシャから特に聞いていない』


 『そうだね。フェルーシャは冒険者の事を詳しく探ってないみたいだから仕方がないんだけど、もうちょっと情報が欲しかったかな? とはいえ、自分で調べないと正しいところは出てこないし、機会があれば調べよう』


 『ああ、それでいいと思う。<怪力>はともかく、<人形>は悪い噂を聞かないからな。まともな奴を殺して喰うと神に何をされるか分からん。そこは注意しないと』


 『分かってる。今も本体空間に神が居るしね。目を付けられるのはゴメンだよ』



 そんな話をしながら外で適当に狩りをする二人。ヴァルに乗って【気配察知】を使い、一気に近付いては矛を突き刺す。まるで馬に乗って暴れる武将の如く魔物を倒していくミク。


 戦いは楽に終わるのだが、その後の処理に結局降りる事になる。移動が速いので急かされている気分になり、どんどんやる気が減っていくのだった。


 休憩しつつ高値で売れる魔物ばかり選んでいると、ある集団の気配を見つけた。まだ遠いものの浅い森に居たミクは、木の上に登って確認する。


 人間種の目ではない為に視認できたが、普通は鷹でもないと無理な距離だ。そんな距離に居る集団は、何やら話し合いをしているらしい。


 気になったミクは蝶に姿を変えて近付いていく。ある程度の距離まで近付くとヒソヒソ声が聞こえてきた。魔物に気が付かれないように声を潜めているのか、それとも大きな声では話せない内容なのか。



 「これからどうする? <怪力>の奴が死んじまうなんて思ってもみなかったぜ。あの旦那も暗殺を防いでいたんじゃなかったのかよ。両方居なくなってるなんて殺されたしか考えられねえ」


 「それは間違いないだろうな。それよりどうする? 俺達は<怪力>に従って好き勝手やってきた。完全に顔を覚えられてる。何とか殺される前に逃げてきたが、何処に行く? 王都周辺じゃ無理だぞ」


 「それどころか、オレ達は賞金首にされてるかもしれねえ。そしたら町じゃねえ、何処の国に行っても殺されっちまうぞ! 何でこんな事になったんだ!」



 自業自得である。粗暴で力の強い奴の名を利用して好き勝手にやっていたのだ。それが自分たちに跳ね返ってきたに過ぎない。そもそも、それだけの怨みと憎しみを振り撒いていたという自覚すらないクズどもという話だ。


 だからこそ容赦無くミクも喰える。喰ったところで文句を言われる事も無い。一応確認の為に麻痺させてから脳を支配するのだが、その前に感知系五種のスキルを使用した。すると少し離れた所に五つの反応がある。


 慌ててそちらに移動するミク。どうやら【気配察知】を妨害する魔道具を持っているらしい。最近こういう事が多いので困りながらも、その五人の頭上の木の枝にとまる。すると囁き声ほど小さい声が聞こえてきた。



 「アレが<怪力>の子分だった者達だ。あいつらならビルスの行方をしっている可能性がある。<怪力>の所為でビルスを殺せなかったが、まさか消えるとは……。死んだと確認できない以上は生きていると仮定して探す」


 「「「「………」」」」



 無言で頷く残りの四人。そんな連中の上で麻痺毒の鱗粉を撒いていくミク。すぐに麻痺して身動きがとれなくなったようだ。ミクは蝶の姿のまま麻痺した者の頭の上に乗り、触手を突き刺して脳を支配する。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 情報収集の結果、コイツらは王都ヨースにある神聖国系の裏組織の連中だった。都合よく情報も手に入り、死体は本体に転送したので喜ぶミク。しかしながら時間がかかった所為か、<怪力>の子分達には逃げられてしまった。


 まあ、どちらを優先するべきかと言えば、神聖国系なのは確実なので仕方ない。そう思い、諦めたタイミングで悲鳴が聞こえてきた。先ほどの奴等がフォレストベアに襲われたようだ。


 すぐさまフォレストベアの姿に変わり、悲鳴の下へと急ぐミク。情報は得られずとも肉は喰いたいようだ。


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