0060・屋敷に戻って会話とドラゴン密漁へ
夕食が始まるとゼルダからアーマートータスの甲羅は獲れたのか聞かれたので、問題なかった事を伝える。次にローネからドラゴンは倒せたのか聞かれたので、こちらも問題なかった事を伝えたミク。
ゼルダとローネは盛大な溜息を吐きつつ、どうやって倒したのかを聞いていく。自分達とは絶対に違うだろうと思いながら。
「まずはアーマートータスから言うけど、こいつは【深衝強撃】を使うと甲羅ごと潰れたよ。体が耐えられなかったんだろうね。仕方なく、普通に首を伸ばしてきたところを切り落として終わらせた」
「何故亀の首の動きに反応出来るのかしら? それ以前に亀の首の動きより速く動いてるの!? そうしないと伸びている間に切り落とせないわよね!?」
「別に速い動きじゃないから難しくもないでしょ? 切ったり潰したり出来る威力があれば後は簡単だよ。二人でも出来る程度の事だし、驚く事でもない筈だけど……?」
「やってやれなくはないが、殆ど反射と先読みの領域だと思うぞ? アイツらは動きがトロい癖に、首の動きだけは異様に速いからな。だからこそ突然噛みつかれる者もいるのだ。場合によっては食い千切られる」
「昔ドラゴンと戦いに行った際にも噛みつかれた馬鹿が居たわね。そいつが騒いだ所為で面倒な事になったのよ。周りのゴーレムがこっちに近付いてくるし、無駄な魔力を使わされたわ。本当に碌なヤツじゃない」
「まあ、いいではないか。ドラゴン戦で調子に乗り大怪我を負ったからな。あの戦いでは死者は出ていないが、あの男だけは引退する羽目になった。自業自得だし、誰も同情などしなかったろう」
「アーマートータスの甲羅を手に入れた後、適当に倒しながら30層まで進んでドラゴン戦。大きいなとは思ったけどそれだけかな? ただしブレスが面倒だったよ。服を焼かれるのは嫌だから、途中から裸で戦うしかなかったし」
「「!!!」」
『主はブレスを浴びても何の問題も無かったな。焦げるどころか火傷も無かったし。まあ、予想通りの結果だったとは言えるが……。その後は翼を落としたり、首を落としたりして終わりか』
「「!?」」
「そうだね。その後は31層をウロウロして、出てきた吸血鬼を食べて帰ってきたよ。分体を停止してからの方が大変だったけど、アレは仕方ないし、私でもどうにもならない」
『神々が主の本体の所に来て激論を交わしていたな。面白かったのは<竜の神>か。ドラゴンが倒されるに相応しい武器を作れ、だからな。俺も最初は驚いたよ。出来たのがアレで、更に驚いたけどな』
「アレ……? 神々の事だから聞くのがとても怖いが、いったい何の事なのだ?」
「ヴァルが<ドラゴン密漁>を提案して、私がドラゴン素材の装備を整えた方が良いって思ってさ。で、武器をどうしよう? って考えてたら、神連中が集まってきたんだよ。そこで激論交わした後、勝手に素材を使って作っていったのが、コレ」
そう言ってミクはドラゴンバスターを取り出す。ミクは片手で持っているが、渡そうとしたゼルダもローネも持つ事は出来なかった。ローネは【身体強化】をして持とうとしたが、それでも持つ事しか出来ない重量である。
とても振る事など出来ずプルプルしているだけであり、傍から見ていても怖いのでミクが回収した。本当に何度見ても怪物が使う事しか考えていない、バカみたいな剣である。ゼルダとローネも呆れて言葉が出ない。
これを作ったのが神々だというのだから、神はいったい何を考えているのかと言いたくなるだろう。そういった言葉も出そうになるが、グッと堪えている二人だった。別に<魔の神>も<闇の神>も関わっていないのだが、色々あるのだろう。
「まあ、さっき見せた剣で明日からドラゴンを密漁してくるから。何回か入り口まで戻ってを繰り返すと思うけど、特に不審には思われないと思う。適当に食事したり休憩してたら大丈夫だよね?」
