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0065・神聖国のやり口




 ドラゴン戦は当然のようにミク達の勝利で終わり、かつては持って帰れなかった頭部すら手に入れた。もちろん切り落としたのはミクであり、アイテムバッグに回収したのはヴァルだ。


 31層に転移した六人は、すぐに神聖国の連中の所に行って安全を確保する。死んでもらっては困るので素早く情報収集をする為だ。ミクは裸のままであり、ロディアスとアドアは必死に目を逸らしているが仕方ない。


 情報収集が先なので諦めるしかないのだ。実際にはミクが悪戯を兼ねて挑発しているだけなのだが、それは横に置いておこう。ミクは触手を頭に置き、脳に突き刺して支配した。その際に不思議な物を感じる。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 疑問に思った瞬間、本体の空間に<薬の神>が来てこう言った。「その者どもの頭は特殊な薬で汚染されている」と。それはミクにとっては危険ではなく、更に一度覚えれば本体で生成できるとも。


 それはいいのだが、何故か<薬の神>は自ら作った媚薬と精力剤も、本体に吸収させてから去って行った。生成できるようになった筈だと言い残して。


 そもそも肉塊にそんな物は必要ないのだが……いったい何を考えているのだろうか?。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 戻ってダンジョン31層。特殊な薬で汚染されている事を話すと、ゼルダが即座に反応した。どうやら薬の一派に所属するだけあって詳しいらしい。



 「それは多分だけど<幸福薬>と呼ばれる物よ。投与されると多幸感に包まれるという危険な薬。そもそもミクのように脳に手を出しても問題無いなんて、基本的には無理な話なの。当たり前だけどね」


 「本当に当たり前の事だとしか言えんな」


 「おそらく神聖国は<幸福薬>を利用して、自分達の都合の良いように洗脳してしまうのでしょうね。そしてそういう者達を駒として利用してる。仮に捕まっても、頭のおかしい事しか言わない奴等の出来上がり」


 「何て事を……。百歩譲ってそれを裏組織の連中がやるならまだしも、そんな非道な事を国家がやっているなど。あまりにも愚かに過ぎます」


 「私からすればそんなものだ。過去にも薬で狂わせた犯罪者を他国に送り込むなど、幾らでもあった事だぞ? 今でもやっているに過ぎん」


 「歴史の事は横に置いておくとして、この薬をどうにかするのは無理なのかい? 流石にミクの能力を明らかには出来ないから、どうやって情報収集したかを考えなきゃいけないんだけど……」


 「正直に言って難しいわね。これ系統の薬って脳に後遺症として残り続けるの。薬を投与された後で受けた暗示によって異なるけど、薬を抜いてもそれを思い出して同じ行動をとり続けるわ」


 「使われたらイカレっぱなしって訳か……。それこそ呪いを使うぐらいしか情報を奪うのは無理そうだね。もちろん表の方法は、だけどさ。裏はミクに……って、王都破壊計画!?」


 「成る程。それで<聖剣>を派遣してきていたのか。マルヴェント侯爵が暗殺されれば、国を守ろうという気概のある者は減るだろうな。一応は<処刑侯>とも呼ばれる人物だ。王国に与える影響は大きい」


 「その後、王都の裏組織を焚きつけての略奪。その隙に自分達は脱出ですか……。何と言うか、浅はかですけど、その計画に邪魔なのが私達とはね。言っている事は事実ですし、その通りでしょう」


 「おそらく神聖国の指揮命令系統を基準に考えてるんでしょうけど、マルヴェント侯爵を暗殺して侯爵邸をさっきのスキルで爆破しても、兵士は見逃したりしないわよねえ? 事前の計画通りに動くだけだし」


 「そうだね。緊急時は定められた通りに動かなきゃいけないし、他の兵士も見ている。全員の口を封じないと逃げる事なんて不可能だよ。頭がおかしい連中が考えた計画って感じだね」


