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0052・最終試験はダンジョンで




 「それはそうと、下りてきた理由は他にもあってね。申し訳ないんだけど、ミクには最終試験を明日からおこなってほしいんだ。試験内容はダンジョン20層まで行って、グランドベアを持ち帰ってくる事」


 「それ誰からの依頼内容よ? <魔境>に行けって言うよりはマシだけど、誰かからの依頼が塩漬けになってて、それを流用してるでしょう。そもそもミクはダンジョンに一度も行った事が無いわよ」


 「えっ……それは困ったな。彼女の実力なら問題無く行けると思ったんだけど、行けない?」


 「問題無いんじゃないかな? トラップとかあるらしいけど、おそらくは特に問題無いと思う。【罠発見】系のスキルは持ってるし、発見するのと解除する訓練はしたよ。まだ行った事はないけど……」


 「【罠発見】だけで十分さ。普通は長年の感覚で調べて、怪しい所を棒で突付いて確かめるんだよ。【罠発見】スキルがあれば、20層ぐらいまでなら全て見破れる。そこから先は大変だけどね」


 「20層を超えると一見罠でないような罠が増えたり、スキルでも発見できない罠が増えていく。なかなかに厄介でな、私も慣れるまでは苦労した。ガルディアスのように勘で回避する頭のおかしいのも居るがな」


 「アレは絶対に真似しない方がいいわ。碌な事にならないし、本人いわく「何となく」らしいからね。意味が分からないのよ。そんなものに命を懸けるなんてあり得ないんだけど、何故か毎回罠に掛からないのよねえ、アイツ」


 「そうだったね。アレは反則に等しかったよ。最終的にはガルディアスに先頭を歩かせたくらいだし」


 「アレは斥候系の私としては屈辱以外の何ものでも無かった。何故アイツは罠にだけは引っ掛からないのか。今でも納得出来ん」



 そんな話を始めたローネを引っ張ってミクはゼルダの屋敷に帰る。アレだけの実力者なうえ、周りにはかつての最強パーティーが居るのだ。手を出すのは止めようと思ったギルド内の一同だった。尚、レーシャは顔を腫らしたまま気絶している。


 ゼルダの屋敷に戻ろうかと考えたミクだが、ゼルダとローネがしつこい為に服などを買う事になった。まずは革のショートパンツと革のズボン。それと厚手と薄手のシャツと薄いブラウス。


 それに透けないけど薄いワンピースとスカート。革のサンダルとハンカチ等々。ゼルダの店で大量に買わされた。ゼルダを儲けさせるというより、ミクをコーディネートする意味合いが強い。


 それらの服をアイテムバッグに詰めて戻る四人。屋敷に戻ると早速とばかりに着せ替えをしていくのだった。


 こういう事には特にやる気の出ないミクだが、誘惑にも必要だと言われ渋々色んな服を着ている。そんな中でミクが気に入ったのは、ワンピースとスカートに革のサンダルだった。もちろん動きやすさが理由だ。


 ただ、周りで見ていた連中はその限りではない。美しい胸の形がハッキリと分かるワンピースに、スカートからは長く美しい足が出てしまっている。スカートは短い物であり、この世界において、はしたないと言われる長さである。


 普通のスカートはもっと長く、短くても膝下辺りの物が主流だ。しかしミクの履いている物は膝上の物である。明らかに短いのだが、娼婦はワンピースしか着ていないので、基準がよく分からないミクであった。



 「まあ娼婦はああいうものと思われているわね。いわば娼婦だけに許されているというか、あの格好を見たら誰もが娼婦だと思うという事よ。だから娼婦以外がしていい格好ではないの」


 「ふーん。そうなんだね。私としては結局、コレが一番楽かな。どのみちこの格好でも楽に魔物に勝てるし、傷付いても問題無いしね」


 「それにしても何だろうな? 筋肉質ではあるものの丸みはきちんとあり、女性としての主張は激しいのに奥ゆかしい。相反しているのに共存している。そのうえ少女の格好なのに、明らかなエロスを感じる」


