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0082・王都ヨース到着




 次の日、起動してダラダラしていた二人の下に五人がやってきた。馬車に乗り込んだ四人の男は何故か元気で、代わりにフェルーシャは溜息を吐いている。不思議に思ったミクは聞いてみた。



 「いや、昨日も襲ったんだよ。でも凄い経験をした所為かイマイチ身が入らなくてね、すぐに止めて寝たんだ。ミクとの経験が強烈過ぎた事もあるんだけど、力も増えないし無理にしなくてもいいかと思ってさ」


 「「「「ありがとうございます!!」」」」



 男達が本当に救われたと言わんばかりに頭を下げる。その事に思うところが無い訳ではないが、負担を掛けていたのは事実なのでスルーしたフェルーシャ。スルーしたが思うところが無い訳ではない。


 少し男達を睨みながら、別の話を始めた。



 「そういえばミクは<怪力>の居場所を聞いてきたけど、あの男を殺して喰らう気かい? まあ、私も神から命を受けたから何をするかは分かっているけど、あの男の近くには厄介な男が居るんだよ」


 「その男は黒ずくめの男で顔は分かっていません。姐さんみたいに悪魔じゃないのは分かってますが、人間種かと言うと……。俺達も確証は無いんで何とも。ですが、コイツが<怪力>の寝てる所を警戒してるんです」


 「隠密系だけなのか、それとも感知系のスキルも優秀なのかは分かりませんが、コイツの所為で暗殺に失敗して殺された者は100を越えると言われています。流石に負けるとは思えませんが、面倒な事になりますよ?」


 「大丈夫。そもそも私のこの体は唯の擬態だから、自分の好きに変えられるんだよ。侵入する時は百足になっているし、そこから触手を出したり麻痺毒を散布したりしてるから、感知系じゃ見つからない。今までも見つかった事ないし」


 「「「「「………」」」」」



 ミクの言葉を聞いて唖然とする五人。相変わらずだが、小さな虫が実は怪物だったというのは怖ろしすぎる現実だ。そしてそれなら何の問題も無いと納得する一同。小さな虫などは感知出来ない事を、ここに居る全員は知っている。


 その後も様々な話をしつつ馬車の旅は続いていく。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ロキド山の向こうにローミャの町。そこから東にネウン村、ロット村、アズン町。そして北にセチ村、ウリュ村、アリドア町。そこから西にジュイル町、その西に王都ヨース。


 あれから七日、ようやく王都ヨースへと到着した。ここに<怪力>も<人形>も居るらしい。それと、基本的に各国の首都近くにはダンジョンがあるとの事。これはダンジョンの資源を得て発展してきたからであり、必然でもある。


 今よりも古い時代。食料の確保も儘ならない時代から、人間種はダンジョンに潜って糧を得てきた。手に入る物は大体決まっているが、ずっと同じでもない。それらを得て糧とし、足りない物を外で手に入れる。そうやって生きてきたのだ。


 今でもその名残と言えるし、やはりダンジョンというのは実入りとしても大きい。金の成る木とすら言えるのがダンジョンだ。王が持たずに誰かに与える事など無い。王の力の一つでもあるからだ。


 それゆえに小国でさえもダンジョンを持つ。この星はダンジョン一つに対し、国が一つあると考えてもいい。国土の広い国には二つあったりもするが、大抵は国につき一つだ。王国もそうだった。


 それはさておき、王都に着いたミクは馬車から降りて背伸びをする。人間種の真似だが、何となく解放感を感じた。それが終わると前に歩いて行き、王都前の列に並ぶ。


 フェルーシャ達は特殊な立場とはいえ騎士待遇だ。一緒に居ると目立ってしまう。その事で五人と色々相談し、言い訳自体は既に考えてあった。


 ミクは乗せてもらった代わりに馬車の夜番をしていた事になっており、実際に各村や町では宿に泊まっていない。【清潔】の魔法などを使い、汚れを落としていたと言えば疑われる事もないだろう。


 実際、そういう冒険者は多いし、そうやって乗せてもらいながら移動する冒険者も居る。フェルーシャ達としたら、普通の騎士を装う言い訳用にミクを乗せたと言えば済んでしまう。その程度の事なのだ。


