0080・フェルーシャとの話し合いと御仕置き
「仮にアンタの言ってる事が本当の事として、カレンには………無理だね。アーククラス中位が本当ならどうにもならない。流石に魔界の領主に居るかどうかぐらいの強さはね、近付かないに限る」
「それで隊長……この女はどうするんです? 俺達としては逃がすのは宜しくないと思うんですがね。そもそも逃がす気なんてないでしょうけど、オーセスの事も知ってますし……」
「そういえば<淫蕩の宴>っていう裏組織の筈でしょ。何で普通に兵士か騎士をやってるの? それって変な気がするんだけど、変装してるのかな?」
「いや、変装じゃなくて本当に騎士をやってるのさ。ただし特殊な騎士だけどね。簡単に言えば裏側の事をやる騎士で、色んな工作活動もしてるんだよ。代わりに国は私達に手を出さないという訳さ」
「へー、成る程ね。それで王国でも<淫蕩の宴>が勝手な事をしてたんだ。あれも工作活動の一環でしょ? 何故かカレンの一日を報告書にして送るとかいう事をやってたけどさ。あれ本人に見せたら気持ち悪いって言ってたよ」
「ああ、あの報告書はワザとああいう風にして送らせてたのさ。私にとって重要なのは、カレンの近くに他の吸血鬼が居ないか……って、あの報告書をカレンが読んだのかい!? ……アレを見られたかぁ」
「それよりもオーセスを知り、あの報告書まで知るお前はなんだ!? オーセスからの定期連絡も来なくなっているし……お前、まさか!?」
「<堕落のオーセス>とかいう奴なら私が殺したよ。女冒険者を攫って商国に売り飛ばすって事をしてたけど、私を捕まえてね。その所為で私に殺されたんだ。手を出されて黙ってる奴なんていないよ」
「それに関しては同感だけど、オーセスの奴が殺られてたなんてね。どうりで連絡が無い筈だ。とっくに潰されてたとは……。ますますアンタを出す訳にはいかなくなったんだけど、その意味は分かってるのかい?」
「さっきも言ったけど? 自力で出られるってさ。だから気にしなくてもいいよ。オーセスとかいう奴に囚われた時も同じような檻に入れられたしね。……おっと、危ないなー」
男はオーセスと同じくクロスボウを射ってきたが、ミクは飛んできたボルトをキャッチする。それを見た男達は構えていたクロスボウを下ろした。射っても武器を与える事にしかならないと判断したのだろう。
流石とは思えるが、檻はそれなりに深い。壁際まで行かれるとボルトをキャッチされるか回避されるだろう。【スキル】持ちなら難しくない。そう判断してフェルーシャ達はミクに迂闊な事が出来なくなった。
「ミクって言ったっけ、<淫蕩の宴>に入る気は……無さそうだね。しまったな、色々なものが後手後手に回ってる。オーセスが殺られたなんて知らなかったし、カレンの知り合いとも思わなかった。更にはここまで強いとは……」
「<怪力>か<人形>に渡しますか? 奴等ならどうにかすると思います。<怪力>の方がいいですかね? あの男ならどうにでも出来るでしょうし。ただ、碌な奴じゃありませんが」
「流石にねぇ……。あの男に渡すのは駄目だ。とにかく女を壊すものとしか考えない男には渡せない。厄介ではあるけど、<怪力>に売り渡すほど落ちぶれちゃいないよ」
「その<怪力>とかいう奴は殺して良さそうだね? そいつの居場所教えてくれないかな。そうすれば喰わないでおいてあげるからさ」
「は? ……お前はいったい何を言ってるんだ? 気が触れた訳でもないだろうし、いったい何をかんっ!?」
ミクは牢の中から視認出来ない程の速さで触手を放つ。その触手で麻痺毒を注入し、即座に動けなくした。そのまま触手を使って鉄格子の向こう側の壁に並べていく。麻痺している連中は為されるがままだ。
