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0063・ロデイアスからのドラゴン討伐依頼




 いざ夕食となったタイミングで、ロディアスとアドアが訪ねてきたらしい。ゼルダは食堂に案内するようにメイドに言い、程なくして彼らは現れた。特に食事は必要無いそうだが、ある相談の為に来たようだ。



 「今日訪ねてきたのはマルヴェント侯爵から依頼があったからなんだよ。ドラゴン討伐の依頼がね。どうも商国の者どもが王都で暗躍しているので、掣肘せいちゅうを加えたいらしい。戦争となると冒険者が出る事もあるからさ」


 「私達<竜の討伐者>をアピールしておきたいようですね。あまりにもこちらに手を出してくるなら、私達が戦争の時に出て行くぞ、としたいのでしょう。ドラゴンの素材は前回と同じく高値で買っていただけるそうです」


 「成る程ねー……。私はミクが行くなら賛成だけど、ミクは面倒くさがって行かないんじゃない? 政治とかどうでもいいし、権力じゃ縛れないしね。私やローネや<黄昏>でも無理なのに、それより上のミクは不可能でしょう」


 「私達がとやかく言う前に、ミクに聞いた方が早いだろう。私もゼルダと同じ意見だ。ミクが行くならば行く。ガルディアスが居なくとも、代わりにミクが居るなら余裕で勝てるだろうしな。それに素材も多く持ち帰れそうだ」


 「私は侯爵とかどうでもいいかな? 特に興味無いし、国の事とか知った事じゃないし。肉が喰えるならいいけど、食べられないんじゃ面倒なだけだよ」


 「じゃあ、肉が食べられるなら行くって訳だね? それを聞いて安心したよ」


 「まさかロディアス、何かしらの生贄を用意する訳ではありませんよね?」


 「いや、その通りだよ。ただ一つ勘違いしているとしたら、その生贄は裏組織や他国の連中だけどね。これからマルヴェント侯爵の依頼を大々的に発表するからさ、その間に邪魔をする準備を整えてくれるよ。そしたら必ず中で襲ってくる」


 「それはそうでしょうね。魔導国にも、帝国にも、商国にも、神聖国にも<竜の討伐者>は居ないもの。正しくはドラゴンが発見されていないんだけどね。それでもドラゴンを倒したというのは大きいのよ。必ず邪魔をしに来るわ」


 「私達に殺されると分かっていても、本国の連中の命令や、功名心に逸った馬鹿は出てくる。そいつらを捕まえてミクに尋問をしてもらい、後は喰って証拠を無くしてもらえばいい。という訳か」


 「そういう事。ガルディアスは文句を言ってくるかもしれないけど、もしかしたら押し掛けてくるかもね。それならそれで、ガルディアスも連れて行くだけさ。当日は俺達以外を立ち入り禁止に出来るから、他の冒険者が居れば敵となる」


 「そいつらは前日から侵入しておくしかないからな。疲弊しているうえに相手が我々だ。絶対に勝てんだろう。ミクと私で気配を確認しつつ進んでいけばいいな。それで余程の手練か魔道具を持つ奴以外は見つけられる。で、どうする?」


 「まあ、さっきも言った通りかな。肉が喰えるなら問題無いよ。私としては神連中に命じられてるのはゴミの処分だし、そいつらは喰っていい事になってる」


 「じゃあ、そういう事で。今日から告知して、出発は五日後くらいかな? 少し前後するかもしれないけど、遅れる事はあっても早まる事は無いと思う。しっかりと馬鹿どもが食いついてくれないと困るからね」



 そう言ってロディアスとアドアは帰って行った。ミクにとっては先ほども言った通り、喰えれば何でも良い訳であって、待つ事自体は何の問題も無い。これで食べられないとなれば暴れるかもしれないが、食べられるなら待つ時間はスパイスのようなものだ。


 そのミクは食事後、鼻歌交じりに寝室に行き三人と雑談。その後は機嫌良くゼルダを満足させて分体を停止。当日まで楽しみに待つのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ロディアスとアドアがゼルダの屋敷で依頼してから七日後、ようやくドラゴン討伐の日が来た。それまでもドラゴンを乱獲しつつ、31層以降の探索もしていたミクとヴァルと”ローネ”。