 ちなみにフェルーシャは商国の建国に関わっているらしく、身分を隠す為とはいえ、騎士待遇はあり得ないと言ってもいい地位らしい。それ故、<淫蕩の宴>に対して国も貴族も手を出さないそうである。


 建国の立役者の一人であり、そのうえ悪魔ではどうにもならないだろう。強欲な貴族どもが黙る筈だ。そして奴隷落ちした者を買って、娼館を経営しているのがフェルーシャ達<淫蕩の宴>となる。


 それまでは様々な娼館を転々としながら、人間種のフリをして力を得てきたそうだ。その時にカレンに会って心の歪みを見つけたフェルーシャは、巧みに近付いたが返り討ち。ターゲットにしたという流れだった。


 そんな事を回想していると順番が来たミクは登録証を出し、王都の中へ入って行く。流石にランク10の冒険者に文句を付けるのは難しいのだろう。ミクを邪な目で見ていた門番もケチをつけてくる事は無かった。



 『商売を奨励している割には、町並みは至って普通だね? 特に商売! って感じはしないけど』


 『どんな感じを想像しているのか知らないが、商売をしている地区とかがあるんじゃないか? 市場が大きいとか、色々な物を扱っているとかな。歴史の無い国は金なり物なり、強みが必要なんだと思う』


 『成る程ねー。まあ、少しの間ここを拠点にするんだし、そのうち分かるでしょ。まずは宿に行って部屋をとろう』



 周りの人に話しかけ、宿の場所を聞いて移動。それなりの値段の、中堅ぐらいの宿に入り女将に部屋が空いてるかを聞く。空いていたので一室とり、ミクはその後に酒場に移動する。


 実は宿の女将の旦那が経営している酒場が真正面にあるのだ。そこが一番近いので、宿に泊まる客は大抵そこで済ませるらしい。既に夕日も出ているので急ぎ、酒場に入ると空いていた席に座って注文する。


 ヴァルの分も注文して待ち、出てきた食事と酒を楽しむ。酒場で酒を頼まないのは流石に怪しまれるので注文したが、何が美味しいのかよく分からないミクは食事をメインにする。


 そうしていると相席を頼まれたので適当に了承。目の前に来たのは山髭族(ドワーフの三人だったが、仕事終わりなのか早速エールを頼んでいた。食事は適当にパンとソーセージと申し訳程度のサラダ。


 間違いなく食事に来たのではない。彼らは酒を飲みにきている。サラダも健康を損なうと酒が飲めないからだと言わんばかりだ。運ばれてきたエールを【水魔法】で冷やしたら、乾杯して一気に飲んでいく。


 ゴクッゴクッゴクッ……プハーッ。まるでお約束のような酒の飲み方をしつつ、周りなど気にしないデカい声で話す山髭族(ドワーフ。店員が申し訳無さそうに相席を頼んでくる筈である。五月蝿すぎだ。



 「それにしても、ええ素材が入ってこんのう!! ワシらが鍛えに鍛えてやるっちゅうのに、碌なもんが入ってこん。せめてドラゴンの牙ぐらいこんのか!」


 「無茶言うな! あんなもん王国でも簡単には転がっとらんぞ。少し前にドラゴンを再び討伐したっちゅう話は聞いたが、こっちに来る訳なかろう。王国の同胞が使って終わりよ!」


 「勿体ねえ! ワシらならええ鉄に混ぜて竜鉄を作ってやるっちゅうのに! 王国の奴等じゃ配合比率を知らんじゃろう。ああ、勿体ない!」



 竜鉄という言葉に反応するミク。どうやら鉄を溶かす際に、ドラゴンの牙を含めドラゴン素材を色々添加するらしい。酔った勢いで喋ってくれるのは助かるが、まさか竜の目玉を使うのが肝だとは……思わす驚いたミク。


 今まで使えなかった素材が使えると分かりテンションが上がったが、何故か本体のところに鍛冶の神が来て配合を教えてくれた。


 ……楽になったのは良いが、釈然としないミク。ドラゴンバスターの時に呼ばれなかったのが原因かな? と思うのだった。


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