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0071・ヴァルドラースとカレンの邂逅




 外に出る準備も終わったので外に出る四人。ダンジョンから出たミク達を見た人は、何故か一緒に居る男性を見る。非常に美しく整った顔、溢れる程の覇気。女性達の視線が一瞬で固定されるのもよく分かる容姿である。


 ちなみにミクもヴァルもローネも、ヴァルドラースの容姿に一切反応していない。そもそも見た目に大した価値など見出さない肉塊と使い魔、そして見た目に興味の無い半神族。三人にとってはそんなものである為、気にも留めなかった。


 しかし周りの女性たちは違う。イケメンが居れば見るのは当然と言わんばかりにガン見している女性達。一種異様な雰囲気の中、堂々と歩いて帰る四人。持つ者と持たざる者の対比の様になっていた。


 門番に入都税を払い中に入った四人は、周りから集まる者を無視してさっさとゼルダの屋敷に戻る。そのまま応接室に入りくつろぐ四人。その事に呆れるゼルダ。とはいえ、彼女もヴァルドラースの容姿に反応していない。



 「ダンジョンに行くって言っておきながら何処に行ってたのかしらね? それに、妙に容姿の整った男を連れ帰って来てるし。何があったらそうなるのか教えてほしいわね?」


 「この者の名はヴァルドラース。かつて<青の鮮血>と言われた吸血鬼だ。名前ぐらいは知っているだろう。どうも神聖国を作った者か、それに関わりある連中にやられたらしい。ダンジョンの最奥に居た」


 「ゴメン、意味がサッパリ分からない。私も名前ぐらいは知ってるけど、何で<青の鮮血>が王国のダンジョンの、しかも最奥に居るのよ?」


 「昔、神聖国に関わりある奴等に【浄化魔法】と<呪具>を使われて暴走したんだってさ。それで神がダンジョンの最奥に封じ込めたらしいよ。たぶん暴れても被害が出ない所に押し込めたんだろうね」


 「ええ。その結果暴走は治まったのですが、そこから出られなくなりましてね。永きに渡って修行を続けていたのですよ。何故かあそこでは血を摂らずとも生きられたので、ずっと修行ぐらいしかする事が無くてですね……」


 「気付いたらアーククラス中位か? どれだけ修行したんだと言いたくなるが、それだけの強さでもアンノウンの足下にも及ばないのだからな。ミクは強過ぎるという領域にいるのだろう」


 「アーククラス中位で歯が立たないとか……冗談でも何でもなく強過ぎじゃないの。初めてあった時に喧嘩を売って、よく生き延びられたわよね、私。クズどもを抹殺する仕事をする羽目になったけど……」


 「おや、この方もですか……? 確かに穢れた者を抹殺するには多くの者が必要ですが……ああ、成る程。魔女だったのですか。それならば納得です」



 その後、ヴァルドラースの持つ古い知識と現在の知識のすり合わせが行われ、ある程度は現在の知識を手に入れたヴァルドラースは納得していた。



 「神聖国とかいう危険な薬を使う連中が、かつての私の領地を中心に国を興したと……。確かにそいつらの可能性は高そうですが、あの時の連中は暴走中に皆殺しにした筈です。仲間がまだ居たのでしょうか?」



 その辺りの事は考えても分からないので、神聖国に行った時に思い出せばいい程度の話である。丁度夕食が出来たとの事で、呼びに来たメイドと共に食堂へと移動した。


 食堂では既に食事が用意されていたので、ゼルダ、ローネ、ヴァルドラースは食前酒を飲みながら食事を始めていく。ミクとヴァルは水だ。この二人はいつでも何でも食べられる怪物なうえ、アルコールが効かないので飲んだりしない。


 ミク達も然る事ながら、ヴァルドラースも非常に上品で優雅に食事をしている。マナーも作法も完璧であり、伊達に貴公子とは呼ばれていないのだなと思わせるものだった。そしてメイド達は眼福とばかりに見に来ている。


