0491・総帥からの依頼
食事後。適当に雑談をしつつロックに母乳を飲ませたのだが、何故かアティがやたらに喰い付いた。よく分からないが凄く気になるらしい。ミクは色々悩んだものの【猫の気紛れ】か【猫の勘】が影響しているのだろうと思い、仕方なく飲ませた。
すると美味しそうに飲んだものの、何か違うような気がするらしい。アティが首を捻っているので、ミクはライダースーツの前を開いてアティを抱き寄せる。乳首に直接口をつけさせると、アティは驚いた後におずおずと吸ってきた。
新鮮な母乳が出るからだろう、アティは驚いた後に夢中で吸い飲み、そのまま寝てしまったようだ。どうも人肌恋しさも影響していたのだろう、ミクのライダースーツを握ったまま寝てしまっている。
レイラもゼルもアティを優しい顔で見ているのでこのまま寝かせてやり、本体空間へはレイラが送った。アティを優しい顔で見ていた割には、きっちりとヤる事はヤるらしい。それとこれとは別なのだろう。
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次の日。朝起きたアティは恥ずかしそうにしていたが、ミクは朝から母乳を飲ませ二度寝をさせる。ロックにもティムにも飲ませ、ミク達はこれからどうするかの話し合いだ。別の星に行ってもいいし、もうちょっとここで稼いでいてもいい。
MASCを使いながら様々な依頼や惑星を確認していく。すると、ミク達に対して指名依頼が来たとゼルが言う。指名してきたのはブラックホークの総帥であり、仕事内容はタウン惑星OPAL2294に行く事だった。
「行くだけ? ……ごめん、意味が分からない依頼は請けられないよ。流石に該当の惑星に行けでは十中八九、罠だとしか思えない。私達は総帥とやらに会った事が無いからね、流石に信用は無理だね」
「あくまでも行く事が目的というか、表の理由でそうなっているだけよ。正しくはタウン惑星OPAL2294のブラックホーク事務所で適当な仕事を請ける。それが正しい指名依頼よ」
「結局のところ意味が分からないのは変わらないわね。そもそもなんだけど、そこに行って適当な仕事を請けるというのが全くもって理解できないわよ。いったい何を狙っているの?」
「そこはリョースナ工業国の惑星らしいんだけど、どうにも危険な薬が出回っているらしいのよね。それの出所の特定を頼みたいっていうのが依頼の裏。ちなみにミクの事は私が伝えてるけど、総帥はミクと敵対する気は一切無いわ」
「………」
「本当よ? 伝えても良い事になってるから言うけど、ブラックホークの総帥は古い時代に召喚された悪魔なの。領地持ちのアーククラスであり、今は1000年以上こっちに分体が居て、本体も分体もアーククラス中位よ。ミクがアンノウンだと知ってから、絶対に敵対しないと言っていたわ」
「ああ。魔界にもアンノウンが居て、悪魔は絶対に敵対しないらしいって聞いたわ。主が悪魔から聞いたらしいけど、悪魔ですら敵対しないのは当然でしょうね。肉体の無い者達だけど、所詮その程度でしかないから」
「そうよ。アンノウンの中にはミクみたいに精神も魂も貪り喰う者が居るから、精神体の悪魔じゃ滅ぼされて終わるのよね。人間種じゃ滅ぼせないから調子に乗るんでしょうけど、アンノウンが相手じゃ……」
「勝ち負けの話じゃなくて、逃走できるかどうかの話だもの。意味が全く違ってくるわ。それはともかく、危険な薬物の出所などを探るという事でしょう? 主が面白そうにしてるから請けるんでしょうけど、事と次第によっては動き回る事になるかも」
「まあね。OPAL2294はあくまでも出回っているだけだもの、製造している惑星にまで乗り込む事になったら長く時間が掛かるかもしれない。ただ、腐った連中をどうにかする仕事だから、ミクが喜ぶタイプの仕事でしょ?」