 「ぼくのかんがえた、さいこうのあんさつけいかく~」



 そんな下らない事を言いながら、肉体を<暴食形態>にして貪っていくミク。ようやく目を逸らさなくてよくなった男二人。そんな男二人は色々と得られた情報から考えていく。



 「それにしても神聖国の上層部はとんでもないですね。このままだと同じ様な事を延々と繰り返してきますよ。彼らにとってみれば代わりは幾らでも居るでしょうし……」


 「それだけじゃない。神聖国の者で名を知られている<聖剣>でさえ、この程度の扱いだ。策を練っている連中が誰かすら分からない。少なくとも奴等にとって大切な武器の一本は手に入れた。とはいえ……」


 「確か神聖国の連中は、聖なる武器を三本持っているとか言ってたわね。後は槌と槍だったかしら? それにも厄介な専用スキルが付いていた筈よ。ミクには効かなさそうだけど」


 「効くか効かないかは別にして、大事なのは神聖国が敵対してくる事だ。こちらとしては望むところだが、搦め手を使ってくる可能性もある。周囲の者の安全に気を配った方がいい」


 『俺と主は関係無いな。来たら喰うだけだ。後の知り合いはカレンと宿のオッサンか。どっちも強者だから特に問題無いんじゃないか? 何よりわざわざバルクスの町まで行くまい。神聖国の連中が行っても怪しまれるだけだ』



 そうしている内に食べ終わったミクが<女性形態>になり、予備のライダースーツを着込んでいく。<ソルシャイル>という剣をどうするか困ったが、面倒なので全員がミクに丸投げした。


 そのミクは<ソルシャイル>を本体の空間へ転送する。その後31層を歩いていくのだが、ミクは二つの転移魔法陣を既に発見していた。なので、帰るか進むかを聞く。



 「いやいや、当然帰るよ。ミクが居れば進めるのは分かってるけど、外に出て神聖国のスパイどもに見せ付けないといけないからさ。どうせ動くだろうし、今日の夜にコッソリ行くのなら挑発しておかないとね」


 「確かにそうですね。ミクさんが夜に向かうにしても、彼らも攻めるまでに準備時間が必要です。何でしたら、外に出た後で<ソルシャイル>を掲げてみればいいと思いますよ? ダンジョン内で発見したとか言って」


 「ほう。それは素晴らしい提案だな、アドア。名前はどうする? 別の剣だと言い張るなら、別の名前が要るぞ?」


 「奴等が聖剣だと言い張っているだけで、実際は光属性の魔剣だからねえ……<ブレインホワイト>とかどう? とっても皮肉が利いていると思うわよ?」


 『危険な薬を使う連中だしな。それも知ったとアピールする上で丁度いいだろう。ついでに魔剣だと言い張ればいい』


 「本体で色々調べてるんだけど、さっきの専用スキルが強力なぐらいで他に特徴は無いね。使っている奴も大した実力じゃなかったし、スキル頼りの使い手にする剣って感じ」


 「他の聖なる武器とやらも似た様な物なのかもしれんな。武器として考えれば誰が使っても強力な方が良いのだが、それでは使い手が上達せんか」



 ここに居る全員もそんなものかと思い、さっさと出る事にした。ミクは途中で右腕を肉塊にし、<ブレインホワイト>を取り出してアイテムバッグに仕舞う。


 そのままハイレイスを食べながら進むと、ミクの報告通りにハイヴァンパイアが出現。皆が構えるも、ミクが即座に喰らって終わる。流石にロディアスも慣れたのか咀嚼音にビビる事は無くなっていた。


 そのままヴァルの先導通りに進み、青い魔法陣から脱出する面々。釣りエサとしてはこれ以上ない程の釣果を挙げたが、この先において神聖国がどう出てくるかは未知数になった。


 そこに悩むも、まずは外で更なる釣りを開始せねばならない。王都にある神聖国関連の裏組織を動かす為に。


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