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0049・ロディアスへの報告と乱戦試験




 スカボロー侯爵家に侵入した翌日。分体を起動させたミクと出現したヴァルは、今は寝ているゼルダとローネを無視して応接室に向かう。そこでゆっくりしていると、メイドが廊下をバタバタ走っていた。


 応接室の扉を開き話しかけると、メイドは安堵した溜息を吐く。どうやらミクを探していたらしい。ゼルダとローネがあまりな姿になっていたので、何かあったのかと騒ぎになっているようだ。


 なので仕方なく寝室に戻るミク。その後、寝室に現れたミクに二人は文句を言うものの、夜にあった事を聞いていたミクは全てブチ撒ける。結果、二人はメイドから白い目を向けられるのだった。


 ミクとヴァルはメイドに呼ばれ、一足先に食堂で朝食を食べる。ヴァルと一緒に食事を楽しんでいると、遅れて二人はやってきて謝罪をした。それでミクも許したものの、コイツらは大丈夫なのかという疑問が拭えない。


 とりあえず観察する事に決めたミクは、それを表には出さずに会話を始める。



 「スカボロー侯爵家から取れる証拠物は奪ってきたけど、それはロディアスに渡せばいいんだよね? そもそも私はマルヴェントって侯爵を知らないし。知る気も無いんだけど、面倒くさい事になりそうな気もするんだよね」


 「まあ、マルヴェント侯爵も貴族だから可能性としては十分あるかな? 私には関わって来ないけど、ミクはまだ知られてないから何かしら関わってくると思う。それでもロディアスが間に入って何とかするでしょ」


 「だろうな。ロディアスとしても追い詰められる前にミクの味方をするだろう。暴れたら一環の終わりだし、自身の妻さえ喰われかねん。そうされるくらいなら、喜んで懇意にしている貴族ぐらい差し出すだろう」


 「ロディアスの愛妻家ぶりは有名だからね。子供と一緒に居ても奥さんしか目に入ってないって言われるくらいだし、当の子供達が諦めてるくらいよ。まだ上の子でも五歳なのにねー」


 「子供達から治す薬は無いと匙を投げられているくらいだ。あれもまた子供の教育には良くないと思うが、言ってもアイツが反省する事は無いな。妻は普通の猫人族だが、何がどう良かったのやら……」


 「元は借金奴隷で娼婦だったのよね。ロディアスは単なるお客だった筈だけど、一夜で堕とされてたわ。あの頃は騙されてるんじゃないかと思ったけど、未だに献身的に支えてるし幸せそうだから何も言わないけど」


 「夜が上手かったから惚れたのだろうとガルディアスが言っていたが、何故かロディアスから反論が一切無かったのを思い出したぞ。それで決めたのか、アイツは? まあ、今は問題無いからいいが……」



 そんなミクにとってどうでもいい話だった食後の雑談も終わり、ゼルダの屋敷を出て冒険者ギルドへ行く。受付嬢に話し、ギルドマスターの執務室がある二階へ上がろうとすると、敵意と悪意が向けられた。


 どうやら嫉妬のようだと当たりを付けた三人はバカバカしくなり、溜息を吐きながらギルドマスターの部屋へと入る。その三人を見て意味が分からず困るロディアス。


 受付嬢が紅茶を持って来て部屋を出た後に話し始めるが、ミクは右腕を肉塊にして証拠物を出しながら話し始めるのだった。



 「昨夜スカボローとかいう奴の屋敷に行って取ってきたけど、適当に取ってきた所為でどれが証拠として使えるのか分からない。だからそっちで調べるか、全部マルヴェントっていう奴に渡しといて」


 「いやいやいやいや。話には聞いていたけどさ、右腕が肉の塊になって物が大量に出てきてるんだけど? えっ!? それ全部証拠の可能性があるの? …………全部侯爵に丸投げしようっと」