 何かを持ってくる度にメイドが入れ替わっており、屋敷の主たるゼルダが諌めても聞く気の無いメイド達であった。尚、ヴァルドラースは気にもしていない。現役で領地を持っていた頃は頻繁にあった事なので、懐かしい程度だそうだ。


 イケメンは数百年前からモテ続けるらしい。流石だと思う反面、不老の種族はそんなものであろう。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 食事後、寝室に移動するミクとヴァルとローネとヴァルドラース。ゼルダが慌てて止めるも、何故止めるのか分からない四人。ヴァルドラースが居る為、言い難そうに伝えるゼルダ。しかしヴァルドラースは気にしない。何故なら彼は両刀だから。


 ゼルダは気にするらしいが、他の四人は気にしない人達だったのだ。ミクとヴァルは肉塊と使い魔。ローネは数千年を生きる半神族。ヴァルドラースも古くから生きる吸血鬼。そもそも今よりも遥かに性が解放されていた時代の者なのだ。


 今さらながらに言っても意味が無かったが、ゼルダの相手はヴァルで決まった。何故かミクがそう決めたのだが、それで良いかと放り投げたゼルダ。


 何故ミクがそう決めたのか、答えは神謹製の精力剤にあった。これを行為の最中に素早く注入するミク。その所為か暴走気味になるヴァルドラース。最後には全てを搾り取られピクリともしなくなり、ベッドに撃沈した。


 ローネの相手をする前にデータが取れたと喜ぶミク。それを見てドン引きするローネ。男だとこうなるのかと、まざまざと見せ付けられる出来事であった。


 ちなみに、ミクの血と肉を持つからこそ暴走気味で済んでいたりする。普通の人間種なら完全に暴走して死ぬほどの量を、それも直接注入したのだ。よく無事だったとすら言えるだろう。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日。アレだけの事があっても回復しているヴァルドラース。流石はアーククラス中位の吸血鬼だと言えよう。ミクには精力剤を使うのは止めてくれと言ったらしいが、それは当然の事である。


 それと使う量が多すぎると薬の神に怒られたらしい。良かった。良かった。ヴァルドラースも胸を撫で下ろしている。


 朝食後、王都を出た四人はヴァルの背に乗りバルクスの町へ進む。急ぐ必要も無いのでゆっくり進んで行く事にした四人は、適当に雑談しながら暇を潰すのだった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 二日後、バルクスの町に着いた四人は、門番に入町税を払って中に入る。夜中に空を飛んでみたいと言ったローネとヴァルドラースの所為で、ミクとヴァルがヒッポグリフになり空の旅を楽しんだのだ。


 一直線で来れる為、あっと言う間に着いてしまったのだが、これは言い訳できない。とはいえ知っている者もいないので無視する四人。町の中に入ったら、そのまま真っ直ぐ冒険者ギルドへと向かう。


 いつも通り扉を開けて中に入り、右端の分厚いメガネの受付嬢に話しかける。言わずと知れたカレンであるが、ミクの姿を見るなり機嫌が急上昇し、ヴァルドラースを見た途端に固まった。


 吸血鬼には、同じ吸血鬼にしか感じられない特殊なオーラがある。それは位階を示していると言っていいのだが、それがハッキリとカレンを打ちのめした。一目見たその瞬間、カレンは屈服したのだ。全てにおいて。


 そう、”全て”においてだ。アーククラスも近い強者であるカレンが、一目見て自分の方が格下だと理解したのだ。それは格付けに近いのだが、吸血鬼というのはそういう生態だと言える。


 何よりカレンの中の”メス”が大声で叫ぶ。彼に全てを差し出せと、彼の”寵愛”を受けろと騒ぐのだ。自分の下腹が強く熱を持つのが自覚できる以上、カレンにそれ以外の選択肢は無い。


 無言でメガネを外したカレンはヴァルドラースの前まで行ってひざまずき、彼の靴先にキスをした。永遠の隷属を誓うように。


 本人は自分の意思でやっているのだから良いのだが、周りはその限りではない。爆発的な騒ぎとなり、冒険者ギルドは収拾不能となったのだった。


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