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0062・ドラゴン密漁の結果




 ミクとヴァルは本日のドラゴン密漁を終えて、冒険者ギルドへと行っている。ダンジョンに行ったのに何も狩っていませんは流石に怪しい。なので、ゴーレムコアを売りに来たのだ。


 アーマートータスの納品の際に売るのを忘れていたのだが、丁度いいかと思い売ってきた。今は受付嬢の所で支払いを受けている。それなりの金額になったが、ゴーレムコアというのは魔石の上位互換らしい。


 簡単に言うと溜まっている魔力が無くなると消える魔石に対し、ゴーレムコアは再充填できるという違いがある。つまり繰り返し使えるのだ。上のクラスであればあるほど魔力を充填できる量は多いのだが、それにも限度はある。


 それに何より、魔力の充填と消費を繰り返すと劣化するのだ。実際のゴーレムも強い者と弱い者が居て、弱い者は何度も消費と充填を繰り返したのだろうと言われている。ミクが持ってきた物は、それなりの品質だったらしい。


 ミク本人は「それはそうだろう」としか思っていない。何故なら質の良いコアは全て本体の空間にあるからだ。いちいち出したりしていないので、その程度の品質の物しかない。とはいえミクが問題行動をしているかといえば、実はそうでもない。


 ゴーレムコアを獲ってくる仕事はそれなりにあり、余った物を冒険者ギルドに売りに来るというのは普通にある事だからだ。よってミクが怪しまれる事は無い。なので売った金額を貰ったら、さっさとゼルダの屋敷に帰るミクだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ゼルダの屋敷に帰ってきたミクは、現在裸になって着替えている。出来るまでに時間がかかるのでワンピースを着てスカートを履いているが、本体はドラゴンの翼膜でジャケットやズボンを作っている。


 本日ミクとヴァルは六度もドラゴンを狩っているが、その素材が結構な量あり、本体は喜びながらも急ピッチで装備を更新している。ヴァルの人間形態の物も含めてなので、どうしても時間が掛かるのは仕方ない。


 適当に寛いでいるとローネが帰ってきた。ミクが居る応接室に案内されたローネは、相変わらず煩悩に突き刺さったのかガン見しながら会話を始める。見ているのが何処とは言わないが、煩悩に忠実な人物だ。



 「ミクはヴァルと共にドラゴンの密漁に行くと言っていたが、どうだったんだ? 下まで行くのは面倒だから、あまり多くを倒せたとは思わないが……二頭か三頭は倒せただろう」


 「今日は六頭を倒したよ。流石は神どもの作った剣だとしか言えないね。私かヴァルしか使えないけど、ぶった切る事は容易かったんだ。でも、細かく切るのには向かないね。細かいのはナイフの方が良いかな」


 「いや、ドラゴンがあっさり切れるだけで十分過ぎるだろう。それで……素材の方はどうなった? 沢山獲れたか?」



 そう言ってくるのを見越していたのか、ミクは短剣とナイフを肉から取り出す。それは骨と牙で出来た無骨な短剣とナイフだった。それを受け取ったローネは、自らの予備のナイフに刃を当ててそっと滑らせた。


 すると、いとも簡単に剣身が切り落とされて下に落ちる。そのあまりの切れ味にローネは愕然とするのだった。確かに普通の、そして何の変哲も無いナイフだ。しかし良質な鋼で作ってある物であり、業物と言って良い筈である。


 それが抵抗すら許さず切り裂かれるのだ。何かがおかしいと言わざるを得ない。竜の牙を削り出して作られた剣でさえ、こんな切れ味はしないだろう。何より細身の短剣なのに、それなりの重量があるのだ。



 「まさか……これは神々の作られた<竜殺し>と同じ方法で作っているのか?」


 「そうだよ? 【錬金術】と【練成術】を駆使して作ってる。下界の星では使うなって言われてるけど、別に本体空間で使うなとは言われてないし、むしろ使えとまで言われてるからね」