 「それがいい。そもそも証拠物を取ってこいという依頼だ。どれが何の証拠物かなど分からんのだから、そこの調査は貴族がやらねばならん。冒険者に貴族の繋がりなど分からんのだからな」


 「うん。関わりたくもないし、その辺りで押しておくよ。流石に侯爵も無茶は言わないだろう。ありがとう、ギルドとしても侯爵に恩が売れるのはありがたいんだ。 おっと、それはそうと乱戦試験の日取りが決まったから」


 「決まったの? それで、いつ?」


 「申し訳ないんだけど、明日から。王都の北西の森の奥にオークの集落を発見したんだ。だから試験と殲滅を一緒にする。本当に申し訳ないんだけど、オークは捨て置けないから諦めてよ」


 「ミクは女ではなく、喰い荒らす肉塊だぞ。しかも<大森林>にあったオークの集落を二人で潰している。二人とも女性の姿で、一切逃がす気は無かったそうだ」


 「おーぅ、殺る気マックスじゃないですか。女性の姿でワザと攻めるとか、一体も見逃す気がないね。全部襲ってきたでしょ? アイツら女性の姿を見ると絶対に逃げないからなぁ……」


 「まあな。そういえば<エロいの殲滅団>は連れて行くのか? あの女どもが居れば大分楽になるが、今は近くに居ないかもしれんな」


 「<エロいの殲滅団>じゃなくて<護女兵団>ね。彼女達も色々な所で活躍してるんだけど……オークとなると目の色を変えて殺しに行くから仕方ないか」


 「何でもいいけど、とりあえず出し終わったから。私は帰るけど、後はお願い」


 「ああ、ありがとう。後はこっちで何とかするよ。といっても、俺のアイテムバッグに入れて持って行くだけなんだけどね」



 その話を最後に部屋を出た三人は、嫉妬の醜い視線を受けながらゼルダの屋敷へと戻った。その後は明日の準備をし、夕食を食べたらさっさとベッドに寝転がる。肉体を停止しようとしたらゼルダが来た。


 また面倒な事かと思ったら、ゼルダはミクと、ローネはヴァルと、という事らしい。面倒な二人はさっさとヤってしまい、そのまま同じベッドで寝るのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日、朝食も終えたミクとヴァルは冒険者ギルドへと行く。既に装備も万全で、ゼルダの店で非常食なども買ってきている。単に面倒くさかっただけなのだが、ゼルダは自分の店で買ってくれた事に喜んでいた。


 冒険者ギルドの前には、既に試験を受ける者達が集まってピリピリしている。乱戦試験とオークの集落の殲滅だ、緊張するのも仕方ないのだろう。ミクには全く無いが、いちいち面倒なので場の空気に合わせておく。


 そうして待っているとロディアスが現れ、試験内容とそれぞれの監視員を伝える。ミクを監視するのはレーシャという女冒険者で、<護女兵団>のリーダーらしい。二つ名は<オークジェノサイダー>。


 そもそも<護女兵団>にはオークの被害に遭った者も多いらしく、リーダーのレーシャもそうらしい。それ故にこう言われる。



 「貴女が駄目だと思ったら、さっさとギブアップして。そうしたら私達がゴミどもに手を出せるようになる。私達<護女兵団>にとって、試験を受ける連中は邪魔でしかない」



 この女性は過去に被害を受けたのだから気持ちは分かる。だが、周りの冒険者まで敵に回してどうするのだろうか? 一緒にオークの集落に行くのに、他の<護女兵団>のメンバーも同行するらしい。


 本当に一切オークを逃がす気が無いようだ。それは構わないのだが、オークが大量に居ても喰えない為テンションが上がらない二人。それでも試験の為に、仕方なく王都の外へと歩いていく。


 他の連中は馬車に乗っているが、ミクはヴァルに乗った方が速いので外を移動している。オークの集落での試験はどうなるのか、波乱が待っていそうな気がするヴァルだった。


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