 「ええ。神々が何をしたいのか理解不能よ。女の私達でも魅了されるこの肉体を作らせて、やる事が下賤な男の欲望を集める事だなんて……。神々が言われたのでなければ許せないところよ」


 「まったくだが、足を組み替えるのは止めてくれ。目が離せない! 何でこんな昼前から、煩悩を刺激されているのだ私達は……!」



 何か猛烈に下らない事をしている気がするのだが、昼食を食べた後、更にゼルダの私服を持って来てまで着せ替えを楽しむのだった。ついでに屋敷のメイドも代わる代わる見に来ている。同じ女性でも、美しいものは眼福らしい。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 夕食後、寝室に移動したミクは、何故か後ろがガラ空きのドレスを着ていた。かろうじてお尻が隠れるくらいで、背中は全て見えている。そのドレスを来たミクを後ろからジーッと見ている二人。明らかな変態だ。



 「しかし素晴らしいな、この背中のライン。作られた存在でしか出せない美がここにある。更に前に回ると、目を惹き付けて離さない魅惑の果実が、歩く度にユサユサ揺れるのだ。信じられん」


 「そのうえこのドレスは足がそれなりに出るんだけど、全てを見ると私達でもヤられるエロスに満ち溢れているわ。凄いと思っていたけれど、ドレスを着せるとそれ以上よ。反則としか言えないわね」



 この阿呆二人はいったい何を下らない事をやらせているのだろうか? 女性だから許されているが……いや、女性でもアウトな気がする。


 そんな、あからさまに煩悩塗れな事をやらせている二人は、頭の中が茹だっているのかミクに襲い掛かった。いつぞやと違いヴァルには来なかったので、ヴァルは早々に大元に帰る。それを見て仕方なく二人の相手を始めるミク。


 再び白目を剥いて痙攣している二人を横目に、さっさと分体を停止するミクだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日。昨日買った革のズボンと厚手のシャツにネメアルの毛皮を羽織る。革のズボンの分の防御力は上がっているものの、冒険者の装備としてはいちじるしく貧弱に見えるが、毛皮の防御力は非常に高い。


 そんな妙な装備をしたまま冒険者ギルドへとやってきたミクは、受付嬢に最終試験を受けに来た事を伝える。すると、近くから一人の男性が現れた。


 彼の名はアドア・ソッフリー。ランク14の冒険者で、<聖人アドア>と呼ばれる有名な冒険者である。


 アドアは孤児院の院長をしているらしいが、最近寄付額も増えたので試験官の仕事を引き受けたそうだ。矛盾してそうな事を言うアドアだが、実は孤児院の予算はトレモロ子爵の所為で減っていたらしい。


 それを解決してくれたミクの最終試験という事で、特別に引き受けてくれたみたいだ。彼は【浄化魔法】や【治癒魔法】のエキスパートなので、ダンジョンでも問題無くついていける。それで決まった。


 ちなみにロディアスからミクの正体も聞いているらしく、神に関わりある者との仕事という事で気合いが入っているそうだ。ミクとしてはアレらの存在で気合いを入れられても……というところだろうか?。


 そんな微妙な表情のミクと共に、ダンジョンへと行くアドア。結局<閃光>から始まり、彼のパーティーメンバー全てと関わりを持ってしまった。この事がどう影響するのかは、まだ分からない。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ダンジョン。迷宮とも呼ばれる場所だが、そこには石の柱が八つ建っていて地面に魔法陣が刻んであるだけだった。アドアいわく、同じ物を作っても何故かダンジョンには転移できないそうだ。


 昔から試しては失敗し続けているらしく、何故これだけでダンジョンに転移出来ているのか未だに分かっていないらしい。それを聞いてミクは、柱の中にも魔法陣が刻んであるからでしょ。と心の中だけで思った。


 実はこの辺りの事は、<創造の神>と<空間の神>と<遊興の神>から聞いた事があり、ミクは知っているのだ。下界の者には言えないが……。


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