「それはそうなんだけど、報酬は? 一応聞いておかないといけないからさ。私としては肉が喰えるならそれでいいし、お金はあるから問題ないんだけどね」
「報酬は200万で、総帥が自腹で支払うと言っているわ。ブラックホークでは総帥が仕事の依頼をするのは割とあるのよ、だから不審がられないと思う。特に名のある者達に依頼する事が多いし」
「ふーん、なら請けようか。開拓村は七人に頼んでおけばいいし、あの七人なら一定の目処がつくまで稼ぐでしょ。その為に鍛えたんだしさ」
「<ワイルドドッグ>を目立たせて、自分への目を減らそう。そう主は考えたんだけれど上手くいっているのかしら? 何だか他の有象無象が主の下に押しかけて来そうな気がするわ」
「来たところで叩き潰されて終わりじゃない? もしくは壊されるか。どちらにしても、ミクには力押しが通用しないから意味が無いわねえ。本当に理解している奴は、わざわざ力押しで来ないでしょうけど」
「MASCで調べたら、宇宙船が来るのは明後日みたいだね。随分頻度が増えてるけど、そんなにウサギの肉が欲しいのか、それとも興奮する草かな? どのみち性欲に関する物は多そうだから、これからも潤いそうだね」
「ヴィルフィス帝国にとっては開拓する価値のある星でしょうね。っと、起きたみたいだから七人の所に行きましょうか。今日は休みだからか、朝まで飲んでたみたいね」
そう言って起きたアティ達を連れて、開拓村に一軒しかない食堂に行く。中は客が多かったものの出て行く客も多いようだ。そんな中、床で転がっている四人の男と、肩を寄せ合って寝ている女性三人。
建物の壁に寄りかかってる七人を無視して、ミク達は朝食を注文する。豪快な肉とパンに野草サラダが出てきたが、ドレッシングで誤魔化せるので問題なし。アティは美味しそうに食べており、周囲の客が何故かホッコリしている。
食事後。ミク達は七人を起こして家へと行く。七人は眠そうな顔をしているが、ミクは総帥からの依頼があり、この星を出る事になったと説明。「今の内に媚薬と精力剤が欲しい奴は容器を出せ」と言うと、七人全員が出してきた。
ウサギの肉よりも遥かに効く物なので、七人全員が欲しがったのだ。それはいいが、媚薬や精力剤を悪用しないようにと言っておき、悪用した奴が居たら首を刈る事も伝えておく。
「流石に<恐怖の大王>から貰う物を悪用する阿呆はオレ達の中には居ねえよ。器を三度も壊されたからこそ、おっそろしいのも分かるんだ。冗談でも何でもなく、シャレにならねえよ」
「そうそう。ボク達でさえ、あのジャベリンガンを撃ち続けるのは無理だしね。それより上のジャベリンバズーカを連射しまくる人に喧嘩を売る馬鹿じゃないよ」
「喧嘩を売る以前に、そもそも喧嘩になるのかが疑問さ。喧嘩にもならず一方的にボコられるか、それとも瞬殺されるだけだろう?」
「それはそうだし、むしろ当然。戦いにならない程の差があるし、それも仕方ない。怪物に勝とうとする方がおかしい」
「それよりも、随分と可愛らしい猫ちゃんね? 人間種の猫人族とは全く違うし、かなり獣の割合が高そうだけど……。かつての獣人も元々はこんな感じだったのかしら?」
せっかくなのでアティに自己紹介をさせ、村での経緯と立場を話すと、七人全員が憤慨した。ルーダイトまで怒るのは意外だったが。
「そうでもない。私は孤児だったが、それでも孤児の集まる場所である程度の暮らしはできた。幾ら古い時代と変わらんと言っても、天涯孤独になってしまった子供に対してやる事ではない。しかも欲からやっていたのだ、そいつらは殺されて当然だろう」
ルーダイトも孤児だと知って、ちょっと嬉しそうなアティ。自分だけじゃないと思ったんだろうか? とにかく前向きになれたなら良い事である。そんな七人への媚薬と精力剤の配布は終わったので家を後にするミク達。
今日と明日は一日中アティを鍛える為に使おう。そう思い、自分達の家に戻るのだった。