「どの層から出てきたかは分からないから、多分大丈夫だとは思う。思うのだが……気付く者は気付くと思うがな。とはいえ、ドラゴンを殺しに行っているとは思うまい。そういえばミクは素材はどうするのだ? 要らない素材の事だが……」
「ネメアルの素材以外はドラゴンの方が上みたいだから、アップデートに使うけど? 余った物は……どうしようかな? 売ると面倒な事になりそうだし、適当に食べるかも?」
「「ちょっと待った!!」」
「食べるなんて勿体ない! 私に売ってくれ! 特に牙か爪。私の短剣はダンジョンで手に入れた魔剣だが、切れ味が鋭くなるという効果しか付いてないのだ。それを黒く塗っているだけでしかない」
「私は翼膜よ! あの薄皮で新しいドレスが作りたいわ! ブラックアラクネクイーンの糸なんて目じゃない程のドレスが出来るのは間違い無いの。だから売ってちょうだい!」
「余ったら良いけど、余るまでは無理かなぁ……。特に翼膜は私も結構使うつもりだし、その分集めるつもりではあるけど……どこまで集められるかによるね。何だかんだと言って30層って面倒だからさ」
その一言には納得せざるを得なかったので、トーンダウンするゼルダとローネ。既に夕食も終わって寝室で話していたのだが、話が切れた段階で今日も二人ずつに分かれる。
ミクとローネ、ゼルダとヴァルに分かれたが、最近バストアップ体操を頑張っている事を急に言い出すローネ。訳が分からず困るミクだが、ローネにも色々あるのだろうとスルーした。
ちなみにローネは高身長、貧乳、痩せ型という、エルフ系の特徴そのままである。耳は人間と変わらないが、それ以外は褐色肌で銀髪という絵に描いたようなダークエルフの見た目だ。
ゼルダは普通の身長に少し大きめの胸とくびれ、長い足をしているものの、ちょっとポッチャリ系ではある。漫画やアニメではなく現実だから当然だが、その方が男性の目は惹き付けられるのだ。
ミクと比べてはいけないが、アレは好きに作り変えられる反則仕様なので、そもそも比べる対象にするのが間違いだと言える。そう考えると美術品のように愛でていたのは間違いではなくなるのだが、それもそれでどうなのだろうか?。
今日のミクは触手を生やしていない女性の姿だが、ある一点だけが男性だった。それはローネのリクエストだったのだが、妙な道に入りこんだのかもしれない。
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ゼルダとローネがスッキリして満足した翌日。ミクとヴァルは<ドラゴン密漁>の為、朝も早くからダンジョンに来ていた。順番を待ち、中に入っていくのだが、相変わらず後ろから追いかけてくる連中が居る。
諦めの悪い者達だが、前のパーティーが入ってから多少の時間を待たないと、入ってはいけないとギルドのルールで決められているのだ。これ、破ると即座に賞金首にされてしまうほど厳しい。なのでルールを破る事が難しく、抑止になっている。
そして、その間にとっとと移動してしまうミク。浅い層だと食べる事も出来ず面倒なだけなので、いちいち相手をする気も無いのだった。
ヴァルに乗って一気に進み、10層のボス戦。矛で戦ってみたが、あっさり切り捨てて終了。使い勝手が分からない程に味気ない戦闘だった。矛の柄は1メートル50センチ、刀身は70センチの諸刃で両刃のシンプルな剣型の物だ。
斬撃も刺突もやってみたが、特に問題はなかったと思う。そんな事をヴァルの背で話すミク。あっさり終わりすぎて消化不良なのだろう、納得がいかないようだ。
20層のグランドベア戦も簡単に終了。ここまで来て、ようやく竜の素材が優秀な事を実感したミクだった。