目は開けられるので見えているが、呼吸をするので精一杯となっている。そんな連中の前でミクは<暴食形態>に移行し鉄格子を食い荒らす。全て無くしたら這いずりながら進み、ヴァルの方の鉄格子も食い荒らした。
その光景を見て呆れるヴァルと女性形態に戻るミク。その後、二人は麻痺している奴等の前に行き、こう宣言した。
「何か勘違いしていたのかもしれないけど、いつでも殺せたのは私の方なんだよ。<堕落のオーセス>の時もそう、ワザと捕まっただけ。だって私、アンノウンだから」
その一言で、麻痺しているにも関わらず目を剥く五人。本当に手を出してはいけない奴は目の前に居たのだ。自分達はその事にさえ気付いていなかった。だからこそ、これから喰い殺されるのだろう。
そうフェルーシャが諦めた時、淫欲の女神からの言葉が聞こえた。それはミクにも聞こえた為、仕方なく食べるのを止める。相変わらずいいところで止める神どもだと腹を立てながら。
フェルーシャに神託を与え終えた淫欲の女神は、最後にミクにだけ”ある事”を言って締め括った。神の意向なら仕方ない、やらないと五月蝿いし。そう思いながらミクは、触手を突き刺して万能薬を注入する。
それで麻痺が治ったフェルーシャはやれやれと息を吐いた。
「流石にアンノウンだなんて想像もしなかったよ。アーククラスどころの騒ぎじゃない、絶対に手を出しちゃいけない怪物じゃないか。魔界でも奥地に居るって聞くけど、誰も見に行った者なんていないよ」
「へえ、私も同じアンノウンを喰らってみたいんだけど、神どもには魔界に行かせないって言われたからさ。残念だけど諦めるしかないんだよね。後、フェルーシャは御仕置きね」
「は?」
ミクは素早く触手を突き刺してフェルーシャに媚薬を注入する。神からの命はフェルーシャだけなのだが、ミクは男達にも触手を突き刺し精力剤を注入した。限界ギリギリの量なので、すぐに効いたけど麻痺しているので放置。
フェルーシャの方は我慢できないのか、股座を押さえて蹲っている。ミクとヴァルは互いに男性形態になりフェルーシャに御仕置きを始めるのだった。
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どれだけの時間が経ったか分からないが、そこまで長い時間ではない。とはいえ、嬌声すら上げられなくなったフェルーシャはピクピクするだけになっており、既に意識を手放していて戻ってこない。
男どもは触れてもいないのに股座を濡らしてしまっている。淫欲の女神はフェルーシャを性的に完敗させろと命じてきたので実行したが、男達に関してはミクが勝手にやった。おそらくは何かしらの怒りがあったのだろう。
ミクは男達に万能薬を注入し、フェルーシャを連れて行くように言う。それに明日出発だと言っていたし、それに間に合うように準備もしなきゃいけない筈。ミクがそう言うと、男達は慌てて動き始めた。
ミクはその間に外に出ようとし、開いた扉の向こうに自分の荷物を発見したので、服を着込んでいく。着替えていると、フェルーシャを連れた男達が階段を上がっていった。どうやら<踊り子の家>と似た構造なんだろう。
服を着終わったミクは階段を上がり扉を開けると、そこは執務室の裏だった。やはり構造は同じらしい。窓から飛び降りたミクは、下りてきたヴァルと共に宿へと移動する。既に夜も深かったので、宿の玄関扉は閉まっていた。
どうしたものかと悩んだミクは、已む無く宿の屋上に飛び上がり、そこで寝る事に。特に問題のある屋根では無かったし、天辺部分は平らになっていて寝るのは難しくない。ミクは寝返りなどしないので大丈夫だ。
ミクはそこで肉体を停止して朝まで待つ事にした。神から仕事を請けた以上は敵じゃない。なのでフェルーシャ達に商国を案内させようと思いながら。