 実はローネは途中から参加しており、順調に実力を伸ばしていた。暗殺の技ばかりでは仕方ないと、ミクに頼み込んで連れて行ってもらっている。最初は上手くいかなかったものの、今ではミクやヴァルのフォローが出来るまでになっていた。


 そうなるまでには涙ぐましい努力があったのだが、ここでは語らない。というか、肉塊のあまりの基礎スペックの高さに、ローネが遠い目をする事が何度かあっただけである。説明しても仕方がない程度の事だ。


 そして朝から集まったメンバー。ロディアスにアドア、ゼルダにローネにミク。ガルディアスからは正式に断りの返事があったそうだ。何でも王都までは間に合わない事と、問題行動を起こす女性達のお守りはゴメンらしい。


 それを聞いたゼルダとローネは怒っていたが、かつて起こした揉め事を説明されて明後日の方向を向いていた。それはいいとして、久しぶりに体を動かせるからか嬉しそうなロディアスと、そのロディアスに付き添う女性。


 近くに三人の子供が居るのにも関わらず、ガン無視して二人の世界に入っている。何だったら「お前、誰だよ?」と言われかねないほどに格好をつけたロディアスが居た。ちなみに三人の子供はヴァルを撫でて喜んでいる。


 アドアは見送りに来てくれた孤児院の子供達に応えており、それぞれの光景を見ながら周囲の警戒をしているフリをする二人。フリなのは、ミクがライダースーツを着ているからだ。外なのでガン見する訳にもいかず、チラチラと見ている。


 子供達に撫でられながらも、それに溜息を吐くヴァル。本当に常識人は苦労をするらしい。そんな様々な者達に見送られながら魔法陣に入っていく六人。ドラゴン討伐というのは大きいと、本当によく分かる光景だ。


 ちなみにライダースーツはドラゴンのブレスを防げる事が判明しているので、現在はローネも着ている。体型が違いすぎるので何とも言えない仕上がりだが。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 流石のパーティーメンバーであり、楽々と10層に到達しボスを倒す。ここまで馬鹿どもが出てこなかったが、途中には居なかった。今回もミクが五種の感知スキルを使っているので、隠れられている者は居ない。


 11層に進むも進軍速度は落ちず、順調に進んで12層。遂に八名の馬鹿を発見したのだが、その先に十名居る。どうやら罠の前後に隠れており、罠を避けても引っ掛かっても強襲するつもりらしい。ならば乗っかろうではないか。


 【念話】で説明したミクは、タイミングを合わせて戦闘を始める。ミク以外の全員は後ろの八人を、ミクは前の十人を攻撃する。これが一番確実なのだ。


 前に居た十人はミクだけが来たので笑っているが、ミクは即座に骨を放って膝を完全に破壊する。その後は痛みに絶叫する馬鹿どもに麻痺毒を注入して終了。後ろの連中に向かう。


 後ろの連中も足を重点的にやられ、身動きが出来なくなっていたので麻痺毒を注入。動けなくしたらミクとヴァルで連れて行く。後はいつも通りに尋問していくだけだ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 分かったのは下らない事で、王都の裏組織三つが合同で組んだ暗殺者どもだった。特に重点的な目標はミク。もともと裏組織への勧誘を目的としていたのだが、ゼルダの屋敷に居るかダンジョンに居るので一行につかまらない。


 結局、手に入らないなら殺してしまえと短絡的に考えたようだ。ミク的には馬鹿が来てくれてありがたいのだが、こいつらは三つの組織の実力者らしく、これ以上の者は居ないらしい。なので、これからは怖れて手を出して来ない可能性がある。


 ミクとしては情報も聞いたし、こっちから襲いに行ってもいいなと思いながら貪っていた。ミクとヴァル以外は襲ってきた連中の持ち物を確認しているが、組織を示す物は無く金目の物も無かった。完全に殺すためだけに来たようだ。


 後ろで「ボリボリ」音がするのを聞きながら、何故周りは平然としているのだろう? と疑問に思うロディアスだった。


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