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0081・商国と魔界の話




 御仕置き後の次の日、ミクとヴァルは肉体を起動させて宿の前に降りる。近くに人は居ないので見られてはいないだろうが、見られていても気にしない二人。単に宿の屋根の上で寝ていただけなので、気にする理由も無い。


 言葉は悪いが、極稀に何処かの建物の庭などで勝手に寝ている者は居る。なので見られても特に困る事は無いのだ。金を持たない貧乏人の様に見られる事を除けば……。


 ミクは適当に食堂に行き朝食を注文して食事をする。周りから見られているが、それは今さらなので無視しながら食べていると、近くにフェルーシャと男性四人が座った。周囲に緊張が走ったが、騎士姿だからだろうか?。



 「そちらは旅をしているようだけど、次は何処に行くの? 東? それとも西?」


 「さてね。地理には詳しくないからフラフラしてるけど、人の多い所にたまには行こうかな。どっちか知らないけど」


 「王都に行くには東に行きなさい、西だと遠回りになる。旅をするにしても無駄な距離を進んでもしょうがないでしょうしね。西にあるのは有名なワインの一大生産地くらいだから」


 「そうなんだ。じゃあ東に行ってみるかな?」



 そう言って会話を終わらせた。周りの連中はホッとした顔をしたが、やはり何かしらの難癖を付ける騎士が多いのだろうか? そんな事も後で纏めて聞けばいいかと思うミクだった。


 食事後、町の門まで歩いて行き、門番に登録証を見せて通る。登録証自体は朝の内に肉から出して用意していた。なので問題なく通る事が出来る。そもそも見られなければ何時でも出せる物でしかない。


 町から出て東へと行くのだが、今はゆっくりと歩いている。先ほどのフェルーシャとの会話は、東へ行けという会話だったので何かあるのだろう。そう思って歩いていると後ろから来た馬車が声を掛けてきた。


 フェルーシャが乗れと言うので飛び乗るミクとヴァル。後ろの幌は空けてあったものの、あっさりと飛び乗った二人に驚きながらも進む馬車。止まる事無く進む馬車に周りは驚いているが、それを無視して進んでいく。



 「乗ってくれって言ったのは私だけどさ、何の問題も無く飛び乗ったね。しかも馬車に殆ど衝撃を与える事も無く。あんまり人外な事をされても目立ってしょうがないんだけど?」


 「そんな事を言われてもさ、乗れと言われたから飛び乗っただけだよ。で、何の用なの?」


 「何の用ってアンタが……いや、ミクが<怪力>の居場所を教えろって言ったんだろ? だから一緒に連れて行こうって思っただけさ。流石に神から神命を受けた以上、おかしな真似は出来ないしね」


 『まあ、それそうだろうな。そもそも主はアンノウンだし、我等はサキュバスの天敵とも言える。どうにもなるまい』


 「「「「「!!!」」」」」


 「それ使い魔だったの!? 本当に最初から手加減されてたんだ……。流石に呆れるほど実力が違うけど仕方ないか。まあ、それはともかくとして、確かに天敵だね。私達サキュバスは相手の精だけじゃなく、性欲や快楽の気も貪る。でも……」


 「私達にはそれ、無いんだよねー。性欲ってよく分からないし、快感ていうのも感じないし。私達にしたら何が良いのかサッパリ。喜んでるし、それで上手くいくなら相手してもいいかなってくらい」


 「「「「………」」」」


 「ま、驚くだろうね。昨夜、完璧に敗北したけど何も得られなかったし、まさに天敵としか言い様が無い。だから絶対に敵に回さないよ。そもそもこっちで受肉している器が壊れかねないし」


 『成る程。こちらで用意された生贄で受肉し、<現界の壁>を越えられる程度しか持って来ていないのか。となると……こちらで力を増やしながら、本体にも送っているな?』


 「そうだけど、よく知ってるねえ。夢魔のフェルーシャと言えば、魔界ではそれなりに有名だからね。流石に女王には負けるけど、それでも高位夢魔なんだよ。まあ、最近は力の上昇が無くて本体も碌に強くなってないけどさ」


 「そうなの? 精を奪えばそれだけ強くなるんだと思ってたよ」


 「ないない。こっちは本体以上に強くなれないし、物質界と魔界じゃ違うからね。送れる力にも限度があるのか、それとも質が悪いのか……。だからこそカレンを狙ってたんだけど、上手くはいかないよ」


 「そういえば女冒険者を攫って売り飛ばしてたから喰ったけど、<淫蕩の宴>ってそんな事ばっかりしてるの? カレンがそんな事言ってたけど」


 「それは勘違いさ。私達は商国に所属してるから、それ以外の国から集める場合は破壊活動として黙認されてるだけだよ。そもそも商国じゃやってないしね。まあ、この国じゃ身売りする女は幾らでも居るからなんだけども」


 『どういう事だ? 女が身売りするのが当たり前という国は相当ヤバイと思うが……。商国という国が政治的におかしいとは聞かないがな』


 「ここは商売を奨励してる国だ。当然だけどもねえ、賭博も商売に含まれるんだよ。最後には自分の体を担保にして負ける女なんて幾らでも居るって事さ。まともな奴は奴隷落ちなんてしないよ」


 「本当に駄目な奴ってのは男女問わず居るんですよ。そういう奴を買って商売してるのが<淫蕩の宴>なんです。まあ、姐さんがついでに店に出たりしてるんですがね。俺達としても諦めるしかないんで」


 「姐さんが首魁なんで、命を狙われたら困るんですけど……サキュバスだからか、とにかく精を搾り取る事に関しては譲らないんですよ。それに、最初はノーマルクラス下位だったそうですし」


 『そりゃ厳しいな。本体が幾ら強くても、こっちじゃノーマルクラスの下位か。ノーマル下位なんてレッサークラスじゃなくて良かったなって程度でしかない。まともには戦えんぞ』


 「本当に最初は大変だったんだよ。喚び出した奴等に犯されるわ、奴隷の首輪を着けやがるわで滅茶苦茶だった。とはいえ最後には搾り尽くして殺してやったけどね。それが170年ほど前だったかな?」



 馬車は村に着いたようだ。フェルーシャ達は会話途中で保存食を食べていたが、ミクは食事の必要が無いので遠慮した。全員から羨ましそうな顔で見られたが、そんな顔をされても困るというのがミクの本音だ。


 村に入った馬車は所定の位置に止まり、フェルーシャ達はネウン村の宿に泊まる。ミクは面倒なので馬車の中で留守番をする事に決めた。フェルーシャ達に説明をしてあるので、彼女達もミクが眠る必要が無いのを理解している。


 なのでミクに任せてさっさと行ってしまった。ミクはヴァルと一緒に寝転がり、暗くなるまでは周囲を見張るようにしていたが、暗くなり日も落ちたので停止する。後は本体で暇潰しだ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 最近、本体の空間から出てこないが、未だに訓練漬けのローネ。予想以上にダメダメだった事で闇の神が一番怒っている。その所為で外に出られないのだが、完全な自業自得である。ついでに五月蝿いのにも慣れてきた。


 今も真正面から戦う方法と有用な【スキル】を教えられている。どうも暗殺するにしてもスマートな方法でさせたいらしく、闇の神の拘りに付き合わされているローネ。神の子である以上は拒否するという選択肢が無い。


 今日も今日とて訓練に励むローネと、演技指導を受けるミクとヴァル。何時になったら彼女が外に出られるのかは分からないが、神が納得するまでは無理だろう。


 色ボケの末路としては相応しい気もする。


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