 「ああ、そうなのか……。いや、それにしても切れすぎる。確かに凄いが、扱いが難しいな。上手く使わないと自分まで切り裂かれてしまうぞ」


 「えっ、そう?」


 「………」



 アンノウンに比べればどんな生物も弱いのだから仕方ないのだが、何故か納得のいかないローネだった。その後、ミクは急に脱ぎだしたかと思うと、革のような物で出来たズボンを履いていくのだった。


 それを見て「ピン!」ときたローネは聞いてみた。



 「それがドラゴンの翼膜で作ったズボンか。唯の革製だと思ったら、とんでもない防御力だな。裾で試したが、鋼程度ではどうにもならん。私も戦った事があるので分かってはいたが……分かっていたつもりだったようだ」


 「どうも同じクラスでも、ドラゴンの素材の方が良い物が多いね。色々な武器を用意しても良いんだけど、そんなに作っても結局は使わないしさ。置いておくだけになりそうだよ。何かに使う予定があったら使うくらいかな?」


 「翼膜はどうだったのだ? ゼルダがドレスを作りたいとか言っていたが、その分はありそうか? ……ありがとう」



 ミクはローネから金貨30枚を貰ったが、ついでなので剣帯も渡しておいた。並の鞘だと切ってしまう可能性があるので、骨で作った鞘も付けて渡す。鞘の先には血抜き用の小さな穴が空いている。


 素材的に錆びるような素材ではないので、湿気ても何の問題も無い。ならば血抜き用の穴を開けておいた方が都合が良いのだ。そんな事を説明しているとゼルダが応接室にやってきたので、翼膜を渡す。


 ゼルダは渡された翼膜を受け取り喜ぶが、触る内に難しい顔になった。



 「コレを手に入れられたのはありがたいんだけど、そもそもコレを切ったり縫ったり出来るのかしら? ……今さらながらに大丈夫なのか疑問があるわね」


 「鋼のナイフでは傷一つ付かないぞ。それはさっき私が試した。魔剣で切るか、魔力金属製のハサミで切るんだな。ついでに針も魔力金属製でないと無理だろう。物が物だ、簡単にはいかんだろうさ」


 「………」



 苦渋の顔をしながらゼルダは翼膜を返してきた。なのでミクは肉を通して本体に転送したのだが、何故か本体のところに<衣の神>が来た。


 いったい何をしに来たのかとミクが疑問に思っていると、ドラゴンの鱗と翼膜でライダースーツを作り、そのまま渡して去って行く。触手で受け取ったものの、意味が分からないミクだった。


 分体側でライダースーツを取り出し服を脱いだら、早速試着していく。何故かファスナーまで作られていて、上まで上げるのは厳しいものの上げきる事に成功した。胸が窮屈だが、呼吸の必要が無いミクにとってはそこまで大きな問題ではない。


 ミクにとっては一体型で便利な服だなという印象なのだが、見ている二人は違った。しっかりと、そしてハッキリと出てしまっている美しい肉体のライン。窮屈そうに押し込められた胸。二人の劣情をこれでもかと刺激する服だったのだ。


 ミクは服と体の動きしか興味が無く、女二人は劣情からガン見している。その光景を見て溜息を吐くヴァルと頬を染めているメイド達。まともなのがヴァルしかいないという事実。どうやらメイド達も染まってしまったようだ。


 夕食に呼びに来たメイドが来なければ、いつまで経っても空気が変わらなかったに違いない。ヴァルは夕食に行く前に、ミクに着替えてから行くように言う。ヴァルが言うならと着替えるミク。それに対して「あぁ~」という他の全員。



 (ここには駄目な奴しか居ないのか、それとも主の美貌がそうさせるのか? 美貌だとしたら、周りの奴がこうなっていくという事だが……神々がそこまで想定してあの姿に決めたのかは疑問があるな)



 神々とて地上の者がここまでバカだったとは思っていない。ある意味想定外なのだが、面白いので強制しているだけだったりする。もちろん神々は伝えないが。


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